このところ続けているけど行き詰まってもいる「オヨギデカミミズ」の種を判別しようとする同定プロジェクト。 季節が進み、川にヒトツモンミミズが増えていくにつれて、昨年の7月に私が「オヨギデカミミズ」と呼んでいたのは、おそらくほとんどがヒトツモンミミズだったのではないか・・と思うようになりました。 と、同時に他のミミズよりも早い5月には川に姿を現していた「クリームオヨギデカミミズ」への興味は増すばかり。なぜならばヒトツモンミミズやハタケミミズ、さらに「しまぐろミミズ」ことおそらくキクチミミズ、そして「ツートーンオヨギデカミミズ」ことおそらくフツウミミズなど、6月から増えて来たミミズたちはこぞって川の護岸側にわずかにある植物が生えた湿った陸地にこそ多くいるのに対し、「クリームオヨギデカミミズ」にはその傾向が見られないためです。また見つけるのは唐突に護岸を登っている姿か、川の中にぷかんと現れる姿ばかり。他の多くのミミズが川底よりも湿った陸地にたくさんいるのに対し、「クリームオヨギデカミミズ」にはその傾向が見られないことも気になっています。 もうひとつ、気になっているのが別の川で観察している「マッチョ虹色川ミミズ」。これは流れのある川底の石と砂の間で見つけることができるミミズです。また、湧き水場の苔でもよく見られます。 あくまでも見た目で「マッチョ虹色川ミミズ」と呼んでいるだけなので、その中に複数種が含まれている可能性もあるわけですが、とにかく「クリームオヨギデカミミズ」と「マッチョ虹色川ミミズ」は、私の中で今や特別な存在となっています。 こちら「クリームオヨギデカミミズ」です。大きいものは25㎝以上となります。よく似た10㎝ちょっとの小型もいます。 これは昨晩観察をした小型のタイプ。 そしてこちらが「マッチョ虹色川ミミズ」。 虹色光沢の美しい艶やかなミミズです。 こんな感じです。
さて。 なかなかこれらが何ミミズなのかを知るのは難しい状況です。 もっとも確かなのは解剖ですが、今のところはそこまでするつもりもなく、もう少し別のアプローチを考えていこうとしています。 ここは少し大胆に。仮に、なんとなく似ているなーという種を当てはめてみます。 『ミミズ図鑑』やウェブの『ミミズ大図鑑』を見て、なんとなく似ているなーと思っているミミズがいるのです。 それは・・ 「クリームオヨギデカミミズ」→イロジロミミズ 「マッチョ虹色川ミミズ」→ヘンイセイミミズ といったところです。 『ミミズ図鑑』によりますと、イロジロミミズの説明はこうあります。 「沖縄を除く全国分布種、草地や雑木林周辺の落葉下の土壌中等に生息する。平地から山地まで分布する。淡い薄茶色の体色が名前の由来である。性徴や外部標徴は保有しない。」 体長は80〜140㎜/浅層種/越年生 まずもって「クリームオヨギデカミミズ」の特徴は白っぽい体色です。それが何よりイロジロミミズに似ているのです。そして太さの割に細長い体型。さらに性徴が曖昧であること。そして越年生であることも気になっています。6月過ぎてから急に増えてくるヒトツモンミミズは一年生(一年で死んでしまう)ですが、「クリーム」は5月にはすでに成体が見られることからも、幼体もしくは成体で冬を越している越年生である可能性が高いのではないかと考えているためです。 また浅層種というのも気になっています。 『ミミズ図鑑』によると・・ 表層種:落葉の下や糞粒中などの土壌表面である地表に生息する種である。落葉や糞粒を手で払いのけるだけで採取できる。 浅層種:地中に生息する地中種で浅層(0〜30㎝)に生息する種である。多くは2㎝から10㎝以内に生息する。 とあります。湿った陸地の落ち葉の下にたくさんいるヒトツモンミミズやキクチミミズは表層種です。イロジロミミズはそれとは違うタイプである、ということです。 表層種がたくさんいるのはこんなところです。 こんなところですね。 ひとつ気になっているのは全長です。「クリームオヨギデカミミズ」は20㎝を超えるものが普通にいて、25㎝を超えるものもいます。一方で、イロジロミミズと同様に10㎝前後のやつもいます。もしかすると大型と中型はまた別種なのかもしれませんが、まずは仮にイロジロミミズに近い仲間と考えておきたいと思います。 「マッチョ虹色」はヘンイセイミミズを疑っています。長くなるので特徴などは割愛しますが、興味深いことにヘンイセイミミズも浅層種であり越年生なのです。「マッチョ虹色川ミミズ」は冬場にも川底にいますので、越年性であることは間違いないと思います。 つまりまとめますと、私が気になっている「クリームオヨギデカミミズ」はイロジロミミズの仲間であり、「マッチョ虹色川ミミズ」はヘンイセイミミズであり、ともに地中に暮らす浅層種で越年性のミミズなのではないか・・という仮説をひとまず立ててみたいというわけです。矛盾が生じた時点で誤りは正していくとして、これは面白い重なりなのではないかと思っています。 最近読んでいる『土壌生態学入門』。少し難しくも、とても面白いです。 色々面白い気づきがあったのですが、なかでも私的に重要だったのは、まず・・ ・土壌の中は、おおむね湿度100%に近いということ これまで私はミミズが川に入る理由のひとつは乾燥のリスクを下げることだと思っていたのですが、どうやら土壌の中にいる限り(地上にはい出さない限り)乾燥の危険性はそもそも薄いのではないか?と思いました。 また、もうひとつ重要な知識として・・ ・落ち葉などを食べる表層性種と、その下の土壌(土)を食べる地中性種(浅層種含む)とは、食べているものから暮らしぶりから、色々なことが異なる といったことでした。 6月を過ぎてからどんどん増えているヒトツモンミミズなどは表層性種であり、対して川の流れの中に入っていきやすい『クリームオヨギデカミミズ』と『マッチョ虹色川ミミズ』は地中性種に含まれる浅層種なのではないか?ということです。 ぱっと見、川の流れの底は陸地に比べると食べ物に乏しい印象があります。それは表層性種の食べる落葉だまりなどと比べると乏しいように見えていましたが、そもそも落葉は食べずにその下の土壌を食べている地中性種にとっては、流れの底の石と砂の間の環境は、そこまで大きなギャップがないのかも・・?なんてことを思いました。 まとめますと・・ 「川底に出ていくミミズは、越年性の地中性種(浅層種)なのではないか?」 との妄想仮説を立ててみた、というわけです。 繰り返しますが、そもそも種が判別できていませんので完全なる妄想に過ぎません。 ですが、妄想は妄想のまま、仮に決めてしまった上で、こっち側(生態側)からのアプローチも同時に進めていくことで、わかってくることがあるような気もしています。 なんだか勉強っぽくなってきたー。〈若林〉◻︎
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