このところ観察し続けているオイカワの産卵行動。少しずつ、理解を進めています。

こちら産卵行動の最後のタイミングである、放卵・放精の瞬間です。メスが卵を放ち、オスは卵に精子を放ちます。この時、オイカワはオスがメスに覆いかぶさる形で横倒しとなり、7、8秒かさらに長い時間、たがいに身を震わせて川底の砂を巻き上げます。

別のペアですが、このようにメスはオスの下敷きになるように抑え込まれつつ、オスと一緒になって体を震わして砂を巻き上げます。
オイカワのオスは臀ビレが非常に長く伸びていて、これは卵を収めるための穴を川底に掘るためと解釈されています。産卵行動を見ていると、まさにその通りで、大きな臀ビレを川底に押し付けるようにぐんぐん掘っていきます。
この時、うまく卵が砂礫の穴に収まるんだからすごいよなーと思いきや、多少は下流側に流れているようで、他のメス(未成魚かもしれません)がそれをパクパクと食べていたりもします。
でも基本的には短い時間に穴を掘って、そこに卵を産み落とすプロセスとなります。メスもオスも卵を産む場所はわかっているようです。鼻先を川底に近づけて、匂いを嗅ぐようなそぶりを見せます。最終的にはメスが卵を産む場所を決め、オスがそこに体を重ねていくように見えますが、オスはオスでしっかり川底を掘ることができて、卵を産めることのできる産卵敵地を把握している気がします。メスがいなくても、自らの体の大きさに応じて、産卵に適した場所を独占して、そこに入ってきたオスに対して闘争のそぶりを見せます。追いかけて、追い払います。メスが入ってくると、攻撃はせずに追尾して、産卵を促す行動に移っているような気がします。
サケもニゴイもアユもマルタも川底の砂礫や砂の中に卵を産みますが、それぞれ適地を知っているようです。サケは湧水の匂いを感知する、なんてことが言われますが、卵を産むべき場所の条件が、きっとわかっているのでしょう。
サケやマスはメスが川底を一生懸命掘りますが、オイカワの場合は、オスが川底掘りの役割を担っているようです。その違いも面白いですね。
とりとめのない話になってしまいました。オイカワは思いのほか、しっかりと川底を掘るんだなーということを知ったここ数日の観察でした。□〈若林〉
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