春に発売となった『山釣りJOY2026』で「イワナの種名は存在しない?」というコラムを書いた。かつてイワナの和名が「イワナ」と「アメマス」の間で揺れていた…というような内容で、ひとつの結論として、現在もイワナの「正式な種名」は定まっていない、と書いた。

魚類の「正式な和名」は分類学的に「標準和名」と呼ばれるもので、日本魚類学会が2020年に定めた「魚類の標準和名の命名ガイドライン」によれば、原則として『日本産魚類検索:全種の同程、第二版』(東海大学出版会)を起点とすると定められている。
ところが『日本産魚類検索:全種の同程、第二版』には、イワナの種名は出ていない。亜種名であるアメマス(エゾイワナ)、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギは出ているが、種の和名である「イワナ」は付記を含め、どこにも見当たらない。それを根拠に、イワナの正式な種名は定まっていないと書いた。
2013年に発行された改訂版の『日本産魚類検索:全種の同程、第三版』にも、分類表には「イワナ」の種名は見当たらない。だが巻末近くに掲載された「分類学的付記と文献」には、暫定的に従来通りイワナを亜種まで分類したと述べつつ、近年の研究により上記の4亜種の形態的特徴と遺伝的特徴が必ずしも一致しないとわかったことを理由に、第二版にはなかった次のような付記が加えられていた。
「これらを亜種として分類するのは下記に述べるように問題を含んでおり、全体を主として表記するときの標準和名と学名が必要である。これらは全体として標準和名はイワナ、学名はSalvelinus leucomaenis Oshima, 1916である」(一部抜粋)
イワナはどうやら考えらえれていたよりもっと複雑らしい、と(遺伝的に)わかってきたことで、揺れていた種としての「正式な和名」は定まったようである。〈若林〉□
※日本魚類学会による「魚類の標準和名の命名ガイドライン」はこちら
※このことを教えてくれたのは、日本のイワナ生態学の第一人者であるMさん。ありがとうございました。
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