アユの産卵が少しずつ活況となってきました。水温は15℃前後、いいタイミングなのでしょう。

こうなると、積極的に探してみたいのが、アユを溜め込んだイタチの貯食場です。それが実際にあるかどうかはなんとも言えませんが、私はあると信じてこの晩秋の観察の意識の多くを費やしてみたいと考えているのです。

頼るべきは嗅覚です。水中に溜め込むのであれば、匂いはあまり漂わない気もしますが、おそらくは水気の多い泥壁や石の間などに溜め込むのではないかと夢想しています。だとすれば、ほのかに匂いは漂うのではないかと。

昨年の秋、北の大地の水族館の山内館長とサクラマスの川を歩いているときに、その嗅覚作戦で土に還る途中のホッチャレを見つけて以来、ずっと考えていたことでした。

本命場所はこんなところ。水際のエコトーンにイタチの足跡がたくさん散っていました。鼻を利かせるも何も感じず。

ここもいい感じ。足跡も散っています。でも嗅覚は何もとらえず。

そしてフワッと独特の腐敗臭が漂ってきたのは、こんな場所でした。草の中か・・と思い、あまり期待もせずに探してみたところ・・

おお!! 朽ちたアユが1匹転がっていたではありませんか。

鼻を近づけると、確かに腐敗臭。果たしてこれは、イタチによるものなのかどうか・・。

・・と、ここでもしかすると、私が置いたやつだったかも・・と思い当たりました。数日前に見つけた時、何気なくポンと置いた(というか投げた)のがこの辺りだったかも・・。今となっては記憶が定かでなくわかりませんが、なぜそんなことをしてしまったのか。貯食をするイタチやカラスと同じ心境だったのかもしれません。他の人には見られたくない、みたいな・・。

ただ、アユはこのように腐りかけていました。ここまでの腐敗臭を放つ段階になると、イタチもこれを食べようとはしないのではないだろうか・・なんてことを考えました。貯食するなら、ハシボソガラスがオオカナダモを被せて水中に貯蔵したように、イタチも食べられる状態を保とうとするのではないかと思うのです。だとすると、匂いがするにしても、もっとほのかな香りかも・・。

今のところ手がかりは「イタチの足跡」「アユの漂着場」「けもの道」「腐敗臭」といったところ。極めて難しい観察にはなるかと思いますが、アユが落ちるピークには、何らかの尻尾を掴めるのではないかと小さな期待を抱きながら、もう少し観察を続けたいと思います。〈若林〉□

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