めっきり冷え込みました。目下のところ、毎月の『ソルトウォーター』誌と一年に一度の『リバーウォーク』誌のかけもち編集を進めておりまして、脳内は海に行ったり川に上ったりと、溯河性魚類さながらの目まぐるしさ。

そうなるとやはり、しばし現実から離れることも必要なわけでして。

こんなものをボーッと眺めたりしています。

サーモンやトラウト関連の海外書籍……って、やっぱりサカナなのかい!というツッコミは置いときまして。左からご紹介しますと。

①『世界の鮭と鱒と岩魚~漁師のための自然史』(SALMON,TROUT&CHARR OF THE WORLD  RUPERT WATSON)/②『北アメリカの鱒と鮭』(TROUT AND SALMON OF NORTH AMERICA ROBERT J. BEHNKE)/③『フライフィッシャー~フライフィッシングの基本』(The Fly Fisher)/④『アメリカの釣り』(FISHING in AMERICA Charles F.Waterman)

①は世界のサケマス類の分布や生活史、生態等がざっとまとめられています。②は北アメリカのサケマス類の分布や生活史、生態が詳しく紹介されています。③はドイツのフライフィッシング教書。大判の写真と長島祐成さんのイラストが美しい一冊です。④はアメリカのゲームフィッシングの歴史がまとめられています。

いずれもがっしりとした大判です。英語が苦手な私でも写真とイラストを眺めつつ気になったところはGoogle翻訳に頼れば大意はつかめるので楽しめます。

 

なかでも最近、ちょいちょい眺めているのはこちら。

表紙のみの紹介ですが、JOSEPH R. TOMELLERIさんのリアルでグッとくるイラストの数々に癒されています。と同時に、ニジマスやカットスロートトラウトたちの地域ごとの体型や体色変異の大きさに「へぇ~、ほぉ~、はぁ~、むむむ……」とひとり静かな事務所で唸りを上げております。日本でも、たとえばイワナなんかは沢ごとに体色変異があり、私などはその違いを楽しみながら釣りをしているところもあるわけですが、ニジマスの体色変異などを見ると、それはもうダイナミックなわけです。美の競演と言いますか、生きているうちに、そのいくつかをこの目にすることができたなら……と溜め息がでます。

そんななか、特に気になっているのは、メキシコのニジマスと、ブルトラウト(ブルチャー)というイワナの仲間。

いずれもそれぞれのグループにおける北アメリカ大陸で最も南方に分布するマスたちです。

それがなんというか……極東の島国である日本のイワナやヤマメとなんとなく雰囲気が似てるんですよねー。

これは日本のヤマメです。体側のパーマーク(小判型斑紋)が特徴的。

これは日本の川で釣ったニジマス。

これもニジマス。

小型のニジマスって、パーマークがくっきりしていて、ヤマメにとても似てるんです。背ビレや背中周りの黒点が多いか少ないかぐらい。

で、メキシコの気になっているニジマスは、黒点が特に少ないタイプで、見た目はヤマメそのまんま、なんですね。

ヤマメの起源は氷河期に日本海にまで分布を広げたニジマスが、日本海湖(大陸と日本列島が繋がり湖だった時代があるそうです)に閉じ込められて、そこでヤマメやアマゴの仲間に分化した……なんて一説もあるほどですから、似た姿を見るととても気になります。

 

一方のブルトラウトですが、こちらは北米大陸西海岸側に分布するイワナ属の中で最も南に分布する魚。北からホッキョクイワナ、北海道にもいるオショロコマ(ドリーバーデン)、そしてブルトラウト。もう一種、ブルックトラウトもいますが、こちらは元々の原産は北米大陸の東海岸側。

全世界的に見ると、イワナ属の南限は日本の紀伊半島にいるキリクチですが、太平洋を挟んだ向かい側の北米大陸西海岸ではブルトラウトなんですね。

こちらはオショロコマの亜種とされている然別湖のミヤベイワナ。長いヒレが特徴です。

 

で、こちらは道北で釣れたアメマス。

こちらは埼玉県・奥秩父のニッコウイワナ。

 

ちなみに分類学上は、日本にいるイワナは①オショロコマ(ミヤベイワナ含む)と②アメマス(ニッコウイワナやヤマトイワナ、キリクチ、ゴギを含む)の2種とされています。

 

で、ブルトラウトは、ここに挙げた写真で言えば、ぜんぜんアメマスではなくて、ミヤベイワナとニッコウイワナの中間ぐらいな雰囲気。

あくまでも数少ない写真からの見た目だけの独断なので、なんの根拠もないのですが……。

 

海を挟んでの南方系イワナ同士、なんらかの共通点を見いだせそうで、一度目にしたいなーと思っているイワナなのです。

さて。

最後にちょっとだけ宣伝を。

現在、編集中の『RIVER-WALK Vol.2』では、日本の美しいサケマス類の写真が多点登場する予定です。

「渓流の宝石たちに、僕らは目を奪われる。」

そんなキャッチを掲げ、渓流魚好きの方には満足を、渓流魚をあまり見たことのない人には驚きを感じてもらえたら……と思っております。〈若林〉□

 

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