この一週間、津本式・究極の血抜きを施したマダイとマアジを熟成させながら、段階を追っていただいておりました。

フェイスブックに逐一、レポートをしていたのですが、それをブログにもまとめておきたいと思います。

【火曜日・漁獲から推定3日目のレポート】

津本式・究極の血抜きを施したマダイとアジ。
本当は2日間寝かせてから取り出して一部食べ、さらに残りを熟成へ‥なんてプランを考えていたのですが、24時間とちょっとの寝かせで一部を食べてみました。

マダイは昨日の朝、豊洲市場で仕入れたものとのことなので、おそらく釣れたのは一昨日の朝? もしくは3日前の朝?

‥水揚げされて3日目ならば、すでにひとつの早期熟成的な食べごろなのではないか? そしてアジにいたってはいつ仕入れかすら聞いていない(おそらくは昨日朝の豊洲だと思うのですが‥)

急に少し不安になっていそいそと取り出し、とりあえず三枚におろして腹側の身を食べてみました。ノンアルを飲みながら‥。ぐびり。

で、マダイのお味は‥?

う、うまい‥。

さばき方と写真はまあアレですが‥テクスチャー(身質)はかなり自分好み。だいたいこれまで釣りで得たマダイは釣った翌日と翌々日に刺身だと食べてしまうので、この柔らかな食感と滑らかな舌触りは自分さばきでは初体験。

魚の味をちゃんと把握するため、ほんの少しの塩で食べてみたのですが、わずかな柑橘とかあったら最高でしたね。これ、自分ちで握り鮨パーティーとかやるんならこの状態かも‥。

残りはさくにして、ペーパーでくるみ、また氷水のクーラーにドボンと沈めておきました(引き続きクーラーなのは、事務所に冷蔵庫がないのが一番の理由です)。明日、そして明後日、どう味は変わるのか? ちょっと楽しみです。

テクスチャー(身質)で言うならば、もうひとつのアジもまた最高でした。塩で充分に美味い。で、こちらも三枚におろした半身はドブンと氷水へ。

ただマダイとアジ、どちらも美味いのですが、これが熟成による旨味なのか、単なる魚好きだからなのか? 腹が減っているからなのか? よくわかっていないのも事実。

ハッキリ言って今がどの状態?と言われてもわかりません。
でも美味い。言えることはひと言、美味い。ただ、いつも食べている新鮮なマダイやアジも美味い‥。

嘘をつかずに言えることは、味の違いはまだわからない(どっちも美味い。あまり美味くないと感じる刺身を食べたこともない‥)。でも食感はとてもいい感じ。これはすでに結構違う。3日ぐらい経っているんだと思う。で、こっちのほうが好き。

果たして‥

イノシン酸による旨味のピークは訪れるのか? 
それともすでに訪れている状態なのか?

もうちょい楽しんでみたいと思います。

 

【水曜日・漁獲から推定4日目のレポート】

津本式・究極の血抜きを施したマダイとマアジの寝かせ2日目。

推定ですが、魚が水揚げされてからともに4日目となります。すでに3日目の昨日でだいぶ美味しかったのですが、果たして‥。

ちなみに、より味を凝縮させようとマダイ、アジともに軽く塩をパラパラと振っておきました。

マアジです。

マダイ。

結論。非常に美味い! べったらしてる!

3日目は、身が柔らかくソフトな食感のなかに、細かく言うと硬い部分と柔らかすぎる部分が混在していたのですが、塩をあてて一晩寝かせただけで、身は柔らかいのですが、昨日よりはやや締まっていて、全体的に均一にべったらと柔らかい食感。

塩味もほどよく効いて昼からノンアルが進みます‥。

昨日は鮨ダネにしたいと思いましたが、本日のはそのまま刺身だけで完成系な感じ。個人的には昨日より今日の方が美味しくなったと感じています。

しかしいとも簡単に、ここまでの美味い魚が作りだせてしまうとなると、ちょっとその先を目指したくもなりますね。この魚たちに何を足したら、さらに自分好みの味に仕上がっていくのか?‥みたいな。昆布締めとか酢で洗うとか‥。煙で香りづけるとか‥。

釣り人の皆さんがこだわって食べている気持ちがわかったような気がします。

味の細かな変化で言うと、マダイはおそらくですが旨味成分が増した・・気がします。塩で際立ったのか? 水分が抜けたからなのか? イノシン酸がピークを迎えたのか‥。

アジはより酒の肴と化した気がします(アバウト)。
やや干物的な味わいが際立ったというか‥。
アジの味が濃くなったといいますか。
切りながらひと口食べて、これは美味い!と半身を全部食べてしまいました。

さて。あと大小2さくマダイが残っています(3日分)。
湿ったペーパーを替えて、さらに明日(推定5日目)、明後日(推定6日目)、明々後日(推定7日目)まで突き進んでいきたいと思います。

気のせいか昨晩は刺身食べたら元気になって、その後の仕事がはかどりました。テンションが上がったと言いますか。

あ‥ノンアル効果かも。

 

【木曜日・水揚げしてから推定5日目のレポート】

津本式・究極の血抜きを施したマダイの寝かせ3日目。
推定ではありますが、水揚げされてから5日目となります。

水揚げから4日目の昨日は、肉質が急にべったらして全体が柔らかくなじんだ食感と旨味を存分に楽しむことができました。

さて、本日は‥?

残り3さくを氷水から出して、耐水ペーパーを開けると、やっぱりキッチンペーパーは湿ってます。さらに水分が抜けたみたいです。

色はなんだか少し飴色がかってきましたね。
臭みはいっさいなし。というか無臭。鼻は詰まってない。

脂がまわる‥みたいな感じはしませんが、ナイフのすべりは昨日より悪い気がします。

中途半端な薄作りにしてパクリ。
うん、美味い!

食感は昨日に比べて、べったら感は変わらずなのですが、さらに水分が抜けて固くなった感じ。

2日目に軽く振った塩味がより立ってきた気がします。

一昨日と昨日ほどの違いはありませんが、差は確かに感じます。旨味‥についてはどっちがどうかはわかりませんが、本日のものは、すでに刺身というよりも、おつまみに近い感覚になりました。生ハム‥そう、生ハムです。これ、干しても美味そうだな‥。

今回、刺身は塩のみ(一昨日からはあてた塩が効いているので切ったまま)で、醤油もワサビもつけずに食べているのですが、昨日までは「あー刺身を塩で食べてるなー」という感覚だったのが、本日はそんなことも頭に浮かばず、ただパクパクとおつまみを食べるようにぺろりと平らげてしまいました。

悔やむのはノンアルを買い忘れてしまったこと。
グビリ‥とやりたかったんですけどねー。

というわけで本日も美味しくいただきました。

あと2さく。水揚げから6日目と7日目は果たして!

では、クーラーボックスの氷が溶けたから買ってきます。
あ、ノンアルも買おっと‥。

 

【金曜日・水揚げから推定6日目のレポート】

津本式・究極の血抜きを施したマダイの寝かせ4日目。
魚屋さんが豊洲市場で朝仕入れたものとなり、流通の日数を考えると推定で水揚げされてから6日目となります。

臭いはなし。無臭です。
色は昨日よりやや赤みが濃くなった感じ。
あと昨日までは全然気にならなかった身に入り込んでいる血管がやや黒ずんでおりました。

実際、上手く行けば、この身の間の血がかなりきれいに抜けるので(私ではなく取材で確認しました)、そういう意味では80点ぐらいの血抜きだったのかもしれません。

また、塩をやや強めにあてたことが原因か、べったら具合がさらに引き締まって、オピネルナイフの通りがさらに悪くなり‥。写真もイマイチな具合に。

で、お味は?
‥パクリ。
うん、美味い。

ただ、感動は昨日に比べて薄かった印象。
あまり味に変化がなかったからなのか?
‥いや、正直に言えば、昨日のほうが美味かったと思います。
急いでつけ加えれば、決してまずくはありません。
ですが、昨日食べた時は少し目が見開きましたので‥。

・食感がやや固くなったからか?(塩をあてすぎたため)
・イノシン酸が下降したためか?(科学的にはそんな期間にはなるそうです)
・単純にこの味に慣れたのか?

あとは寝かせの方法も影響していると思います。
本来ならば、丸ごと一匹、究極の血抜きを施した後に脱気して氷水に沈め、6日目に食べたければ前日の5日目に開封して三枚におろし、塩をあてて一晩寝かせる‥ぐらいが職人さんおすすめの基本の流れなのですが、今回は段階を踏んで食べたかったのと、頭やウロコなどのあらを生ごみの日に出さなければならないという都合から、丸ごとの状態ではひとばん寝かせただけだったんです。

ちなみにマダイはハタなどに比べて、比較的三枚におろしてからのもちはよろしくないとのこと。

ただ、毎回そのつど脱気して氷水に沈ませてましたから、その点、三枚におろした状態にしてはもっているような気もします。

‥と、わかったふうなことをツラツラと書き連ねておりますが、正直なところ実地は初めて。よちよちのビギナーですから、何もわかっちゃいないのかもしれません。

でも、自分で美味いかどうかという答え合わせをしながら味を作り上げていく楽しみの一端は味わえたかと思います。

で、残り一切れ。これはいよいよ水揚げから一週間となる明日、食べてみたいと思います。

そのための氷とノンアルを買い出しに行って参ります。

 

【土曜日・水揚げから一週間目のレポート(最終回)】

で、本日、とうとう最後の一切れを食べる時が来てしまいました。

一週間の氷代は約900円。

ギリギリまで切り詰めている現在の生活からするとまずまずの痛手ではありますが、もちろんそれを上回る充実感を熟マダイからはいただいております。

こんな感じで氷水に冷やしてました。

開けますよ。

中にはキッチンペーパー。

少し湿ってます。

じゃーん!

いい感じですね。尻尾側の皮の方に、やや干物っぽい香りを感じたような気もしましたが、ほぼ無臭。

で、本日もお刺身を。昨日とはほぼ変わらないかと思うのですが、少しだけ身は柔らかい感じ。部位によるのかもしれません。そして味は変わらずに旨い。ですが、さらに何かがグーンと伸びた印象はありません。私的には一昨日のマダイが一番美味しく感じました。

ですが、本日は、最後の一日ということもあって、お刺身は味見の2切れのみ。

刺身を取って、まだこれだけ余っています。

じゃーん!

オリーブオイルとニンニクスライスで軽くグリルしてみました。

が!‥あれ? ニンニクが焦げる・・。

ヤバいヤバい!‥と慌てて裏返し。

でもこの後、ニンニクは真っ黒に‥。

オリーブオイルが苦汁になってしまいました(泣)。

熟成だナンダいう前に、料理の基本がゼロ!

気を取り直し、焼きます(焦げたニンニクはすべて取り除き、焦げていない部分に避難して焼いてます‥)。

そして……

できたー!

皮はカリカリ‥まではならず。

良い感じの焼き目です。

 

では。

いただきまーす!

…パクリ。

…旨い。

これは旨い。例えるなら西京漬けのギンダラのような(例えが貧困‥)

そして身は、ほっくほく!

あれだけ締まっていた身が、焼くとホクホクになって適度な歯ごたえとほぐれる食感。若干の苦みは焦げたニンニクの汁だろうか‥。あともうちょっとだけ塩気が少なければ言うことはなかったな(ちょっと塩をあてすぎました)。

いやー。我ながら文句なしの熟成生活だったのではないでしょうか。

魚屋さんの仕入れた魚たちもよかったんだと思います。

アジも美味しかった。

今度は自分で釣った魚でトライしよう。

津本式・究極の血抜きによる仕立て魚の熟成生活。

これにて、ひとまず。〈若林〉□