暑かったり涼しかったり、身体を壊してしまいそうなこの頃のお天気。いろは坂の上は肌寒くすらありました。

中禅寺湖の流入河川にヒメマスを見に行ってきました。

湖畔でオスのヒメマスがジャンプ。

中禅寺湖は、日本屈指のサケマスレイク。

サクラマス系のホンマスをはじめ、ヒメマス、ニジマス、ブラウントラウト、イワナ、ブルックトラウト、レイクトラウトと、7種のサケマス類がいる、釣り人憧れの湖です。

秋から冬にかけては、これらサケマスの多くが産卵期を迎えるのですが、その第一陣がヒメマスとなります。

真っ赤な婚姻色の出たオスのヒメマスです。

オスはメスよりも、より赤が強く出て派手になります。

さらに特徴的なのが、その背中。セッパリ(背っ張り)とも呼ばれる背中の盛り上がりが、真っ赤な婚姻色とともに、この時期のオスのヒメマスの大きな特徴です。

なぜこんなに背中が盛り上がるのか?

その真意は想像するしかないのですが、ひとつサケマスの仲間には産卵行動時にひとつの基本的なルールがあります。

それは「大きい者が強い」ということです。

その前に、ここで豆知識としてサケマスの仲間の産卵行動をざっとご説明しますと・・。

①メスが産卵床(巣)を川底に掘る。

川底を掘っているホンマスのメスです(左の小さな魚はお相手のオスです)。

②オスが産卵床にメスと並ぶようにして放卵と放精を行う。

③メスが産卵床を砂利で埋める。

・・となります。

このとき、メスは自分の掘った産卵床という「場所」を守るナワバリを持ちます。

対してオスは、「場所」の代わりに、卵をたくさん持って産卵床も作ってくれる「メス」を独占しようとします。

なのでだいたいメスが産卵床を掘っている間は、その後ろにオスがいて、メスを見守っています。

オスとメスが一匹同士ならば、産卵まで平和な時間が流れるのでしょうが、たいていの場合、そうはいきません。

なぜならオスは期の熟したメスを探してフラフラしてるからです。

一匹のメスを二匹のオスが見初めると、そこにオス同士の争いが生じます。

・・と、長い説明になりましたが、その際に優劣を決める大きな要素が「体の大きさ」となるようなのです。

より大きなオスは、自分より小さなオスを追い回したり、嚙みついたりして追い払います。

そのとき、体の大きさが同じぐらいだと、その争いは壮絶になります。

互いに嚙みつきあう争いが数時間続くこともあるぐらい。

そんな争いの形のひとつとして、面白いのがディスプレイ(誇示行動)です。

それはお互いがメンチ切りながら、「俺のがデカいかんね!」と自分の体の大きさを競い合う行動です。

横並びになって各ヒレを張って、口を半開きにしたりしながら、パラレルに並んで自身の威厳?を誇示し合うのです。

これはシロザケ(いわゆる鮭)でも、カラフトマスでも、イワナやヤマメでも見られる行動です。

で、いわゆる「セッパリ」と呼ばれるオスの背中の盛り上がりは、このディスプレイで有利に立つという意味があるように感じるんです。

産卵期のオスがいわゆる「セッパリ」になるサケマスの代表は、カラフトマスとヒメマスでしょうか。

全部のサケマスのオスが極端なセッパリになるわけじゃないんですね(セッパリになる代わりに、たとえばシロザケなんかだと、オス同士が戦うときに炎のような「闘争色」が鮮やかに燃え上がったりもします)。

話が長くなりましたが、もう少し・・。

そのセッパリの、ヒメマスのオス同士のディスプレイで、今回、面白い行動を目にしたんです。

二匹のオスが並んで自身の背中の高さを誇示しあうわけですが、ちょっと不利かな?・・と思った(のかどうかはわかりませんが)ほうのオスが鼻面を上に上げる行動に出たんです。

「俺のほうが高いかんね!」と・・・。

がんばってました。がんばって鼻を上げて、相手の様子を心配そうにチラチラと横目で見て・・

・・ハッ、動じていない!?(汗)

で、結局は、相手の迫力に気圧され敗北。

メスを手中におさめることはできなかったようです・・。

そんなオスは、あきらめて後ろに下がり機をうかがうか、また別のメスを探して泳ぎ去ります。

そうこうしてる間にも、オスは次々とやってくるのでした。〈若林〉□

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