気合を入れてガサガサしてたら腰を痛め、しばらく川に入るのを自重していたことをきっかけに、この夏は川ミミズよりも「カブトムシの墓場」をせっせと観察しています。 わかったのは、思っている以上にカブトムシは捕食者に食べられているということでした。食べているのは主にカラスとタヌキなのだそう。 カブトムシは主に腹を食べられていて、残された外側の「殻」が、このように地面へと打ち捨てられていたのです。 その死骸は、さまざまな生き物によって利用され、少しずつ土へと還っていきます。例えばこの写真にあるような土の塚は、トビイロシワアリという小さなアリが作ったもの。他のアリなどに獲物を取られないように土の粒で埋めて、その後ゆっくりと食べていくのだそうです。私はこの様子からトビイロシワアリのことを「埋葬蟻」と呼んでいます。 小動物の死骸を土の中に埋めるのは、トビイロシワアリだけではありません。有名なところでは、モンシデムシなどはネズミなどの死骸を土の中に埋めながら肉団子にして、それを餌に子育てをするのだそう。このモンシデムシが「埋葬虫」と呼ばれており、そこから拝借してトビイロシワアリを「埋葬蟻」と呼ぶことにしたのです。 埋葬蟻はさまざまな虫の死骸を埋葬します。これはタマムシ。 これはおそらくミンミンゼミ。 埋葬中のトビイロシワアリも観察することができました。 これは小さなセミの幼虫。おそらくは羽化に失敗したもので、埋葬蟻に埋められ、食べられた後に雨などで姿が露わになったものと思われます(体に穴が開けられています)。 埋葬蟻に埋められて利用された虫たちは、少しずつ土と同化していきます。 ただ、カラスなどに上手に中身を食べられたカブトムシの殻は、埋葬蟻にとってもあまり魅力的ではないようで、中途半端に埋めたままのものもたくさん落ちています。 枯れ葉の上などの死骸も埋めづらいのか、そのままになっているようです。私はこのカブトムシの殻の中が何か小さな虫の居宅になってはいないかと思い、見つけると中身を観察しています。 暮らしやすそうでしょ・・。 居宅になりそうな殻は結構落ちているのですが、これは!というものには、なかなかお目にかかれません。 暮らしやすそうなんですけどね。デザインもいいし。 水が溜まったらプールにもなりそうな・・。 唯一、利用しているのはこの人たちです。 ダンゴムシ。 これは居宅というよりも残ったお肉を食べているような気もします。 でも湿った場所ならば、彼らにとって暮らしやすいお宅にもなるはずで、「食べられる家」なんて素敵ではないですか? 窓からのぞく、カブトムシハウスの住人。 そんななか、ここら辺では珍しい死骸を先日見つけました。 腹を食われていないカブトムシの死骸です。 観察するカブトムシの死骸は、ほぼお腹を食べられているのですが、こいつはどのような理由があったのか、お腹が残ったままでした。 殻には突かれたのか、咬まれたのか、痕がついていましたが、身体を鳥やケモノに食べられた形跡はありません。 こんな死骸には、埋葬蟻も埋葬を始めますが、それを押し退ける?ようにダンゴムシが集まってきます。埋められる前に美味しいお肉を食べようということなのでしょうか。 実はこの、埋葬蟻とダンゴムシのせめぎ合い?は他の虫の死骸でも観察することができます。例えばアブラゼミ。 埋葬蟻がせっせと埋葬するその横で、巨大なダンゴムシがぐいぐい押し退けるようにセミの柔らかそうなところに食いついています。埋葬蟻は、こんなことにならないように、できるだけ早く埋めようとしているのかもしれませんね。 先のお腹を食べられていないカブトムシの死骸には、こんな虫も来ていました。 小さな甲虫。エンマムシの仲間でしょうか? 定かではありませんが「閻魔虫」というのもすごい名前ですよね。 さて。 埋葬蟻に利用され、一度半分ぐらいまで埋められたけど、雨によりまた姿が露わになったカブトムシは、半分土に埋まったような形で、土へと還っていきます。 まるで土の中から生まれてきたようでもありますが・・。 そして今朝、新たな小さな発見をしました。 埋葬蟻がカブトムシの死骸の周りに集めた土の粒から、小さな草が芽を出していたのです。 カブトムシの養分も利用されているのでしょうか。おそらくは団粒構造に耕された土がいい感じに発芽に役立っているのではないかと、そんなことを思いました。 カブトムシの塚。中央右側には小さなアリが小さな虫の死骸を運んでいました。 死骸の周りに発芽した草は、どのように育っていくのでしょうか・・。 そんなことも楽しみに、観察を続けたいと思います。〈若林〉□
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