サンサンこと台風10号が列島を右往左往した週末。私は栃木県立博物館で開催されたミミズ研究談話会主催の「ミミズ同定実習」に参加してきました。 国内ミミズ研究のトップランナーである『ミミズ図鑑』の石塚小太郎先生、駿河大学の伊藤雅道先生、栃木県立博物館の南谷幸雄先生による講義ではミミズ分類や形態、生態の基本からミミズ研究の歴史、解剖実習まで(!)、まさにミミズづくしの2日間。頭がじんわりするぐらいの情報量をいただき、ミミズへの理解が深まるとても有意義な時間を過ごすことができました。また、先生方はもちろん、参加された若い方々の熱量も浴び、この学問への熱量と可能性を感じた次第です。私も少しお時間をいただき、錚々たる面々の前で川ミミズのお話をさせていただきました。緊張以上に紹介したい欲のほうが勝り、さほどの緊張感もなくこれまで撮影してきたお写真や短い動画とともに川ミミズの実態と魅力を熱く語ってまいりました。 シーボルトミミズとヤンバルオオフトミミズの標本。想像を絶するほどの大きさです。 ヒトツモンミミズの内部構造の簡易スケッチ。私的にはミミズが咀嚼するために持つ「砂嚢(さのう)」がとても気になりました。玉ねぎのような形をした筋肉の塊で、中には小さく硬い砂つぶが入っており、ここで取り込んだ腐食などを細かく砕くのだとか・・。要は砂肝です。ヒトツモンミミズの砂嚢は特に大型で、モリモリと食べる大食漢がうかがえました。 さて。 台風の大雨もあり、この週末、結構な増水となったであろう近所の沢を見てみました。 印象としては、新しくヘンイセイミミズと思わしきものなど、小型のミミズが一気に増えた印象。 これなのですが、印象的にはヘンイセイではないかもと思いました。雄性孔は2つしっかりありました。こいつが一気に川底の砂礫下には増えたようでした(這い出しはなし)。 こいつです。ヘンイセイにも体型的には細長くて似ていなくはないのですが、そうとも言い切れない感じ。赤みが強く環帯の白が際立っているのも特徴的でした。 またこのような白っぽい幼体のミミズも・・。雰囲気は4月から6月に成体として這い出す「クリームオヨギデカミミズ」っぽくもあり、もしかしたらこのぐらいの幼体でこれから冬を越すのかしら・・と思ったり・・。クリームは25㎝を越す大型ミミズです。 ヒトツモンもいました。少し数は減ったような印象もありますが、まだまだいます。 掘ったら尻尾がグニュっと出てきました。 美しいです。 このヒトツモンミミズで気になっているのは環帯の色です。ご覧のようにレンガ色をした環帯を持つものもいれば・・ こんな感じに白い脂のようなふっくらとした環帯を持つものもいます。少し前まではこんなやつばかりだった気がします。 こちらは体色が黒ずんで環帯がレンガ色。 ふっくらしたレンガ色の環帯は見ませんので・・ 卵を産んだ後の姿なのかも・・などと妄想しています。 ヒトツモンミミズは秋産卵で、まるで年魚のアユのように産卵するとすべて死んでしまうと言われています。すでに弱って死んでいる個体も見かけます。 私としましては、彼らがいなくなってしまう前に、川の中で次世代に命を繋いでいる姿を観察したいと願っています。卵包もしくは産卵の瞬間です。 また、ヒトツモンミミズは、ほぼ単為生殖なのではないか?とも言われておりますが、なかには交接をするための雄性孔を持つものもいて、それらの役割も謎に包まれているのだとか・・。 謎多きミミズ。そして川ミミズ。この秋も驚くシーンを見られるといいな。〈若林〉□
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