穏やかな秋晴れが続きますが、午後あたりから天候が崩れ始め、日曜日は広い範囲で雨が降るとのこと。この時期の雨は「雨の魚(あめのうお)」ことサクラマスやサツキマス、ビワマスにとって、産卵行動を促す雨になりますね。 昨日、中禅寺湖にホンマスを見に行ってきました。 ホンマスは中禅寺湖にいるサクラマスの仲間で、元々は明治年代にまず琵琶湖のビワマスが移入され、そこに北海道のサクラマスも加えられ、これらが交雑したものがホンマスと呼ばれているそうです。 漁協などによる人工孵化放流が行われている一方、中禅寺湖に注ぎ込むいくつかの流入河川(禁漁区域)では自然産卵も行われ、代々命を繋いでいます。 川で生まれたサクラマスは1年ほど川で過ごした後に海に降り、1年ほどの海中生活ののちに、生まれた川に戻ってきて産卵するという習性を持っています。 川に戻ってきて産卵する魚ではサケが有名ですが、サクラマスはサケの仲間なんですね。そしてサケよりもさらに上流まで上り、山間の渓流のような環境で産卵します。 ちなみにサクラマスの中には海に下らずに、そのまま川で一生を過ごす者もいます。一生を川で暮らすサクラマスや、海に降る前のサクラマスは「ヤマメ」と呼ばれています。渓流釣りで有名なヤマメです。 ホンマスやビワマスは海の代わりに湖と川を行き来するサクラマスの仲間です。 これは産卵期のホンマスです。一番奥に隠れているのが中禅寺湖から上ってきたホンマスのメス、その手前にいるのがホンマスのオス、さらに手前にいる小さな魚が湖に降る前のホンマスの幼魚です。ビワマス同様、朱点が散らばっていて、ヤマメというよりもアマゴに似ています。 サクラマスは漢字で書くと「桜鱒」。名の由来は桜の咲く春に川に遡上してくるマスだからという説もあれば、上にあるように産卵期に体に現れる「婚姻色」が桜色だからという説もあります。サクラマスの仲間であるホンマスも、ご覧のように桜色に染まります。 そしてもう一つ「身の色が桜色だから」という説もあるようです。 オス同士の闘争。ホンマスもサクラマスもとても美しい魚ですね。癒されました。
ホンマスが産卵する川が流れるミズナラの森には、秋の味覚であるキノコがたくさん生えていました。 私、きのこは全くわからず、これまで自分で採って食べたのは「ジャリタケ」と呼ばれているヌメリスギタケモドキぐらいだったのですが、このたびマスタケというきのこを教えていただきました。 マスタケです。漢字で書くと「鱒茸」。オレンジ色がマスの身の色に似ていることから、そのように名付けられたきのこだそうです。雰囲気はソフトなサルノコシカケといったところ。 結構なボリュームです。昔の人はマスとともに秋の味覚として楽しんだのでしょうか。 持ち帰って食べてみることにしました。 薄くスライスするとこんな感じ。結構しっかりした鶏肉のようなパンのような感触です。 バターで軽く炒めてみました。仕上がりは水気があまりなくてパサっとした感じ。 パンのようでも鶏肉のようでも魚肉のようでもあります。 食べてみると、きのこ特有の良い歯応え・・ではなく「ふむっ」とした食感。 きのこの香りはしますが味が薄く、バターだけでは味が足らず、醤油を垂らしてみると、うん、まあ、食べられなくもない感じ。例えるなら脂の抜けたパサっとしたサケの身肉といったところでしょうか。ちなみにネット情報ですが、英語では「chicken of the wood」(森の鶏肉)と呼ばれているそう。確かに鶏肉っぽくもありますね。味が薄くて歯ごたえが「ふむっ」とした感じ。「鱒茸」という名前だけで私的にはすでにかなり高い下駄を履かせたはずなのですが、もう少し、惜しいな・・といった感想ではありました。 そこで今度は茹でてみることに。茹でると鱒色が鮮やかに出てきます。 それを醤油・味醂・酒のタレに漬けます。新潟・村上の鮭料理に「焼き漬け」という簡単料理があるのですが、雰囲気はそんな感じです(焼き漬けの場合、焼いた鮭をあつあつのままタレに漬けます)。見た目は柿のような、ホヤのような感じになりましたが果たして・・。 半日寝かした状態。パクッと食べてみると、これはなかなかの美味でした! 結構しっかりとタレの味を吸い込み、「ふむっ」とした食感が、もう少し引き締まったようにも思えます。「ふむんっ」って感じ? これはいけます。元々の香りや味はあまり感じなくなった気もしますが、テクスチャーとしてはなかなか悪くない気がしました。 なんといっても「鱒茸」ですから。 その名前だけでも、私にとってはちょっとしたご馳走なのであります。〈若林〉□
【お知らせ】川辺の自然観察をまとめた一冊、『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』発売中です!(アマゾンの販売ページはこちら) |