昨日から東北や北陸を中心に大規模な線状降水帯が猛威をふるっています。「国土強靭化」はこの先、どのような方向に向かうのでしょうか…。 さて。当ブログは今回も川ミミズの話題です。 今読んでいるのがこんな本。 『土の中の生き物たちのはなし』。朝倉書店の新刊です。 土壌動物についての最新知見がまとめられた一冊。ミミズやそれを取り巻く興味深い話がたくさん収録されています(「水中に生息する大型のミミズ」と題したコラムでは、北米などの、水中で生活を送っている大型ミミズを紹介しています。まさに川ミミズに類するトピックス! これについては、また改めて・・)。 最新の知見から、興味深い内容がいくつも・・ 例えば・・ 「ミミズは海の中で進化した多毛類(ゴカイなど)の中で、陸上に進出したごく小さなグループであり、ヒルはミミズの特殊化した一つのグループに過ぎないことが明らかになっている」(引用)。 であるならば、川ミミズは一度陸地に進出した末に再び水中に生活の場を移していったイルカやクジラ、海獣たちのような存在なのか?(違うか・・) そしてもう一つ、このような言及も。 「ミミズには3つの生活型が知られている。リター層に生息し、腐植や分解の進んだ落葉を食べる表層種は、春に孵化し、夏までに成熟し冬には死滅して卵で越冬する年一化の生活史を送る。(中略)これに対し、土壌中に生息し、有機物に富んだ鉱質土壌を食べる地中種や、土壌中に生息し、表層の落葉を土壌中に引き込んで食べる表層採食地中種は越年性であり、少なくても後者の一部は、成熟までに数年を要すると考えられる」(引用)。 リターとは落葉や落枝のことです。 私にとって重要なのは、表層種は冬までに死滅してしまう、という点です。私が最も注目している川ミミズである「マッチョ虹色川ミミズ」は冬にも成体を見ることができますので、越年性であり、つまりは地中種もしくは表層採食地中種ということになります。これらは落葉の下などに棲む表層種とは異なり、土壌に坑道を作って生活している種類ですから、川底にも坑道を作って暮らしていることが想像できます。 実際、川底の石を除くとこのように砂にうずくまった川ミミズを見ることがあります。こちらは「マッチョ虹色川ミミズ」。頭を出してました。 こちらは10㎝以上あるツリミミズの仲間。お尻を出してました。 砂の場合、陸地の土壌に比べると安定性は低いかと思いますので、ミミズの作った坑道がそのまま維持されているかどうかはわかりません。ただ、少なくても河床に隙間を作ることで水通しをよくしたり動きやすくしたりする働きはあるのではないでしょうか。 また、ミミズはビーバーなどとともに生態系創出者(ecosystem engineer)と呼ばれる存在であるとも書かれています。生態系創出者とは、ビーバーが木を集めて河川にダムを造ることなど、「その生物の活動自体がなくなったあとでも、かつての活動の結果が生態系の機能に影響を与えるような生物(引用)」とあります。陸上のミミズは土壌の性質を変えることで有名ですが、ならば川底の土壌中に棲む川ミミズもまた、川底の性質を変える存在なのではないか・・なんてことを考えています。 私の乏しい経験上、川ミミズが多い場所はニゴイやマルタウグイの産卵場となりやすい瀬尻です。そもそも地形的に河床の水通しが良い場所だからこそ、産卵場にもなりやすく(卵に十分な酸素が行き届くよう)、そんな場所だから川ミミズも好んで棲んでいるのかもしれません。 一方、そんな場所は、もしかすると川ミミズが掘った坑道によって、より水通しが良くなっている場所なのかもしれません。 こんな場所です。 この石を取り除くと、その下は砂となっています。 横から見るとこんな感じ。砂と石が混ざり合ってもいます。 こちらニゴイの卵(と思わしきもの)。直径2㎜弱ぐらい。ニゴイは産卵時、体を震わせて川底を洗い、砂礫の隙間に卵を産み落とします。 ニゴイの産卵の瞬間です。 あくまでも仮説ではありますが、川ミミズが作り出す坑道は川底の水通しを良くし、そこに卵を産み落とすニゴイやマルタウグイ、オイカワなどの卵の発育に好影響を与えているのではないでしょうか? 川ミミズは果たして川底でどのような暮らしを展開しているのか? まだまだ興味は尽きません。〈若林〉□
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