このところ観察しています「埋葬蟻」ことトビイロシワアリについて、タマムシの埋葬中に見た行動が少し気になったので、それを紹介したいと思います。

数日前の朝方に観察したタマムシは、このような感じに背中を何者かに潰されて絶命しておりました。

タマムシはカブトムシのように腹を食われているようなことは少なく、私がこの夏に観察した10例ほどのうち、半分以上は無傷の状態で死んでいました。この死骸を見ると背中のメタリックグリーンが若干青みがかっていましたので、死んで数日、太陽熱にさらされた状態だったのかもしれませんが、潰された背中は体液で湿り気を帯びており、比較的、死んでから間もない姿のようにも見えました。

まだほとんど塚は作られておりませんでしたが、埋葬蟻がたくさん集まり、今まさに塚状に埋められようとしている状態に見えました。

上から見ると、こんな感じ。

そして私は午前中の仕事をして、午後3時ごろに気になって、もう一度、見に行ってみたのです。

だいぶ塚が作られておりました。このように小さな土の粒を積み上げて塚状にして、獲物を覆い隠すことで、他のアリなどに横取りされるのを防ぐのだそうです。まず埋めてから、少しずつ利用していくのだとか。

例えばセミなどは、こんな感じに埋めてしまいます。

タマムシを見ると、せっせとアリたちが小さな土の粒を運んで埋めていたので、少しの間、観察してみました。すると、妙なことに気づいたのです。

一匹のアリが、他のアリにアゴでつかまれたまま身を固くしていました。そして、そこに向かって別のアリが、運んできた土粒を押しつけたのです!

土粒を押しつけられているアリは、体の胸部と腹部の間をアゴでつかまれており、動けなくなっています。

なんだか「人柱」を連想してしまいました。以降、仮にこの人柱にされている?ように見えるアリを「ハシラ」と呼ぶことにします。

ハシラの上に土粒を置いているように見えます。アリにとっては小さな土粒も大岩ですね。

ハシラは他のアリに身柄を拘束されているようです。

ハシラ、思わず逃げ出します。

タマムシの背中に登ろうとしますが・・

ガッチリとアゴでつかまれています。

さらに一匹きました。なんだか「ハシラ」は他のアリに比べて少し小さくも見えます。そしてかみついているアリの方が、なんとなく赤っぽくも見えます。でも確かではありません。

もう一匹のアリに前足をかまれ、引きずり降ろされます。そこに上から土粒をもったアリがやってきました。

そして土粒をドシンと。この時は狙いが外れたのか、かんでいるアリの方に当たった気がします。でも「ハシラ」を拘束しているところに土粒を持ってきているようには見えました。

二匹のアリに引きずり降ろされる「ハシラ」。残念ながら動画1はここまで。実は現場では、何かが起きているとは思いつつ、何が起きているかまでは把握できていなかったので撮影をやめてしまったのです。

シーン2に移ります。二匹のアリに挟まれているのが「ハシラ」です。見えていませんが、胸部と腹部の間をまた別のアリにかまれて動けなくされています。上からイカついアリがやってきて、恫喝しているかのようなイキリを見せつけます。かわいそうに「ハシラ」は萎縮して?触覚も畳んでしまっているようです。

下にいた方のアリが「ハシラ」の体をあらゆる方向からチェックして、時折かみついたりもしながら正しているように見えます。

お尻の近くをかまれている様子がわかります。「ハシラ」は体を丸めています。

首根っこをかまれて「もちっと顔上げろや」と姿勢を正されています。気の毒な「ハシラ」・・。

丸まった体勢を取らされた「ハシラ」。尻近くはかまれたままです。これからどうなるのかとても気になりましたが、残念ながら撮影はここで終えてしまいました。

シーン3。タマムシの目の前あたりで数匹のアリが固まっている姿が見えますが、「ハシラ」が2、3匹のアリにかまれているようでした。小さな土粒を押しつけられているようにも見えます。

数匹で、一匹のアリの自由を奪っているように見えました。

そして「ハシラ」はタマムシの体から降ろされ土に埋められるような体勢に・・。

そしてそこに、やはり土粒が落とされました。

このままでは埋められてしまうのではないでしょうか・・。

その時、ゾンビのようにうごめく数匹のアリから逃れるように「ハシラ」がタマムシを登ろうとします。

しかし、すぐに足やお尻まわりにかみつかれ、引きずり降ろされます。そのままカメラからフェードアウト・・。動画はここまででした。

 

「ハシラ」がなんのために身柄を拘束されていたのかはわかりません。あくまでも見たままの印象からの妄想ですが、土粒を積み上げやすくするための「足場」にされているのではないでしょうか。そのように見えました。立体的な死骸を覆うのはアリたちにとっては難しく、それゆえ、足場を組んだり、それこそ「人柱」として埋めてしまうこともあるのではないかと・・そんなことも思い浮かびました。

これも見たまんまの雰囲気でしかありませんが、「ハシラ」は他のアリに比べて少し小さくてより黒いアリに見えました。逆にかみついている奴らは少しアゴが大きくて赤茶色っぽくも見えた気もします。いずれにしても、もう少し継続的な観察が必要です。

ふと、思い浮かんだのは、さらに数日前に見た、このシーン。

埋葬されたタマムシの死骸のかたわらに落ちていた小さなアリらしき複数の死骸。果たしてこれがトビイロシワアリなのか、そもそもアリなのかすら、画像の質が悪く判断がつきかねるのですが(手前のやつはお尻の先が尖っていて、アリではないようにも見えます)、「ハシラ」たちの亡骸も含まれている可能性もゼロではないな・・と、そんなことを思いました。〈若林〉□

 

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