低気圧が通過するたびに季節がグッと進むこのごろ。 毎年秋はとても忙しくなってしまうのですが、今年もかなりせわしないなか、それでもちょいちょいと川には行ってます。 増水して陸生植物が倒れ、芝状になった場所を探します。 いたいた・・(ちょうど中央やや右あたりに白く見えるもの) 落ちアユです。 尻ビレの形からおそらくはメス。アユはこの時期になると、全体的に黒ずんで、頬のあたりがオレンジに染まる婚姻色がでます。こちらは死んで黒い色が抜けかけている状態でしょうか。 産卵は浅瀬で行われます。 こんな感じのところですね。トロ場から瀬に向かうところで、ニゴイやマルタウグイとも場所は重なっていますが、どちらかというと、ニゴイよりもマルタウグイ寄り。ニゴイはサケ科魚類と同様にどちらかというと「下流に引っ張られる流れ」を好むように思います。対してアユやマルタウグイは「上流から押す流れ」も好きなのではないかなと。もう一種、オイカワも浅瀬で産卵を行いますが、オイカワはもっと薄く緩やかで、かつやや引っ張られる流れでしょうか。同じような場所を産卵場として選んでいても、種類ごとに少しずつ違っているのが面白いですよね。 さて。 季節は秋まっさかり。オニグルミの実はほとんど落ちてしまいましたが、川辺ではこちら、クコが花を咲かせています。 もう少ししたら実がなるので、今年は少しだけいただいてみようかな‥。 そして最近知ったのはこちら。 オオバコのような果穂がついているこれは、ヒナタイノコヅチという植物だそうです(図鑑で調べました)。漢字で書くと日向猪子槌。 こんな感じに茎が地面を這っているのですが、節バッタ部分が丸く膨らんで、ここがイノシシのかかとに似ていることから、そのように名付けられたということです。 確かに膨らんでますね。 こちらはまだ実になる前の花の状態。なぜヒナタイノコヅチに注目をしたかと言いますと、カルガモが実をよく食べているからなんです。川辺ではこの季節、ヤナギタデが大好物らしく、ほとんど丸裸にしてしまっていますが、時折土手に上陸しては、ヒナタイノコヅチを食べています。つぶつぶ食感が好きなのでしょうか‥。 さて。アユに戻ります。 平水でしたが、瀬の下流の深みやその脇の岸辺には、産卵を終えたと思わしきアユが落ちていました。 頭部と尻ビレのあたりを何かに食べられています。カワウやサギなら丸のみでしょうから、カラスあたりかな? こんな感じに流れ着いています。色が抜けて黄色くなっていますね。 黄色に変色したオス。 淵に沈んでいるものも。 アユは年魚(ねんぎょ)と言って、一年でその生涯を閉じます。今はまさに人生のクライマックスと言えましょうか。 風向きによって時折キュウリに似たアユの芳香が漂ってきます。アユはワカサギやシシャモと同じ「キュウリウオ科」の魚なんです。キュウリウオ=胡瓜魚ですね。 ・・・と、観察をしていると、上流から一匹の小さなアユが流されてきました。まだ体は黒く、よく見ると時折ぴくぴくと動いています。「これはもしかすると、産卵直後に流されている状態では?」と思い、ニーブーツを浸水させながらもなんとか拾い上げました。 まだ、かろうじて生きてました。身体の黒さもそれを物語っています。とてもきれいですね。 命をまっとうしたのであればよかったのですが、実はちょっといやな痕跡を見てしまいました。 アゴが欠損していたのです。 確かなことは言えませんが、私の見立ては「釣り上げられたけど小さかったから捨てられた魚」といったところです。 上流ではアユ釣りをしている人がいますので、そこから流れてきたのではないでしょうか。 比較的小さな魚の数釣り・・しかもそれが食べるための数釣りとなると、どうしてもどんどん釣りたいものですから、魚の扱いは雑になります。自分にも心当たりはありますが、魚というよりも、イモとかニンジンなんかを引っこ抜いて収穫しているような感覚になってくるんですよね。この場合、針を外すのが難しかったのか面倒だったのかわかりませんが、そのままブチッと引き抜いてしまったのではないでしょうか。そして小さいから、いらないや・・とポイと川へ。 私も釣り人ですから、その感覚はなんとなくわかりますし、自分が同じようなことを絶対にやらないかというとそうでもありません。 ただ、今回のように「その後」を見ると、ちょっと色々と思ってしまいました。 このアユはまだ卵を腹にたっぷりと抱えてました。 思い浮かんだのは、金子みすゞの「大漁」という詩です。
朝焼小焼だ大漁だ。 大羽鰮(いわし)の大漁だ。 浜はまつりのようだけど 海のなかでは何万の 鰮のとむらいするだろう。
今年は落ちアユに注目しています。とはいってもシーバス(スズキ)釣りではなく、アオサギの狩りについて。 いろいろな気づきがあったのですが、長くなりそうなので、また次回にしたいと思います。 〈若林〉□
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