日本列島にサケが来遊する季節となりました。来遊数の大半を占める北海道で昨年の半分ほどだろと予測されている今年。果たしてどれほどのサケが日本沿岸に戻ってきてくれるのでしょう。

この季節になり、大空を感じさせる秋の風の匂いを嗅ぐと、小沢健二さんの「ぼくらが旅に出る理由」が心の中を流れます。

1994年、発売された間もないアルバム『LIFE』を車に乗せたCDラジカセで聴きながら、北海道でサケとカラフトマスの大群に出会ったのです。なかでも繰り返し聴いていたこの曲に、懐かしいサケたちの腐敗臭と不安だらけの日々の記憶がパッケージングされています。

さて。今日は大好きなサケの絵本を2冊紹介します。

1冊目は二神慎之介さんの『うまれたよ!サケ』(岩崎書店)。

写真と優しい文章で構成された、子どもでも楽しめる写真絵本です。サケの一生が写真でわかりやすく紹介されていきます。過剰な演出を感じさせない二神さんの写真は、自然の中で見るサケと重なります。

大好きなシーンは、サケのお母さんが川底の砂礫を確認するように鼻つらを近づけているところ。サケは湧水の出る砂礫底に産卵床をつくると言われており、まるで湧水の匂いを嗅いでいるかのような仕草です。とても柔らかな表情に見えます。

サクラマスでは、産卵に適した砂礫のサイズを目で見て確認しているのかもしれないという研究もあります。この絵本に出てくるサケのお母さんも、目でじっと確認しているようにも見えるのです。サケは何を感じているのでしょうね。

生まれた稚魚が海に出て、大きくなって、また生まれた川に戻ってくる。サケの持つ物語性をぎゅっと凝縮したラストも、とても好きなシーンです。まるで浦島太郎が竜宮城から戻ってくるかのような? 海ってなんなんだろう?と不思議な感覚になります。

もう1冊は、『ピリカ、おかあさんへの旅』文 越智典子/絵 沢田としき(福音館書店)。

この絵本で私が一番好きなのは、川に戻ってきたサケが宝石を散りばめたようなカラフルな砂礫底に卵を産んで命を閉じるシーンです。サケの産卵を観察していると、砂礫がとても気になりますから、色とりどりの砂礫は絵本の表現として、とても共感できるものでした。

ところが一昨年、北海道のT川水系で、この絵本に描かれたのと同じ、色とりどりの砂礫で産卵をするカラフトマスを観察したのです。一見して「ピリカの絵本のシーンだ!」と驚いたのを覚えています。本当にこんな宝石を散りばめたような川があるんだと…。

きっとこの絵を描いた沢田さんは、T川を見にきたに違いない・・そんなことを思っていたら、今年になって気づいたんです。あとがきにこの川の名前が書かれていたことに。

サケの表情もとてもよく描かれています。二神さんの撮られるサケともなんとなく共通したものがあると言いますか。

機会があったら、ぜひ読み比べてみてくださいね。〈若林〉□

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