今日は取材で都内へ。そのついでに、ずっと気になっておりました「縄文特別展」に行ってまいりました(上野の国立科学博物館で9月2日まで開催)。

平日にも関わらず、チケット販売から長蛇の列。終了の直前だからでしょうか。かなり混雑しておりました。

「1万年前の美の鼓動」というサブタイトルにもありますように、装飾を凝らされた縄文土器や、エネルギッシュで個性的な土偶が数多く展示されており、見ごたえたっぷり。上写真の火焔型縄文土器は途中からソフトクリームのコーンにしか見えなくなってしまったりもしましたが、これで鮭のぶつ切りなどをグラグラと煮炊きしていたのかと想像すると、もうそれだけでグッとこぶしを突き上げたくなるような激情にかられます。

ほかにもハート形土偶とか、あまりにも有名な遮光器土偶とか、ほかにも表情や動き豊かな土偶の数々を見ていると、ドラマティックなライティングも手伝うのでしょうが、不思議な気持ちにさせられます。体育座りをしている土偶に、隣にいた若い女性が「お疲れ様ですっ」とねぎらいの言葉をかけていましたが、なんとなくその心境もわかるような。数千年の時を隔てた偶像には、なんとも言えぬ無言の雄弁さがありました。

そんななか、私的に気になったひとつの土器がありまして・・。

こちらです。

写真が撮れないので、復元図(?)でご勘弁を・・。

これ、なんだと思います?

私的にはひと目見た瞬間、トリ部(川で鳥を見ながら散歩する活動)の部員としてピンと来たわけです。

これでしょと。

これでないかい?と。

絶対にこれでしょう!と・・。

写真はヒドリガモですが、別にヒドリガモじゃなくたっていいわけなんですけどね、ようするにカモです。その反り返った口ばしといい、盛り上がった頭頂部といい、背中やお腹の曲線といい、飛翔時の脚といい、なんとまあカモの魅力を凝縮させた作品なのかと・・・ひとり感動しておりました。

中央の黒い部分は穴が開いておりまして、なんだろう・・そこにお線香を立てるのか・・いや、お香を中に入れるもの? それとも・・

まさかこれか? 骨酒用の器なのか? いや・・お酒は縄文時代から飲まれていたという説もあるようですが、骨酒はなかろう・・。

そんなことをあれこれと想像しながら楽しんでいたわけです(ちなみに北海道の千歳市で出土した約3,000年前の作品とのこと)。

すると隣にいた老齢のご夫婦が、やはり目に留まったのでしょう。ご主人が奥様にこう言ったのでした。

「これはまあ、立派なカメだな。いや立派なカメだー」

でしょうでしょうと。立派なカモで・・え? カメ? カモじゃなくてカメ?

「なにかしらねぇ。でもやっぱりカメよね」と奥様。

いや・・これはカメじゃなくてカモ・・と、ほとんど口に出かかりながらも説明パネルを見ると、こんな記述が・・。

「亀とも水鳥とも言われているが不明」

 

いや、カモでしょー!!

 

結局、そればっかりが気になったまま展示場を後に。でもとても楽しめました。

帰りすがら、切り株で無垢の小屋が作れそうなほどの巨大な木を見上げると、見慣れた葉っぱが。

事務所の近くの並木にもなっているユリノキでした(これはうちの近所で撮影した写真です)。

とにかく太くてデカい。

たくましくて神々しい。

説明書きには「明治8、9年頃渡来した30粒の種子から育った1本の苗木~」とあり、明治8年は1875年で、2018-1875=143。つまり樹齢143年になりますか。

143年といったら、えらい昔だなぁ~・・なんて思いつつ、さっきの「カモ型土器」は3,000年前か~・・などとまた思い、時のスケールの面白さに打たれるのでした(ちなみにジュラ紀や白亜紀はおよそ1億年前ですから、やっぱり恐竜はすごいぞと)。

ところで。

約6,000年前(その頃も縄文時代ですが)、その時代は気温が高く、海面がいまよりもだいぶ上昇していたらしいのですが、ちょうど私がよく通っている近所の川のあたりが海に注ぐ最下流だったようです。シジミなどの貝塚がたくさん残っている地域です。

その頃、この川の河口に鮭は溯上してきたのだろうか?

カモは飛来していたのだろうか?

それらを捕え、かの激情のごとき縄文土器でグツグツ煮たりして食べていたのだろうか? 熊や猪を、ヤマメや鮎を。少なくても大量のシジミは煮て食べていたのだろう。広く浅い海に小さな船で漕ぎ出でて、鹿骨の釣り針なんかで大きなチヌとか釣っていたのだろうか・・。

あまりにも勉強足らずで、めちゃくちゃな時代感覚なのかもしれませんが、そんな暮らしを想像するのは楽しいことです。〈若林〉□

 

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