小さな潜水艦のコックピットのような我が事務所の一角に、小さな窓のように立てかけられている水中写真パネル。裏には手書きで「HORIZONTAL HUMPIES」とある。以前、懇意にしている釣り人の佐藤文紀さんに、アラスカ土産でいただいたものだ。

直訳すれば「水平のこぶ」。カラフトマスのことである。

川に上り繁殖期を迎えると、オスの背中がこぶのように盛り上がることから、ハンピーと呼ばれている。

カラフトマスは、いまや日本列島から去りゆく魚である。近頃、楽しく読んでいた二神慎之介さんの『日本のクマを追う』には、2007年に1500万尾ほどあった漁獲量が2023年には6万尾程に激減したという水産庁の報告が引用されていた。カラフトマスはサケに先駆けて夏には川に戻ってくる。流域に棲むヒグマたちにとっては食べものに乏しい夏の恵みとなっていたようだ。チラッとインターネットで2025年の来遊数を見てみると、2023年の1/3ほどに減っていた。

この写真パネルで気に入っているところは、ハンピーと言いながら、背中の盛り上がった、いわゆるハンプバック(HUMPBACK)のオスがほとんど脇役に徹しているところだ。手前の魚たちの多くがメスで、濃いグレーに深緑や深紫の混じった背中と真っ白い腹とのコントラストが実にらしくて好ましい。

最後に見たのは2年前。北の大地の水族館館長である山内創さんの案内で、絵本に描かれたように鮮やかな川床を掘るカラフトマスを見ることができた。また見に行きたい。

窓の外はアオマツムシの最盛期。埼玉南部の初秋の夜に。〈若林〉□

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