今朝も少しだけ川を覗いてきました。

川ミミズ観察です。

川ミミズのいる浅い流れ。

ミゾソバ、ヤナギタデ、ウキクサの仲間などが小さな陸地に繁茂しています。

このところ気になっているのはこちら。

ヒゲナガカワトビケラの幼虫が作ったネット(捕獲網)です。幼虫は蜘蛛の巣のようなこのネットを張ることによって、引っかかった流下物を捕食しているとのことです。

先日は初めて、朝方に這い出していた川ミミズがトビケラの捕獲網に口をつけてモシャモシャしている姿を観察しました。結構な流れの中でした。朝方に川底を徘徊するミミズをこの川で観察したのは3例目です。

過去に見た朝方の這い出し。

もう一例。こいつは石に着いた苔を食んでいるような姿を見せてくれました。

いずれも私が「マッチョ虹色川ミミズ」と呼んでいるやつで10㎝前後。最初の一匹は成体でしたが、残る2例は幼体のようでした。

最初に観察した成体は、1時間31分観察した末に、流れの川底の石の隙間に入って行きました。幼体は潜るところまで観察できていません。

知りたいのは、彼らが川底を徘徊する理由です。

最も私的に理想的な?姿は「食べ物を得るための移動」であり、トビケラの捕獲網や石の上の苔で口を動かすような姿には興奮を覚えましたが、かといって確実に食べているとは言い切れません。そのように見えただけかもしれません。

そして朝方とはいえ、日中にこのように川底に姿を露わにするのは、危険に身を晒す行為そのものですから、そこにも疑問が残るんですよね。どこまでも感覚ですが、リスクの方が多いように思えるんです。

同じ時間帯、同じ場所には川底を常にスパスパしているコイが数匹います。私が川ミミズの徘徊を観察しているのは長靴の許容範囲でしかありませんが、そんな浅瀬にも十分にコイたちは入ってきています。思うにここの朝方のコイのスパスパは川ミミズをメインターゲットにしているのでは?とすら思えてしまうほど。

あと常連はこちら。カルガモです。首を突っ込んで盛んに何かを食べています。水草なのか、そこにいる小動物なのか・・。春にニゴイやマルタウグイが川底に産卵する際には、その卵を掘り返して食べているような姿も見受けられますので、川底のご馳走には敏感だと思います。

さらなる浅瀬ならハシボソガラスも天敵になりうる生き物です。げんに他の川では浅瀬の小石をひっくり返してヒゲナガの幼虫を食べている姿は日常茶飯事ですし、一度だけ川ミミズを引っ張り出して食べたと思わしき姿も観察したことがあります。

他にもオイカワやカワムツ、ドジョウ、ウナギ、ウキゴリ、ヨシノボリ、アメリカザリガニなどなど捕食者となりうる生き物はたくさんいます(この区間でカメの類はまだ観察していないことに気づきました)。

無防備な姿を川底に晒したまま、もそもそと這っている姿を見ると、実はだいぶ食べられてもいるんじゃないだろうか?と思わずにはいられません。

では、朝方に徘徊している川ミミズはどのような状態なのでしょう。いくつか考えてみました。

①川底への避難が遅れている?

これは十分に考えられることです。夜にも数回、這い出しを観察していますが、日中に比べると今のところ確実に多くの川ミミズの徘徊を観察することができています。3回観察して確か3〜7匹といったところかな。

ただ、彼らが川底にいたことはわかりますが、何をしているのかを追った観察はできておりません。なぜならライトを当てた時点で違和感を感じてしまうと思われるからです。光からの忌避行動は多くのミミズで観察できます。もちろん日中でも川底を歩く足音には十分違和感を感じているとは思うのですが、少なくてもそこそこ近く(30㎝ほど離れたところ)で足音を立てても行動に目立った変化は見られません。

夜のコイの動きはわかりませんし、カルガモも夜行性ではありますが、川ミミズが朝よりも夜に多く這い出している傾向はあるように思えます。朝になってそろそろ隠れなくてはならないタイミングなってもまだのんびりしている奴が私に見つかっているのかもしれません。

②具合が悪い?

弱ったミミズが川底でヒルやエビ、ウズムシなどにたかられている姿はよく見ます。陸地だとアリやダンゴムシ、オサムシなどが放っておきませんが、水の中でも弱ったうちから小さな捕食者たちにたかられてしまいます。もしかすると朝方に川底を徘徊しているようなミミズは健康ではないのかもしれません。ただ、見た目で明らかに弱っている様子は過去の3例にはありませんでした。ですが逆に、ものすごく健康状態がいいかというと、そうともいえない気もしています。どちらかというと、川底を掘って出てくる姿の方が生き生きとしているように目には映ります。肌艶がいいといいますか・・。これに関しては全くデータにもなりませんが、観察例を重ねることでなんとなくつかめてくるような気もします。ただ少なくても朝方徘徊していたミミズたちは流れの中を横切るように1m以上の距離を移動するだけの力は残っていました。

③食われなかったやつ?

夜のほうがたくさんのミミズが這い出していることは先に述べた通りです。そしてカルガモはどちらかといえば夜行性ですし、水中の捕食者たちも夜活動する奴は山ほどいます(ドジョウなどは夜になると砂底から出てきます)。となると、朝方わずかに観察できるミミズは、夜のうちに食べられなかったラッキーなやつかもしれません。

他にも色々と考えられることはありますので、まだまだなんとも言えませんが、とりあえずは上の3つのことを念頭に入れて観察をしてみたいと思っています。

 

そして最初に戻りますが、私が一番知りたいのは、彼らが川底に這い出てくる理由です。

「這い出し」と言えば陸地の地中に棲むミミズにも這い出し行動は観察されています。それとも似た行動のような気もしますし、また違う行動のような気もします。

地中性(浅層性)だと考えている「マッチョ虹色川ミミズ」に関しては・・

・広範囲を動き回っての捕食行動(積極的徘徊)

・押し出されるような分散行動(消極的徘徊)

この二つを考えています。

面白いのは積極的徘徊である捕食行動であり、それに繋がりそうな観察例が、ヒゲナガカワトビケラの捕食網でのもぐもぐや、石の上の苔でのもぐもぐな訳ですが、まだまだ事例が足りません。できたら夜こそじっくりと行動を観察してみたいのですが、果たしてその時間と胆力が得られるか・・。

ただ、なんとなく押し出されるような分散行動もありうるのではないかと想像しています。

川底ってどこにでも隠れられるようで、実は理想の川底って少ないのかもしれません。そんな場所は先客がいるとも考えられます。すぐに落ち着ける場所をゲットできるやつもいれば、なかなか理想的な居場所が見つからず徘徊を繰り返しているようなやつもいるのでは・・なんてことも思います。

ヒトツモンミミズなど表層性のミミズの川底の徘徊は、こっちなのではないかなーなんてことを考えています。そもそも表層性は川底でずっと暮らすような生活をしづらいのではないかと思っているためです(ただこれも言い切れません。ずっと川底に暮らす表層性もいるのかもしれません)。

・・とまあ、わからないことだらけなのですが、少しずつ観察例を増やしておぼろげに見えてくれば・・なんてことを考えています。

最後に今朝観察したヒゲナガカワトビケラの捕獲網をいくつか。

一度作られるとどのぐらい残るのか? 川ミミズ以外の生き物も利用するのではないかなど、こちらも知らないことばかりです。

結構流れの強いところ(水深は15㎝ほど)で少し掘ったら出てきたツリミミズの仲間(10㎝以上)。これもまた「マッチョ虹色川ミミズ」とともに、この川の常連。こいつの這い出しはまだみたことがないなあ。〈若林〉◻︎

 

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