私は岩魚を釣る。しかし岩魚を釣る目的だけで春の渓流に出掛けるのかと、もし質問されるとしたら、そうだ--とは答えられない。 私はもっと欲張って、いろいろな楽しみをそこへさがしに行く。というよりはいろいろな楽しさを、そこで発見してしまうのだ。 釣方にしても、いきなり蔭から竿を振込むようなやり方はしない。ゆっくり時間をかけてソーッと壺をのぞきこむ、すると魚は私を岩かなんかだとおもって無視し、ゆうゆうと私のアゴの先で泳ぎまわる。その姿をながめるのは釣上げるときのスリルと同じように楽しい。 渓流の音だって注意して聴くと、いつも同じ音ではない。ちょっとした水の淀みや、流木が引掛かったために変る水流の変化で、実にデリケートなメロディーをかなでる。木の間をもれる陽の光、風の通過。枯枝の折れる音。羽虫の蛹。 私は岩魚を釣る。しかし釣師ではない。 (辻まこと 「春の渓流」 小学館ライブラリー『多摩川探検隊』より引用) 以上は、詩人にして画家である辻まことさんが書いた一編の詩です。 大好きな詩です。その情景に遊ぶ自分を思い浮かべながら読んでみてください。 RIVER-WALKは、この詩が表しているような、渓流釣りをしながら歩いて浸れるこの素晴らしき世界感を表現し、その素晴らしさを共有したいと願う方々に届ける試みです。
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美しき渓流魚と出会える素晴らしさ、 |
苔むす石をたおやかに洗う川のせせらぎ、 木々の緑を光が透過する緑色の空気、 |
同じ空間を闊歩する生き物の気配、 遠い昔や近い昔、歩いていた人の生活や思い、 そんな諸々が作りだす物語を拾い、形にして、 共有したいと願う人たちに少しでも、 届けられたらよいなと思うのです。□
※『RIVER-WALK Vol.3』は2019年1月末に販売を始めます! 販売方法はこちらをご参照ください。 |