本日は晴れ。暖かな良い天気です。

出勤前の近所の川観察では、ひさびさにニゴイのペアを観察することができました。

ペアは私が観察を初めて5分ほどで放卵・放精へと至りました。

メスの動きはまだフレッシュでしたから、15分後ぐらいに次の放卵・放精を見ることができるのではないかと観察を続けます。

しばらくすると太陽が顔を出し、それが合図なのかどうなのか、ペアオス意外に数匹のオスが姿を現し、それぞれのポジションにつきました。

場所はトロ場から早瀬へと以降するトロ尻。ニゴイが好む産卵場です。

点線で囲まれた場所は他よりも薄っすらと白っぽく見えます。砂礫表面のゴミが掃かれたような感じ。

♂①はペアのオス。メスに求愛行動をすると同時に、他のオスの接近を拒む行動をとっています。

♂②はペアオスと同じぐらいのサイズで、執拗にメスに近づこうとしますがペアオスに間に入りこまれてガードされています。

面白いのは♂③と♂④です。♂③は下流の浅瀬にジッと定位していた小型のオス。♂④はペアオスと同じぐらいのサイズですが、♂②のように執拗にメスには近づかず、トロ尻よりも下流の早瀬の中でジッと動きません。体は真っ黒。

この場合、ペアオス(♂①)が体で押しやったり突進したりするのは、♂②のようにメスに近づいてくるオスに対してがほとんどです。そばにいてもジッととどまっている♂③はほとんど無視しています。下流の早瀬にいる♂④はステージにも上がっていないので完全に無視。

ところが、この♂③と♂④が動きを見せる瞬間があります。それはメスが今にも放卵しようと口で川底をスパスパするような行動を示した時です。♂③はスーッと近寄っていきます。♂④はもっとギリギリまでがまんして?から、一気にダッシュしてペアの間に矢のように割り込む行動を見せます。

おそらくはペアが放卵・放精を行う瞬間に、自らも飛び込んで精子を放ち、授精させようという行動なのでしょう。

また、♂③の場合は、ペアオスが♂②と競い合って上流へパラレルダッシュ(並んでおれの方が速いぞ!とばかりに一斉に上流側にダッシュする行動。威厳を示しあっているかのような感じ)をして、メスが一匹になったタイミングでスーッと近寄っていきます。そしてペアオスや♂②といった自分よりも体の大きなオスがいない間に懸命にメスに求愛行動を繰り返し、放卵に導こうとします。

こんな横取りのような感じで放卵・放精に至った小型オスも見たことがありますが、今回はメスがその気にならず、しばらくすると競い合っていたペアオスと♂②が戻ってきてしまいました。そんな時も、下流の早瀬にいる♂④はジッと留まったままです。

♂④が動きを見せるのは、放卵ぎりぎりのタイミングともうひとつあります。それは産卵行動の最中にメスが下流側に流されてしまうことがあるのですが、そんな時です。早瀬の中で、必死にメスにアプローチをしかけている様子を、波立つ水面越しに見ることができます。でも今回の場合、メスはしばらくすると、♂④を置いてステージであるトロ尻に戻ってしまいました。

ペアオス:終始、メスに求愛のアプローチをかけ、じゃまな他のオスも追い払いつつ、機会をうかがう。

♂②:ペアオスにガードされ、時に攻撃されながらも終始メスへの接近を試みる。

♂③:少し離れた流れの緩い所でジッと留まり、放卵直前や他のオスがいなくなった隙にメスにアプローチする。

♂④:ステージ下の早瀬でひたすらジッと留まり、放卵の寸前に矢のようにペアの間に飛び込む。

最もエネルギーを使わないのは♂③かな‥。瞬間にだけすべてをかける♂④の戦略もいいな‥。

そんなことをいろいろ考えながらのニゴイの産卵行動観察。

これら①~④のオスの戦略は、ヤマメ(サクラマス)なんかでも見ることができます。

コイ科とサケ科というかけ離れた種同士なのに、似たような社会的行動を示すのは、とても興味深いです。

ニゴイの産卵も終盤です。

あと何度か、観察できるとよいなあ。〈若林〉□

 

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