今日は晴れ。昨日は雹が降ったり突風が吹いたりと大気が不安定な埼玉南部でしたが、本日の午前中は「肌を撫でる風」が吹いています。5月の気持ちい陽気の一日。気合を入れてのデスクワークです。 さて。今回は先日の話を少し。 いつものように近所の川で、産卵行動をしているニゴイを探していると‥。 対岸の浅瀬に細長いひも状のものが目に入りました。 対岸に回って確認すると‥ どうやらウナギのよう。しかもデカい。 回収して手計りしてみると、およそ85㎝。大型の部類に入るのではないでしょうか。絶命しています。 首回りに鳥の口ばしでやられたような傷跡がありました。 上から見るとこんな感じ。胸鰭の付け根にも一カ所穴が開いてました。 おそらくカワウにつかまってかじられたけど、飲みこまれる済んでの所で暴れて逃げ、一時的に難は逃れたものの、くちばしでやられた傷が致命傷となって、そのまま絶命してしまったのではないか。そんな見立てをしました。 お腹側はとてもきれい。おそらく死後、24時間以内か、ちょっと過ぎているぐらいではないかと推測しました。 首回りの傷跡は痛々しいのですが、それ以外は外傷もなく、鮮度もそこそこな感じ‥。 しばらく撮影したり観察したりしているうちに、ある勘定がむくむくと湧いてきました。 いや‥それはあまりにも一般的ではないし、常識的な行いでもないだろう。 そう思って、そのまま川に捨てようとしたのですが、どうしてもそれをしづらい自分がおりました。 ①普段歩いている近所の川の魚をこれまで食べたことがない(一度は食べてみたい)。 ②食べるならウナギかアユだが、ウナギは希少種ということも自分の中では気になっているし、それをわざわざ小規模のこの川で釣ったり捕ったりして食べる気はしない。 ③自分で獲らないとなると、死んでいるものを見つける以外にない。 ④野外で死んでいるものは通常、拾って食べるものではない。 ⑤だが、目の前にいるこのウナギは(おそらく)カワウが食べ損ねたものだという、自分の中の見立てがある。 ⑥いつもこの川で狩りをしているカワウを観察している。マルタウグイなどを飲みこんだりもしている。おそらくはこの日の朝か、前日の夕方の狩りで取り逃がしたものだろうと思われる。 ⑦傷を負っているマルタウグイやアユなどの姿を多く観察していることから、カワウから襲われて逃れる魚は意外と多いと思われる。 ⑧カワウに咬まれたぐらいで生命力の強いウナギが死んでしまうか?という疑念は、胸鰭近くに開いていたひとつの穴が致命傷になったとの判断により払拭できる。 ⑨見たところ、腐食の具合もそこまで進んでいないという自分の中の見立てもある。 ⑩こんな状況、そしてこんな状態のウナギに出会うことは、おそらくもう二度とない。 二度とない‥。
気付いた時には「川友(川の友だち)」の家へ‥。 少なくても私の「見立て」には少しの信頼を寄せてくれているのだろう。「共犯者になるよ」という言葉を得て、「二度とない」この機会に、いただいてみることに。 腹を割くと、内臓は新鮮そのもの。 あまりに大型だったので体を半分に切ると、身の断面はこんな感じ。血もまださらさらです。自宅ならば津本式を施したいところでしたが、血が固まっていないので、ある程度は洗い流せたかと思います。 腹開きですが、なかなか上手くいきました。 皮のヌルは「津本式究極の血抜き」の取材で津本さんに教わった「金だわしで擦る」方法で、すっきり取り除くことができました。 タレは醤油、酒、みりん、砂糖を混ぜて煮詰めます。 中骨まわりも合わせるとこんな感じ。一部胆汁が身を黄色く染めていましたので、その部分だけ少しトリミング。全体的に脂が乗ったほどよい肉質であると感じました。 せっかくなので、炭火にて‥。蒸さずにいきなり焼き始める関西風? 少しだけ火が強すぎましたが良い感じ。 たれを重ねて塗っていきます。 心ばかり、しっかりと火を通して完成。 とても美味しくいただくことができました。 そこまできれいな川でもないのですが、臭みもなし。 用意していた山椒も忘れてしまうほどでした。 つきあわせてしまった友人にとっては、味に対して「ちょっとおっかなびっくり」という割引があったかもしれません。 ですが私の中では、普段の川歩きの観察に基づいた状況証拠を重ねることで「カワウが食べ損ねて絶命した直後のウナギ」というストーリーを描き、それを信じることができましたので、とても美味しくいただくことができました。 二度とない出会いに感謝です‥。〈若林〉□
※様々な状況証拠と経験に基づいての自己責任判断です。決して真似はされないようお願いします‥。
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