ただいまお仕事させていただいている海のルアー釣り雑誌「SALTWATER」校了の真っ最中。校了というのは作業の最終段階です。なので、のんびりブログを書いてたりする暇はあまりないのですが、まあ少しだけ。 いくら忙しいからといって譲れないものがあります。本当に忙しければそこはやっぱり譲るのですが、そこそこの忙しさならば譲れないのがコーヒータイム。 今回お伝えしたいのは、この器について。
こちら栗の木でできておりまして、見た目もなかなか良い感じなのですが、こいつに挽きたてのコーヒーをドリップして飲むんですね。 そのとき、自分なりにちょっとした作法のようなものがございます。 まず、一杯分の豆を挽きます。 ペーパーに入れて湯を少々落とし、じっくりと蒸らします。 その際、鼻を近づけて、豆が蒸れる匂いをかぎます。 そして次です。次におもむろにこの木の器にお湯を注ぐんです。 そして鼻を近づけて、たちこめる木の匂いを嗅ぎます。 いわば豆と木の香りのブレンドです。 そしてドリップした一杯のコーヒーをいただく・・。 あ~よいよい。
この器、岐阜県の南木曽という町で買いました。 ひねりガラスのコップがあるように、こいつはちょっと珍しいロクロのひねりコップです。 ロクロを回して作る木製の器は普通、美しくも精緻な円形となるものです。 ところがこれは乾燥させる段階でちょっと水に濡らしたままにすることで、木が自由気ままにあばれていかにも手びねりのような味わいがでるのだとか。 ちなみに器を乾かす過程でちょっと失敗したときも、同じようにいびつになるみたいなのですが、これはあくまでも、狙ってあばれさせた作品だそうです。 私はこの器が気に入っています。
ところで、南木曽は木地師の町として知られています。 木地師とは、ロクロで木を挽いて器やお盆などを作る人たちです。 いまでこそ伝統工芸品として観光産業化もしてますが、その昔、木地師の人たちは、人里離れた山奥に棲み、木を切って器を作っては里の人々と物々交換をして暮らしていたそうです。良い木をあらかた使ってしまうと、また良い木のある場所を求め移動しながら暮らしていた人たち。
山奥の暮らしはどんなだったのだろう? イワナとかアマゴとか食べてたんだろか? 子どもは何して遊んでたんだろう?
そしてこんなことを思うわけです。 手先の器用な木地師の親御さんが子どものために玩具を作ってやるとしたら、なじみ深い動物である熊とか猪とか鹿とか鳥とか、魚だったらイワナとかアマゴをかたどった木製の玩具だったんじゃないかしら。
南木曽からも遠くない、私がイワナやアマゴを釣りに通っている渓流に、昔の木地師の人たちのお墓がありました。生活の跡もチラホラと。
そんな川を歩いていると、もしかしたら昔の木地師の人たちが子どものためにササっと作った木製のイワナやアマゴが朽ちかけて、苔むしたりしながら、落っこちていやしないか・・・。そんな気になって歩いているんです。□
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