今日は晴れ。埼玉南部、とても暖かな一日です。

朝方、少しだけ川に行ってきました。

こちらは昨日の写真ですが、今の川はこんな感じ。

水辺ではコイのハタキが盛んになっています。

こんなアシ際では・・

カイツブリのつがい?がウロウロしていました。

どうやらミドリガメが甲羅干ししているところに用があるみたいなのですが、どいてくれません。しばらくウロウロしてカイツブリは移動して行きました。

コイのハタキ(産卵行動)が激しく、道を行き交う人々は、ジャバジャバッと聞こえる先を見て、この大きな魚たちに注目していますが、私は・・

こちら! ニゴイの産卵行動です。いよいよ盛期に差し掛かったようで、広い瀬にも出てきました。

金色に輝くニゴイのオス。

ニゴイのオスは産卵期になると黒くなる・・というのが通説です。それは間違いではないのですが、メスを得て、いざ放卵・放精に達する瞬間になると、オスはベージュというか、クリーム色というか、金色というか、このようにメス以上に明るい色に一気に変化します。10秒もあれば色がガラリと変わります。

激しいオス同士の争い。

いつ見てもニゴイの産卵行動は素晴らしいですね。

私がニゴイの産卵行動観察に夢中になったきっかけは、サケ科魚類の産卵行動にとてもよく似ているからでした。ニゴイの産卵行動様式の基本とサケ科魚類との比較についてはヤマケイ新書『武蔵野発川っぷち生きもの観察記』で紹介しています。ぜひご覧になっていただき、ニゴイの産卵行動観察も楽しんでいただいて、少しでもニゴイの美しさを知る人が増えると嬉しいです。

結構なページを割いて紹介しています。

ぜひぜひ! 

・・と、PRも済んだところで、本日のニゴイの観察はと言いますと・・。

こんな感じの場所がありました。産卵場に来遊するニゴイの雌雄比にもよるのかとは思っているのですが、本日は複数のオスが、産卵場となる瀬(トロ瀬からチャラ瀬の移行帯)でナワバリのような場所の占有を行なっている様子を観察することができました。自分の陣地と言いますか、一定の場所を中心に定位していたオスは4匹。最も大型のオスAは目測ですが70㎝ほどの大型でした。私が見たときはすでにメスに求愛行動をしている最中。メスも大きく60㎝ほど。体色はクリーム色に変化して、盛んに擦り付けなどを行なっていました。放卵・放精が近いのでは・・と観察を続けたのです。近くには小型のオスC(全長35㎝ほど)とオスD(全長30㎝ほど)が、それぞれ50㎝下流側と、1mほど左岸側に定位しながら、時折、オスAとメスのペアに近づいてはオスAに威嚇をされていました。オスの求愛行動も頻度を増して、いよいよ放卵・放精がくるか?・・と思ったその時、5mほど下流側に定位していたオスB(50㎝ぐらい)ともう1匹の来遊オスが一気にオスAとメスのペアに近づいてきたのです。オスAは来遊オスを追い払ったように見えました。気づくとメスがいなくなっており・・その間、ちょっと目を離してしまったので確実とは言えないのですが、気づくと後方5mのオスBの場所で、メスが放卵直前体勢に入っていたのです。慌ててレンズを向けてシャッターを切りました。

放卵直前体勢。

放卵・放精の瞬間(照り返しがあり、水面下はほとんど見えません)。

そして放卵最終段階のメスの顔出し。

美しい瞬間を今年も見ることができました。8時28分。

そう、私の見間違えでなければ、オスBはオスAから横取りしたメスに一気に求愛行動を仕掛け、見事に直後の放卵・放精へと持ち込んだのです。

オスAはメスのいない自分の居場所に戻っては、ポツーンと定位するのみ。。

ちなみにそれまでの懸命な求愛行動(擦り付け)。オスは明るいクリーム色に体色変化しています。

左側にいる黒っぽいのがメスです。

背中があまりにもサケっぽく、思わずアブラビレを探しました。

こんなに頑張っていたのに、残念でした・・。

オスBはオスAよりも体は小さかったのですが、とにかくマメ男というか、メスへの求愛行動が激しく頻度もとても多かったです。そして自分の場所に入ってくる他のオスに対しての攻撃は、オスAよりも遥かに激しく執拗でした。

同じ図をもう一度見てもらいたいのですが、オスAは近寄ってくるオスCやオスDに対し、ちょっと睨みつけるような威嚇をするぐらいで、ほとんど突撃はしませんでした。大きさが違いすぎるため相手にしていなかったとも考えられますが、結果としてオスCとオスDは、オスAの近くに定位場所を陣取ることができていたように思います。対してオスBは広く場所を占有しており、メスはウェルカムだけど、オスが入ってくるとどこまでも追いかけて突撃を食らわす激しさを見せていました。

そしてその後も数回、オスAの場所までフラフラと出向いては、メスをさらってくるような行動を見せたのです。この時もオスAは攻撃はすれどもしつこく追いかけるようなことはしませんでした。

キジ目やツル目、シギ目など鳥の一部は「レック」と呼ばれる集団求婚場所にオスが集まりメスに求愛のディスプレイを行い、メスが気に入ったオスと交尾をすることが知られていまして、1997年のCopeiaに掲載された片野修さんたちの論文「Spawning Befavior of Hemibarbus barbus (Cyprinidae)」(ニゴイの産卵行動)にも、これと似た様式をニゴイも持っていると記述されています。

厳密に鳥のレックとは意味合いが違うようにも思えますが、まさに今朝の観察は「ニゴイのレック」のようなものだったのではないかと。

ちなみにニゴイの場合、メスが一定の場所に固執して定位し、そこにオスがフラフラとやってきて求愛を始める・・なんてこともあります。

気になるのは、どのような時にメスがフラフラするのか、またどのような時にオスがフラフラするのか、ということ。移動して新天地を探した方がいい場合と、ひとつの場所に固執した方がいい場合と、いろいろケースバイケースなのだと思うのです。

ともあれ。

今回の観察はオス4匹が一定の場所に固執して定位し、そこに数匹のメスがフラフラとやってくる一場面でした。オスも1匹、下流からフラフラとやってきましたが、オスBに長い距離を追い回されて逃げて行きました。

そして約20分後、オスBは次の放卵・放精へ。

8時50分。なんとなく最初とは違うメスのような気がします。

さらにその後、10分ほどでもう一度、放卵・放精のタイミングを迎えましたが、写真には収められず。バッテリーがなくなり、川を後にしたのでした。

オスが占有している場所の広さが繁殖成功回数と関係しているのかも・・。

そんなことを思った今朝のニゴイ観察でした。〈若林〉□

 

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