本日、埼玉県南部の我が事務所周りでは不穏な黒い雲が行きかい雷もゴロゴロ・・でもあまり雨は降りませんでした。スポット的にゲリラ豪雨的な雨に見舞われた方もいらしたかと思います。川のそばでは特に注意が必要ですね。

さて。

最近はこのような川で夕まずめの短時間、竿を振っています。

 

狙いはコイツ。

ナマズです。

そしてルアーは楠ノ瀬直樹さんが手がけ愛した飛豚73prop♪

今年の梅雨から夏にかけては、このルアーをたくさん投げて、その秘密を少しでも知りたいと思っていました。いわばテーマ、ですね。ところが・・。

 

ふと、何気に自分が川に持っていくルアーを広げて並べたりしていると・・

ちなみに左からメドウマウスむな毛チューン、飛豚73ノイジー、飛豚73prop♪、チキチータ・バンビーノ。

一番左のメドウマウスに目が行ってしまいまして・・。

あれ? これってリップが金属板だから、上手く曲げれば飛豚っぽくなるんじゃないかい?

 

これもいわば忙しない日常業務からの現実逃避というやつでしょうか。

気付けばリップを曲げていたのです。

後ろから見るとこんな感じ。

手荒な・・。

で、さらに

もう後戻りはできない・・。

 

そして勢いに任せて完成したのがコレ。

メドウマウスむな毛チューン飛豚風手荒手曲げリップバージョン。

 

さっそくコイツを泳がせに川へ。

たいして期待はしていなかったんですけどね。

お?

おおっ! 水面に見事な引き波を引きながらウネウネとウエイク。完全なる偶然かつ手荒な手曲げでありながら、静かに水面を泳ぐネズちゃんが誕生したのです。

 

実はネズちゃんといえば、過去にはこんなのも作っておりまして・・

メドウマウスジタバグリップチューン。

こちらはかの名作、ジッターバグのようにパポピペ……と泡を噛みながら独特の軽快な音を出すネズちゃんです。ナマズはこのパポピペ音が大好きでして、これを聞きつけるや寄ってきてものすごい勢いでパシュパシュジョボッシュ!みたいな派手な音を立てて食いついてくるわけですが、今回のメドウマウスむな毛チューン飛豚風手荒手曲げリップバージョン(長いので以下、むなチュー)を投げてひとつ、気付いた傾向がありました。

それは「食い方がとっても穏やか」ということです。

たいていは引き波を立てるむなチューの後ろを追いかけるように、ジョーズのように?引き波を立てて追ってきてはチュポッとか、コプンッとか、軽やかな音を立てて去っていってしまうのです。

ジョーズのような引き波はとてもスリリングなので、それはそれでとても楽しいのですが、いわゆるナマズの醍醐味ともいえるパシュパシュジョボッシュは皆無。

ツイッターのコメントでやり取りをしたある方の意見では、水面ではなく水面直下だと静かに食べますよね、とのこと。確かに皮一枚水面がルアーに被っているようにも見えますが、ほとんど水面と言ってもいいんじゃないかと私的には思いました。それよりもルアー自体が「静かな」ことに関係しているのではないかと・・。

その後もチュポッととかコプンッとかはありますが、針がかりせず。やや大きめのシングルフックをつけているので、針がかりが悪いのはそのせいかもしれませんが、私の釣りにおいてそこはあまり重要ではなく、今日もむなチューを襲おうとするナマズが引き波を立ててジョーズのようにやってくる、その水面の盛り上がりにドキドキドキドキしていたのでした。

が、そのドキドキの終焉は意外にもあっけなくやってきました。

いつものようにルアーを泳がせていると(引き波はあったかなかったか・・)、例によってチュプッと小さな捕食音。針がかりはしないでしょ~と思っていた私の手元にガクンッと強い衝撃が! 流れに乗ってグイグイと引き込むそいつを何とか引きずり上げると・・・。

 

なんとニゴイ・・。感じで書くと似鯉。コイに比べてスマートだからスマートさんなどとも呼ばれていますが、この魚、虚空を見つめる目が怖い・・。しかもおおよそ70㎝の巨大です。ネズちゃん、コワかったろうに・・。

んなことよりも、もしかしてむなチューを襲っていた引き波の正体はニゴイかい? チュプッという捕食音もナマズじゃなくてニゴイだからだったのかい? ドキドキドキドキしてたのは、全部が全部、虚空を見つめるあなただったのですか?・・そう思ったら、へなへなと力が抜けてしまいました。

いや、ニゴイも嫌いじゃないんですけどね・・・。でもナマズだと思っていたから・・。そしてナマズがジョーズのように引き波を立ててルアーに襲いかかるシーンに、その先の夢を見てたから・・。

それはまるで『星の王子さま』にあるような絶望感でした。

満天の星空。王子さまが帰った星はわからない。でもそれでいいんだと王子さま。だって僕がこの無数の星のどれかひとつで笑っていたとしたら、その星かもしれない無数の星が、すべて笑っているようにキラキラと輝くでしょうと。すべての星が笑うように輝いている。そう思えるのはあなたにとって、とても幸せなことでしょうと。おおよそこんな一節がありました。

ところがいま、その星には王子さまがいないことがわかったのです。そこにいたのは似鯉。虚空の目をしたスマートさん・・。これまでのルアーへの反応はすべてナマズではなくニゴイであったと・・。そう思うと夢がはらはらと舞い散った気にすらなりました。

その後もむなチューを泳がせてはみました。でもルアーの後ろに引き波が立つたびに、あれはナマズじゃないんだ、虚空の目をしたニゴイなんだ・・と思うと心が冷えるばかりか怖れすら抱いてしまう始末。いや、デカいニゴイって結構、コワいんですよ・・。

こわい。

 

でもやっぱり、コワいもの見たさ、なんでしょうか。それとも一縷の望みにしがみついたというか・・。

 

王子さまは、そんな私に微笑んでくれました。

 

引き波・・そしてコプンと。

うわニゴイか!?(ヒイィ)……いや、違う!

 

じゃーん。

 

ナマズはやっぱりこのネズミに引き波を立てて追ってきてたんだ。

ジョーズのように。

そしてほとんど音もなく吸い込んだのだ。

王子さまは微笑み、無数の星がキラキラと輝く。

そうだ、やっぱりそうだ。

この梅雨&夏のテーマが決まった。

もうしばらく投げ続けよう。

 

そういやこのところ、飛豚いっさい投げてないな・・。〈若林〉□

 

 

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