今日は晴天。朝からとても風が強い埼玉南部です。

戸外のゴトゴトする音を聞いて「花粉症がツラそうだなあ‥」などと覚悟をしていたのですが、外に出てみると心地よい北西の風は、心なしか‥というよりもクッキリと記憶を揺さぶる匂いでした。

奥日光の空気の匂いだ。

学生時代、ホンマスやブラウントラウト、それにイワナの研究で訪れていた奥日光。いろは坂を上り、中禅寺湖の湖畔で車のドアを開けると吹き込んでくるスカッとした森の空気。

それを埼玉南部の潟そばにてかぐことができました。

これはまた、季節が変わったのだな‥と。

わかりもしないのに、そんな予感が。そして案の定、潟にコガモは居ませんでした。

きっとまた、明日には普通にいるかもしれません。

グルグルとディスプレイを交している姿を観ることもできるかもしれません。

「わかった」と思った自然には大抵裏切られていますから‥。

ですが、今朝感じたのは、まぎれもない新しい季節の風でした。

帆船が風待ちをするように、渡り鳥もまた、これぞ!という風を待つのではないでしょうか。

そしてまるで非科学的な思いつきですが、渡りには風の匂いも関係しているのではないか?

そんなことを思ったりもしました。

潟辺のソメイヨシノは二分咲き。

おなじみのハクセキレイ。セグロセキレイも居りました。

そしておや?……と、見慣れないシギがおりました。

残念ながらこの時、望遠レンズは持っておらず、撮影は諦め観察をすることに。

私になじみのあるシギといえば、川辺を行き交うイソシギと、湿地や田んぼ、潟の藪や草に隠れるタシギですが、それはどちらかというとオープンな場所にも降り立つイソシギタイプ。

イソシギよりはほっそりとして、全体的に暗色傾向。盛んに首を上下させていました。

最も大きな特徴は、飛び立った際の真っ白な腰です。なんだろう‥。

急いで事務所に望遠レンズを取りに行き、戻ってきましたが、残念ながらその姿はありませんでした。

のちにウェブで「腰」「白」「シギ」と調べたところ、おそらく‥ですが、クサシギではなかったかなと思います。

さて、クサシギを探しながら潟を歩いたわけですが、思わぬ収穫がありました。

それはこちら

わかりますでしょうか?

拡大すると‥

タシギしゃん!

何を隠しましょう、隠れているタシギを潟でこちらから見つけることができたのは、これが初めてのことです。たいていは飛んで逃げてしまった先を確認して、あらかじめそこに「いる」と目星をつけて接近することで見つけておりましたが、ついに隠れている(つもり?)のタシギを見つけることができました。

おそらく‥ですが、理由は三つ。

①これまであまり注目していなかった潟に生えている草の中を、クサシギ(仮)を探すために目を凝らしていたこと。

②昨日観察したタシギが、ある程度近づいても飛び立たず、そのまま草の中にふせて隠れる選択をすることを知ることができたこと(つまり、それまではその場にいるタシギはすべて飛び立ってしまっていたと思っていたのです)。

③これは上の方の写真を見ていただくとわかるかと思うのですが、相手が日向、こちらが日陰に入っていること(これはサケ・マスを観察する場合にも感じます。結構大事なことだと思っています)。

地味ぃ‥な成果ですが、ちょっとうれしいです。

こんなに間近で観察できたのも初めてかもしれません。

タシギは良い鳥だー。

満足して事務所に戻りながら何気に草を眺めていると‥

またいたー!!

これは完全に隠れモード。

おどかさずに、飛ばさずに、注意しながらその場をそっと離れました。

埼玉南部にて奥日光の風をかいで、北に渡ったコガモを想い、旅の途中のタシギと出会う。

そんな良い一日の始まりでした。〈若林〉□

 

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