埼玉南部、本日も酷暑にて、私もパソコンもギリギリの展開。 おまけに昨日は車のエアコンが壊れて熱風しか出なくなってしまいました…。 なかなか手強そうな今年の夏です。 そんなさなか、ご近所の涼しい場所に行ってきました。 川です。段丘崖と接するあたり。湧き水も豊富で涼しい(けど蚊はとても多い)川であります。 お目当は、言わずもがな・・の川ミミズ。 このところ、別の川で、夜に川に這い出てくる「オヨギデカミミズ」の種を特定するためのプロジェクトを展開しているわけですが、一応、今回はその14回目と銘打ちました。 正直、少しだけ行き詰まってはいるんですよね。同定プロジェクト。 ですが、種の判別を試みたおかげで、ヒトツモンミミズなど、(おそらく)判別できるミミズもちらほら出てきましたし、何より思いのほか多種類のミミズがいるのだな、ということがわかりました。 そんな中、川の中でもやはりミミズが多いのは、水の中というよりも、湿った陸地になっていてミミズ自身がフンによって築き上げた「土」が溜まっているようなところであることもわかってきました。土やその元となる落葉などは、ミミズの餌であり、暮らす場所を提供してくれる建材でもあります。(ここら辺についてはブログ【彼らの居場所】をご参照ください) 一方、水中の流れの底に暮らすことで、次の絶対的な利点があります。 ・体が乾かない ・モグラがいない ただ、一方で水中の流れの底は、 ・餌が少ない という圧倒的に不利な点があります。 またモグラはいませんが、魚やヒル、エビ、カニ、ザリガニ(そしてカワネズミ)など他の捕食者はいるでしょう。なによりも餌が少ないことが効いているとは思うのですが、絶対量で言えば、やはり水中の流れの底よりも、湿った陸地にたくさんいる印象があります。水中の流れの底に棲んでいる川ミミズはやっぱりそんなに多くないんですね(イトミミズやエラミミズなどの小型水生ミミズではなく、ここでは基本的に陸生大型ミミズの話となります)。 ただ、そんななかでも、川底で多く見かけるミミズはおりまして・・。私的に「川ミミズの中の川ミミズ」として敬意を抱いているミミズなのですが・・それが ・「マッチョ虹色川ミミズ」 ・「クリームオヨギデカミミズ」 この2種類なのです。あとは次点として、自宅で飼育している「オレンジハチマキ川ミミズ」も、流れのある川底の暮らしに特化したタイプのミミズになるでしょう。ただ、「オレンジハチマキ川ミミズ」はおそらくツリミミズ科のミミズであり、前2者とはまた少し違ったところもあるような気がします。より水生のヒルにも近い存在と言いますか・・。 私が今、川で注目をしているのは(おそらく)フトミミズ科である「マッチョ虹色川ミミズ」と「クリームオヨギデカミミズ」となっているのです。 「クリームオヨギデカミミズ」は、まだひとつの川でしか観察できていません。対して「マッチョ虹色川ミミズ」は多くの川や湧き水場で観察しています。これらが全部同じ種かどうかは未だ不明ではありますが(色にも随分と違いがありますので・・)。 ともあれ、ひさびさに流れの中に暮らす「マッチョ虹色川ミミズ」が見てみたくなり、川に行ってみたのでした。 基本的に探すのは砂地の上に小石や砂れきが敷き詰められているような流れのある瀬となります。 ヨシノボリがいました。尻尾を怪我していましたが、卵を守っているオスでしょうか。 ヒゲナガカワトビケラの幼虫も多い場所です。石には流れてくる有機物を捕らえるためのヒゲナガのネットがたくさん見られます。ほか、ヒラタドロムシの仲間の幼虫や、ヌマエビの仲間、コイやニゴイ、オイカワなどもいる川です。アメリカザリガニやサワガニもいます。 探すのはこんな川底です。表に出ている石を取り除くと、下の砂の層があらわれます。 同じ場所です。石を取り除いた状態です。そして通常、「マッチョ」などの川ミミズは、石とこの砂との間に棲んでいます。ただ、石を取り除く時にはどうしても振動が発生してしまいますから、多くの場合、川ミミズは石を取り除いた時には砂の中に潜り込んでいます。 さらに砂を掘り込んだ後に、断面を撮った写真です。 Aが小石と礫の層。Bがその下の砂の層。さらにその下には石や砂が入り組んだ層(C)が、ここにはありました。川ミミズが流れの中で暮らしているのは、AとBの間、もしくはBの中ではないかと考えています。 小さなシジミがたくさん出てくるようなところです。 さて。では今回、出会えた川ミミズをご紹介しましょう。 まずこちら。おそらく「マッチョ」だとは思うのですが、とても色白でした。 環帯が出ているので成体ですね。 ぱっと見、色の印象は「クリームオヨギデカミミズ」にも似ていますが「マッチョ」と「クリーム」はまるで違います。「マッチョ」はその名の通り、体が硬くむきむきな印象です。対して「クリーム」は全体的に平常時はフニャフニャしています。それが突然、ムキっ!となったりするので「ゾンビミミズ」とも呼んでいるほどです。この「マッチョ」は長さ10㎝ちょっとかな。 小型のマッチョもいました7㎝ほど。下の方にいる黒っぽいのは彗星のヒルですね。 これも10㎝超えでした。亜成体といったところかな? 頭の方にシジミが見えますね。 「マッチョ」は太さの割に体が長いのが特徴です。 あとは虹色の構造色でしょうか。太陽の下ではもっとビカビカ光ります。 太さと長さの割合については、「クリームオヨギデカミミズ」も、とても長いミミズです。 実のところ、この「長さ」こそ、川底など水中で大型陸生ミミズが暮らす一つの適応なのではないか?と考えています。長いミミズといえば、ハッタミミズやジュズイミミズと呼ばれるミミズがいます。水田などにいて全長1mにもなるような、とても長いミミズなのですが、この長さの理由は「少ない餌をしっかりと吸収するため」と誰かがどこかで言っていたような・・(その出どころが思い出せずにいます)。我が家で飼育している「オレンジハチマキ川ミミズ」もとても長いミミズですし「クルンクルン川ミミズ」と呼んでいる川の底で良く見かけるもう少し小型のミミズも、とてもとても長いミミズです(ヤマトヒモミミズに似たやつ、だと思います・・)。 なので「マッチョ」と「クリーム」がともに細長いミミズであることに、淡い期待を抱いているのです。 細長い幼体?もいました。 彼らが棲んでいるのは「土」よりも「砂」なんですよね…と言って、すぐに否定しておきます。もしかすると彼らの群れの「本体」は、やはり土なのかもしれません。それはわかりません。確かなことは、流れのある「砂地」まで進出してきているということです。 美しい「マッチョ」。 満足しました。 あ、そういえば「オレンジハチマキ川ミミズ」も1匹見ました。写真を撮る前に逃げられてしまいましたが、やはり「オレハチ」も川ミミズなのだなあ、と思った次第です。
今日、新たに確認できたことは次の通りです。 ・成体には雄性孔が見られた(つまり、交接するだろうということです)。 ・幼体から亜成体、成体まで幅広くいた(同じ種かどうかはわからず・・ですが)。 おそらく彼らも夜行性でしょうから、いずれは夜間に川底の石の隙間から這い出している自然の姿を観察してみたいものです。〈若林〉◻︎
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