昨日に続き、二面護岸河川の川底を泳ぐ、オヨギデカミミズの暮らしについて。その妄想的仮説をご紹介します。

数カ月前に、ウナギの餌生物として雨後に川に大量に流入するミミズが重要な役割を果たしているといった研究結果がリリースされました。

その研究ではミミズの大量流入のことを「パルス的な資源流入」と呼んでいます。

皆さんは道路などでミミズが大量に干からびていたりするのを見たことはありますでしょうか。ミミズが雨後の数日の間に大量に移動することは古くから知られておりまして、その理由には雨によって土中の炭酸ガスが増えるためなど諸説あります。柴田康平さんの本「ミミズの謎」(誠文堂新光社)には、上弦や下弦の月(つまり半月)のタイミングでパルス的なミミズの移動が見られることがあると書かれています。また、柴田さんは雨後で地表が濡れている時にミミズが大量に徘徊することも観察しています。さらに高温で乾燥したタイミングで出てくることもあるのではないかと考察しています。

まとめとして次のように書かれています。一部引用させていただきます。

(ここから引用)

 こういう行動をするミミズは、地表近くに棲む表層棲息性のミミズで、出かけたはいいが安全に暮らせる場所が見つからなかった場合には日光や乾燥にさらされ干からびてしまい、うまく新天地が見つかったミミズは、そこでまた子孫を増やすのだと想像できました。ただし、表層性のミミズの干からびの大きなもう1つの原因が、土の乾燥による高温から逃げ出すためということもわかりました。そして逃げ出したほとんどのミミズは移動中に日光にさらされ、路面で干からびてしまうのです。

 一方、地中に巣孔を掘り暮らす地中棲息性のミミズは、雨が降らず地表が乾燥している時は地中でじっとしていて、地表が雨の後、湿り始めると顔を出し、地表が濡れている日には一斉に巣孔から抜け出し移動をしていました。しかし、この地中棲息性のミミズも、安全に暮らせる場所が見つからない場合、日光や乾燥にさらされ干からびてしまい、うまく新天地が見つかったミミズは、そこでまた子孫を増やすのだと想像できました。

(引用ここまで)

また、かの進化論で有名なダーウィンは「ミミズは冒険旅行のためにトンネルをすて、そして、新しい住み場所を探す」と「ミミズと土」という著書で書いています(と、柴田さんの著書に書かれていました)。

 

干からびて死んでしまったミミズたちは、旅立ちに成功したとは言えませんが、川に入っていったやつらはどうなのでしょうか。ウナギに食べられてしまえば、それは失敗ということでしょう。ですが、すべてがウナギに食べられるというわけでもないでしょう。川に入って、ウナギにに食べられなかったミミズは、その後どうなるのでしょうか? そのまま川で暮らすのでしょうか。うまく生きられず死んでしまうのでしょうか? 普通に陸地へと戻ってゆくのでしょうか。

まずは川に入っていった彼らの行く末を知ることで、ミミズが川に入るのが、彼らの旅として、暮らしとして成功なのか、もしくは過ちだったのかが、わかるような気がするのです。

んなことを考えながら夜の川へ‥。

エビちゃん。

このように死んだ、もしくは弱ったミミズはエビやヒル、プラナリアの餌食となります。

めずらしくオケラがいました。

ポトリと落ちて泳ぐ。

オケラはミミズも食べるそうですね。

日中の晴天が続き、護岸は乾燥が進んでいます。

この日、多く見られたのはこんな姿。水面ぎりぎりで護岸に取りついているオヨギデカミミズです。

泳いでいる姿は3匹ほどでした。

彼らはどこへ行こうとしているのか‥。

護岸の乾燥が進むと護岸を上ることは難しくなります。そのため、必然的にミミズが潜む護岸の穴は水面のすぐ近くとなります。また、護岸の穴の中も乾燥や高温が進んでいるでしょうから、そこに潜むことも厳しくなってくるのではないかと思っています。

ざっくりと断面図。Aは雨が降った状態。ミミズたちは護岸の穴から抜け出して上に行ったり川に降りたりとかなりアクティブに動き回ります。護岸の天井は花壇のようになっており土がありますが、その土中から抜け出してきて川に入る(落ちる)ミミズもいると思います。Bは炎天下の日中。ミミズたちは乾燥の壁と明るさの壁にふさがれ護岸の穴の中に潜みます。そして夜になると(C)、明るさの壁がなくなり、ミミズたちは穴から這い出して動き回ろうとしますが、護岸が濡れていないため、川にポトリと落ちてしまいます。落ちたミミズは多くの場合、また近くの護岸に這い上がっているはずです。そして水面近くの湿った穴に潜りこみます。日中、また炎天下になると(D)、そろそろ穴の中にも入っておれんぞ‥となり、夜のうちに(E)川へと降りて、おそらくは川底の石の裏に潜むのでしょう。

もしかすると護岸の中は湿ったままで、そこには予想を上回る数のミミズがいて、穴から出てくるのは、ほんの一部の旅人なのかもしれません。それはわかりませんが、少なくても雨が降らずに護岸の乾燥が進むことで、ミミズが川の水面近く(もしくは川の中)で見ることのできる数が増えていく気がしています。

私が知りたいのは、暑さや乾燥を避けて川底の石裏に潜んだミミズのその後です。

それはパルス的に川に流入しながらウナギの餌となるのを免れたミミズのその後、とも言えるかもしれません。彼らはその後、どうするのか‥。

①そのまま川の石裏で暮らす。

②何かをきっかけとして、また護岸もしくは陸上に這い上がる。

③死んでしまう。

果たして・・

私的には①であり②であるかと思っています。

川の中はまず絶対的に低温と湿度が保たれます。その点ではミミズにとって適した棲息環境なのです。おそらく問題となるのは餌ではないでしょうか。捕食者の問題もありますが、それよりも餌ではないかと‥。

川の中にもミミズが長い間暮らしていると思われる場所があります。巣穴がしっかりと出来上がっていることでそれが推測できるのですが、そんなところは決まって「土」が混じっているところです。「土」の成分はいろいろあるでしょうが、ミミズの餌として重要なのはおそらく植物の腐ったものではないでしょうか。川の中にも植物が腐って土となっているような場所があり、そんなところを上手く見つけることができたミミズは、そこでしばらく留まって暮らすのではないでしょうか。

ただ、そうそう上手く良い場所が見つかるわけでもないでしょうから、何かをきっかけとして再度、陸地や護岸に取りつくやつらもいるはずです。シーボルトミミズは冬場、川の水の中に潜んで夏場は山を登って行くと言われています。そのような季節的な行動も興味深いものがありますが、川に入って日中を川底の石裏で過ごしているミミズが、夜になって石の間から出てきて徘徊し、陸域を目指す‥なんてことも、きっとあると思います(ちなみにあるミミズは川の中に卵胞を産み落とします。私が今年の1月より卵胞から半年間育てている川ミミズは3㎝ほどとなりました。まだ正体はわからず‥)。

ですが、残念ながら、まだそのような姿を観察できていません。夜になって川底の石裏からにゅるっと出てくるミミズだと確信できる状態を、まだ見たことがないのです。

いきなりライトを当てたら川の底にいるミミズは結構いますから、そいつらがそのようなやつらなのかもしれません。

チンアナゴのように頭だけ川底から顔を出して伺っているミミズもきっといると思います。おそらく観察が難しいのは足音のためでしょう。ミミズは振動にはおそろしく敏感なので、川を歩いて近寄ってくる男(私)の足音を聞くと、シュッと石裏に隠れてしまっているのではないでしょうか。

観察するためには足音を消さなければなりません。ひとつの方法は同じ場所で夕暮れから真っ暗になるまで足音を立てずにじーっと待ち続けることでしょう。果たしてそれができるのか‥。流れに折り畳みイスを広げて蚊の猛攻に耐えながらひたすらジッとミミズを出待ち‥。

私の中でのもうひとつの興味は、「より川の水中に特化した陸生ミミズ」の存在です。東南アジアには樹上性のミミズがいるように、川の暮らしに特化した(元々)陸生だったミミズは必ずやいるはずです。尻尾がザラザラしているマッチョ虹色水生ミミズなんかは、その筆頭だと思っているのですが、果たして‥。

妄想はどこまでも続いてしまいますが、今日はこの辺で‥。〈若林〉□

 

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