このところ続けております「オヨギデカミミズ」の同定プロジェクト。その第9弾でございます。「同定」とは種の判別ですね。

こちらがオヨギデカミミズ。左側の色が薄く大型のものは全長23㎝ほど。細かな経緯は省きますが、体色から「クリームオヨギデカミミズ」と呼んでいます。右側の焦げ茶色の方は全長15㎝ちょっとでしょうか。こちらは腹側が明色で背色とのコントラストが目立つことから「ツートーンオヨギデカミミズ」と呼んでいます。

そもそもは「クリームオヨギデカミミズ」を、『ミミズ図鑑』(石塚小太郎/皆越ようせい)を参考に調べていました。大型では25㎝にもなるその大きさから、種を絞り込んだところ、次の候補があがりました。

ヒトツモンミミズ(90〜250㎜)

セグロミミズ(90〜220㎜)

カッショクフトミミズ(130〜230㎜)

・ノラクラミミズ(150〜250㎜)

・ヨコハラトガリミミズ(175〜260㎜)

・イマジマミミズ(210〜260㎜)

ここから先は、お腹側に現れる性徴が分類の材料となってきます。

こちらは「クリームオヨギデカミミズ」の腹側。オレンジ色に見えるのが成体の証である環帯で、その上にあるAの孔は雌性孔と呼ばれるもの。そして基本的に対で表れるBは雄性孔と呼ばれるもので、雄性孔の形状や位置によって、ある程度、種の判別ができるというのです。

ただ、「クリームオヨギデカミミズ」は雄性孔が不明瞭であるようです。上写真のものは、かなり見やすいものですが、それでも痕跡のように見えるぐらいです。

これは別の(おそらく)「クリームオヨギデカミミズ」。Bの膨らみは顕著なタイプ。また、写真ではDのあたりを丸く囲っておりますが、ここにもし斑紋が見られるようならば、それはヒトツモンミミズの大きな特徴として知られています。ヒトツモンミミズは雄性孔がなかったり、片方だけだったり、不明瞭なものも割合多くいるとされているため、これではないかとあたりをつけていたのですが、「クリームオヨギデカミミズ」にはヒトツモンミミズの特徴となる斑紋がないため、これもまた違うのかなーと。ただ、当のヒトツモンミミズ自体を見たこともないので、確かなことは何も言えないのです・・。

これもまた別の「クリームオヨギデカミミズ」。雄性孔は不明瞭です。

これもまた別のやつ。比較的見やすい方ですが、それでも不明瞭。

ちなみに明瞭なやつはこんな感じ。これは「ツートーンオヨギデカミミズ」です。第18節に一対の明瞭な雄性孔が確認できます。

ちなみに・・ですが、この「ツートーンオヨギデカミミズ」は『ミミズ図鑑』にあるフツウミミズととてもよく似ています。図鑑では体長90〜180㎜とされており、「クリームオヨギデカミミズ」よりも小型である「ツートーン」は、このサイズとも合致している印象です。

 

さて。

そんな混沌とした状況で、迎えた昨晩。

近頃、気になっている小さな発光体ですが、今宵もおりました・・。

もはや何かの反射の光かなーと思ってはいるのですが、ちょっと怖くて近づけず・・。そして帰りの時にはもう見えなくなっているのです・・。

おそらく人魂みたいな活動的?なやつじゃなく、木霊?のようなおとなしいタイプなのではないかと。まあ、川の守り神のようなものと考え、お互いに干渉しないようにと・・。

さて。

この日は曇り。湿度はまあまあありましたが、両岸の垂直護岸はほぼ乾いています。水位もだいぶ減り、水色はクリア。こんな時は、あまりでないもの。

これは「しまぐろ川ミミズ」と呼んでいるやつですが、10㎝ぐらいの小・中型。このミミズはおそらくキクチミミズ(50〜120㎜)ではないかと思っています。『ミミズ図鑑』によりますと一年生のミミズであり、それを裏付けるかのように、冬場には見られません。この川でも1ヶ月ぐらい前あたりから少しずつ見られるようになり、今では一番たくさん見られるほど。これから夏にかけてさらに増えていくと思われます。

半乾きの苔の中に一匹。

13㎝ほど。調べようと思ったら、ものすごい勢いで礫の中に潜ってしまいました。

 

こちらは15㎝ぐらい。このように水際ギリギリで湿った苔に沿っていることが多いです。

護岸にいる川ミミズは、このように尻尾の一部だけ水面に着けた状態で見つかるものがとても多いです。思うにお尻から水分を吸収してもいるのではないでしょうか? もしくは毛細管現象を利用するように、体の一部を水につけることで、そこから全身の体表へと水分を運んで乾かないようにしているのかもしれません。飼育している川ミミズを見ても、そんなことを感じます。

背中側、UVに発光するのは体毛ばかり。この時点で「クリームオヨギデカミミズ」ではないと私は判別しています。

ちなみに「クリームオヨギデカミミズ」のほぼ同じ部位はこんな感じに蛍光発光します。

全体像もこんな感じで目立った蛍光発光は見られず。

ただ、私的にはちょっと意外でした。なぜならば「クリームオヨギデカミミズ」でなければ、近頃観察していたこれぐらいの大型種はほぼ決まって「ツートーンオヨギデカミミズ」でしたが、色がどちらかと言えば「クリームオヨギデカミミズ」に似ていたんですね。

そしてお腹側をチェックすると、なんと・・。

わかりますでしょうか(わかりませんよね・・)。

Aは雌性孔。そして Bの位置にあるはずの雄性孔はまるで痕跡もなく、さらにDの位置には・・なんとヒトツモンミミズの特徴である斑紋が見て取れたのです!!

全長は15㎝ほど。

蛍光発光は、腹側がやや白っぽく光ります。ここら辺は「ツートーンオヨギデカミミズ」とも似ています。

腹側。

見ると環帯の部分にも3節分の体毛がわずかに残っています。成体になりたて・・というか、なる途中の亜成体といったところなのでしょうか。

フトミミズ科のミミズは、成体になると第14〜16体節が環帯に変わるわけですが、ちょうど3節分が環帯になる様子がイメージできますね。

それにしても・・。初めてヒトツモンミミズを観察することができました。まず思ったのは「クリームオヨギデカミミズ」とも「ツートーンオヨギデカミミズ」とも全くの別物であるということです。つまり、「クリームオヨギデカミミズ」はヒトツモンミミズではなかったのだと思います。

印象が残っているうちに、ヒトツモンミミズの特徴を・・

・色合いは「クリームオヨギデカミミズ」に似ているが、水中では比較的、虹色の光沢も目立つ。

・蛍光発光は控えめ。背中はほぼ体毛のみ、お腹側がうっすらと白っぽくなる。

・「ツートーンオヨギデカミミズ」ほど、緊張した際にずんぐりむっくりはしない。また背中とお腹側の色分けのコントラストも強くはない。

・比較的タフ。水中での泳ぎ(川底の這いずり)が「クリームオヨギデカミミズ」よりもスムーズで長けている印象。ほぼ直線的にスルスルと這っていく。また「ツートーンオヨギデカミミズ」はすぐ礫中に潜りたがるが、今回のヒトツモンミミズは白色LEDを当てて観察していても潜ることはせずどんどん下流側へと泳いで行った。

・フトミミズは最初、グネングネンと激しく動き、しばらくすると息が切れたようにしばらくの間、ぐったりしてしまうのだが、そのぐったりまでの時間がとても長い印象。「クリームオヨギデカミミズ」はすぐにぐったりするし、「ツートーンオヨギデカミミズ」はぐったり時に棒のように死んだふりのように固まるが、それとも少し違った印象。

私がこれまで見てきた中では・・

昨年よく泳ぐのを観察していたこのタイプ。

当然、こいつも私は「オヨギデカミミズ」と呼んでいたわけですが、これに雰囲気がそっくりでした。

おそらく・・ですが、少なくても私は昨年の時点では「クリームオヨギデカミミズ」「ツートーンオヨギデカミミズ」そしてヒトツモンミミズの3種を「オヨギデカミミズ」と呼んでいたのではないかと思います。

どんどん増えていくオヨギデカ・・(汗)。

さておき、その一つがヒトツモンミミズであることがはっきりしました。これはとても大きな前進です。

さらにこの日はその後「ツートーンオヨギデカミミズ」も観察。やっぱりお尻を水につけてます。

はっきりとした一対の雄性孔。環帯の前部に斑紋はなし。

およそ12㎝ぐらいかな? お腹側が白っぽい衣装。そして環帯がくっきりしているのも特徴です。さらにこのように寸詰まった体勢で固まるのも特徴です。

蛍光発光はヒトツモンミミズに似ています。

そして対岸にもう1匹!

やっぱりお尻だけ水につけています。護岸が乾いているところを見ると、おそらく川底から抜けて這い上がってきたばかり、なのではないでしょうか?

背中側はほぼ蛍光発光なし。

さて、このミミズはなんだと思いますか?

特徴的な斑紋! この日、2匹目のヒトツモンミミズでした。雄性孔は痕跡もなし。環帯は半分しか出来上がっていない亜成体?

サイズは12㎝ほど。

蛍光発光は腹側うっすら。

完成途上の環帯には体毛が残っています。

 

結局、この日、「クリームオヨギデカミミズ」は見ることができませんでした。

気になるのは急に現れたヒトツモンミミズ、これはもともと観察していただけでわからなかっただけなのか、もしくは新たにやってきたのか・・。

ひとつ考えられることは・・

成体になるタイミングは「クリームオヨギデカミミズ」→「ツートーンオヨギデカミミズ」→ヒトツモンミミズ・・である感じ?

私が昨年、観察していたのは主に7月でしたから、もしかすると、ほとんど主体は「ツートーンオヨギデカミミズ」とヒトツモンミミズになっていて、「クリームオヨギデカミミズ」はあまり観察していなかったのかもしれません・・。

なんとなく・・ですが、「クリームオヨギデカミミズ」が川を占有していたのは春で、そこから少しずつ他の大型ミミズに移り変わっていく・・みたいなイメージを抱きました。

いずれにせよ、ヒトツモンミミズを確認して次なる段階に進めそうな「オヨギデカミミズ」同定プロジェクト。一番気になる「クリームオヨギデカミミズ」に注視して、観察を進めていきたいと思います。〈若林〉◻︎

 

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