台風が過ぎて半日もしないうちに、酷暑が戻ってきた埼玉南部。

巨大な渦巻きが残していった散り散りの雲が夕陽で染まらないかと川へ行きましたが、残念ながら燃えきらず。でもこの染まるか? 燃えるか? 映えるのか?・・の末に、中途半端な色合いのまま暮れていく空も、なかなかいいものです。

さて。

ふと写真を整理していましたら、思わぬものを見つけました。

カルガモの親子の写真です。

 

今年の春から夏の目標として、近所の川で、ぜひカルガモの親子をひと目見てみたい、というのがありました。が、いまだ叶わず。この川の親子、絶対に見てやるぞーと、結構日々、観察を続けていたのですが、前のめりなときほど、きっと現れてはくれないんだと思います。

・・が、実はすでに見ていたようです。3年前。データを見ると2015年7月26日とあります。全然覚えていないんですね。

というか、きっとこのころの私はカルガモなどにまったく興味がなかったんだと思うんです。なので、あ、カルガモの親子だね・・ぐらいな平坦な感情でパチリと一枚写真を撮ってスルーしていたのだと・・。

そんな私、先日、もう少し標高の高い渓流で、こんなものを見ました。

おおっ!・・これはJの食痕・・。 

Jとはいわば、カケスですね。青と黒の縞々のきれいな風切り羽が特徴です。

同行者によると、おそらくはオオタカに食べられた痕だとか・・。

ドキドキ、ドキドキ・・。胸がもう、かなり高鳴ってしまいます。

なぜならば、昨年の秋から今年の春にかけて〝トリ部〟と称し、近所の川でオオタカがコサギを食べる食痕探しに夢中になってたから。

カルガモの親子を探したかったのも、昨年の秋から今年の春にかけて、毎日のように近所の川に集まるカモを観察してたから。

最近で言えばこちらも。

アリです。おそらくはクロヤマアリの働きアリが、羽アリを捕まえたシーン。

こちらも見た瞬間、うっこれは・・!と、妙にドキドキしてしまいました。

なぜならば、クロヤマアリは、自分の巣から巣立った女王を、働きアリが捕まえて自分の巣に連れ戻す。いわば〝出戻らせる〟という。その行動が近年になって観察された・・ことをつい最近、知ったから。

このシーンが、そうなのかどうかは、私にはわかりませんが、トクンと心臓が高鳴った瞬間でした(同時に女王アリにとって最大の敵はアリである、ということもまた最近知ったこと)。

同じ光景を見ても、感じ方は人それぞれ。ひとりの人間の中でも、そのときどき。

以前、「Coyote」という大好きな雑誌に、これまた大好きな作家・池澤夏樹さんが「全部を見られるはずがない」というコラムを書かれていました。

旅の話。たくさん旅すれば、世界を知ったことになるのか?という話。

(引用)最初に世界があってそれを見尽くすべき者として自分がいるのではない。最初に自分がいて、その自分が旅に出て歩きはじめる先に世界が展開される。今はこの主観主義の方が人は幸福になれるような気がしている。(引用ここまで)

旅ならずとも、「世界は自分の歩く先に展開される」というイメージは、私の中にもありまして。その手応えは特に、好奇心の先に見える景色に心を動かされた瞬間、強く握り返してくるような、そんな気がするこの頃です。〈若林〉□

 

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