今日は曇り。でも暖かな一日。 ソメイヨシノがハラハラと川やガタに落ちて流れてゆきます。 本日も少しだけ、仕事前のウォーキングがてらに川を観てきました。 昨日は晴天の下、ログサーモンことマルタウグイの産卵が活況でしたので、曇りの今日はどんなもんかいな?と‥。 コサギの飾り羽がきれいです。 ドバトの寝癖が良い感じ。 鳥たちも眺めながら川を歩いていると、ニゴイらしき水面の動き。 曇りの日は空が白いので慣れないと良く見えません。 どしゃばしゃやってるなーと思った瞬間、水面が沸き立ちブハッとニゴイが顔を上げたのです。 産卵だ‥。 そう、メスの放卵瞬間時の顔上げ行動でした。 今年の春はこの姿を撮影するのを目標にしているのです。 しばらくすればもう一度産卵するかな?と思いつつ、ほとんど水中が見えないので、通り過ぎ、橋を渡って対岸からアプローチします。 川の中央の瀬でしばらくどしゃばしゃとやっています。おそらくオス同士の争いでしょう。こっち岸に来ても良く見えないなー・・なんて諦めようとしたその時でした。 30㎝ぐらいの小型のペアが対岸の岸際に現われたのです。 光量も乏しく、あまりよく見えませんが、2匹の色を確認して、これはチャンスあるかも‥としばらく観察することに。 産卵の瞬間を観察するチャンスがあるかどうかを探る最も手軽な方法は、私の場合、魚の色を見ることです。オスの色がメスよりも薄くベージュ色っぽくなっていたら、それは比較的産卵が近い場合が多いように思います。言ってみれば「興奮色」のようなものでしょうか。 メスの色は安定していますが、オスは平常時はメス以上に黒いことが多いのに、産卵が近くなり興奮すると、色がどんどん薄くなるのです。 そしてカメラを向けてから1分もしなかったと思います。 なんとメスの顔出し! いきなり産卵の瞬間を迎えたのです。 時刻は9:06です。 あまりにも急でしたが、とりあえず「顔出しを撮る」という春の目標をあっけなく達成してしまいました。 ですが私は、さらに良い絵を撮ろうと次なる瞬間を待ちました。 ニゴイは一回産卵・放精を終えた後、また10分ほどで放卵・放精のタイミングが訪れることがあるのです。去年の観察では同じペアで30分間に3回の放卵・放精を観察しました。 すると9:14にメスがスパスパをはじめました。 産卵前の行動です。 こちらは昨年の観察によるもの。①メスが川底の底質を確かめるように口でスパスパする。②オスが並んで‥③放卵・放精、という流れです。 メスが体を震わせながら前方へと少しずつ進みます。それを追うようにオスも体を震わせながらメスの後ろについていきます。 ブルブル・・ドシャバシャと、この間、2秒ぐらいでしょうか。結構長いのです。そして放卵の最後の瞬間にメスはのけ反るように顔を上げます。この瞬間を押さえようとしていたのですが、なんとここでカード速度による連写ストップ。顔上げはしっかりと目に焼き付けましたが、撮れませんでした。 次の瞬間は9:23に訪れました。 メスが体を震わせて・・ブルブル・・ ブハッ! 撮れました‥が、ピンボケ。タイミングはバッチリでしたが、やはり難しいものです。 それにしても続けざまに3回の放卵・放精を見ることができたのです。でもこのペアはそれでおさまることはありませんでした。 産卵直後はしばらく二匹ともジッとしているのですが、そのうちにオスがまたメスの体を乗り越える行動をとり始めます。身体をブルブルと震わせながらメスに産卵行動をうながすしているかのようです。それに応えるように、はじめはだるそうに、でもそのうちメスが上流下流へと行き来するようになると・・・ きた! 9:30です。 そして・・ なんと4度目の放卵・放精。 さらに9:42に・・ またきた5回目! ここで注目してほしいのはオス(左側にいるやつ)の頭の位置です。 メスが水中でブルブルと体を震わせ始めた時、オスはサケマスのようにいきなり真横に並ぶことはせず、いったん、メスのお腹あたりに顔を寄せるんです。そしてメスが少しずつ前方に進むのに合わせるようにオスも少しずつ前へと出ていくのです。 そしてブハッ!! これはいい感じに撮影できました。 ちなみにオスがブハッをやるのを見たことがありません。 さらに9:51に6回目!! オスが少しずつ前に出て行っているところです。 メスと並びました。そして・・ ブハッ!! すごいです・・。さらに9:59には7回目の放卵・放精を迎えます。 白っぽくなっているオスの頭の位置に注目を。 少しずつ並んで・・ ブハッ!! しかし一体何回やるのでしょう。 コガモのペアが流下してきました。一時停止。 そして10:08に・・ なんと8回目の放卵・放精を迎えたのです。 この後、もう一度だけ気配を見せましたが、9回目はありませんでした。 それにしても約1時間で8回の放卵・放精とは‥。 ちょっと魚の産卵について調べたくなりました。 これほどまでに同一のペアで一度に連続して放卵・放精を迎える魚っているのでしょうか? 9:06→8分後 9:14→9分後 9:23→7分後 9:30→12分後 9:42→9分後 9:51→8分後 9:59→9分後 10:08
・・いや。わかってます。人間に例えるとか面白くもないしキャラでもありませんから・・。 それにしてもスゴイはニゴイ‥。 いや、ニゴイはスゴイ。 びっくりです‥。 そして昨年と今年の観察から、先ほど出した図を少し変えておきたいと思います。 【ニゴイの放卵・放精に至る一連の図(令和3年4月2日バージョン)】 ①メスのスパスパ。これはほぼすべての放卵前に見ることができます。サケマスのメスが尻ビレで産卵床の具合を確かめるように、メスは口(もしくは口ひげ)で最後のチェックをしているかのようです。ちなみにサケマスのメスは体を横たえ波打たせて産卵床を掘りますが、ニゴイのメスは口のスパスパでうっすらと産卵床作っているように見えます。口ひげで、かなりピンポイントに産卵場所を絞り込んでいるようなしぐさも度々観察しています。 ②メスが体をブルブルと震わせ始めます。果たしてこの時に卵は放出されているのかどうなのか? その時、オスはメスのお腹のあたりに顔をうずめます。まさか放出したばかりの卵を食っているんではないだろうな?・・なんて恐ろしいことを一瞬考えましたが、昨年、真上からの観察をしていた私はひとつの仮説に至っています。 上からの図を見るとわかりやすいのですが、オスがメスの後方で体を寄せ付けているんです。顔をメスの腹の下につっこむのは、それ自体が目的というよりは、体勢を取るとこの位置に顔が来るのではないでしょうか。この体勢はメスが放出した卵を流されないように受け止めている様にも見えます。定かではありませんが、サケマスのように産卵床の石の隙間や窪地構造による対流効果を期待できないニゴイの場合、オスが一瞬でもガードすることで流される卵を減らし、川底の砂利の間に沈み込ませることができるのではないでしょうか? あくまでも妄想なのですが、そのような考えに基づいて観察を続けていきたいと思っています。 ③メスは放卵の最後、絞り出すようにシャチホコのように体をそらせて顔を上げます。水深が浅いとこの時、水面上に顔が飛び出します。これが何を意味するのかはわかりませんが、オスの顔上げはまだ見たことがありません。何か特別な意味があるのかもしれません。 放卵・放精から次の放卵・放精に至るまでの行動にも特徴があって面白いのですが、それはまたいずれ‥。〈若林〉□
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生態観察を掲載するのであれば、可能な限り場所も記述すべきではないでしょうか?同種でも処変われば生態や形態も変わったりするワケですし。観察地の水系程度の記述も憚られるのであればせめて都道府県程度は記述すべきでは、と思います。
読んでいただき、ありがとうございます。場所を記述すべきなのかどうかはわかりませんが、埼玉県です。ニゴイは一匹のメスにつくオスの数が増えると、なんとなく行動様式に変化が生まれるような気がしています。また違う行動を観察されましたら、コメントをいただけるとうれしいです。