今日も晴れ。とても暑い一日になりそうです。 さて。昨日から始めました「川ミミズを食べる生きもの」シリーズ。 少しちゃんとブログを書こうとすると、やはり大変な作業で、早くも断念しかけておりますが・・三日坊主までは・・。 というわけで、第2回目はミスジコウガイビルです。
(注意! SNSでこのブログで紹介しているコウガイビルは、オオミスジコウガイビルもしくはタスジコウガイビルではないか?とのご指摘をいただきました。ミスジコウガイビルは、もっと頭が横に長くて体長もうんと短いのだそうです。私がミスジコウガイビルだと思った根拠は大きさ以外にありませんでしたので、ひとまず「オオミスジコウガイビル?」とさせていただきます。根拠がはっきりしたらすみっコぐらしの精神に乗っ取り「オオミスジコウガイビル(本物)」と変更させていただきます。以下、ミスジコウガイビルとして書かれていますが、オオミスジコウガイビル?としてお読み下さい)
こちら「ヒル」という名前がついておりますが、第1回で紹介したアメリカツノウズムシと同じく、扁形動物門の中のプラナリアの仲間だそうです。血を吸うお馴染みのヤマビルや川に多いセスジビルなどの「ヒル類」は、ミミズと同じ環形動物門となります。 こちらアメリカツノウズムシ。 そしてこちらが今回の主役であるミスジコウガイビルです。長いですねー。粘液を引きながら湿った護岸を這っています。プラナリアの仲間というわけで、体が切れてもそこから再生するのだそう・・。ならばなぜ、こんなにも長いのか・・。 その一端を先日、観察してしまったのです。。 ちなみにこんな感じに、黄色い体に3本の筋が入っていることから三筋(ミスジ)というわけです。これは在来種だそうですが、近縁のオオミスジコウガイビルという1m以上にもなる外来種も日本に入ってきています。私も何度か見たことがありますが、始めは紐か何か? 生きものとわかった途端にぎょっとする生きものです。 では「コウガイ」は?と言いますと、ハンマーヘッドシャークのような頭の形が髪結いの道具である「笄(こうがい)」に似ているからなのだそう。ちなみにハンマーヘッドシャークことシュモクザメの「シュモク」は鐘を叩くためのT字型の棒である撞木からきているのだそうです。 ミスジコウガイビルは水中に潜ってはいかないそうですが、雨などが降って護岸が濡れると、湿った隙間からヌルヌルと出てきて、護岸を徘徊します。川ミミズも護岸が濡れると這い上がっていきますので、そこで出会いが訪れます。 例えばこんな感じ。真ん中にミスジコウガイビル、下に川ミミズ、そして上の方にはナメクジもいます。ミスジコウガイビルはミミズやナメクジ、カタツムリなどを好んで食べているそうです。それも生きた相手を狩りして仕留める狩人なのだとか。 そして先日、目撃してしまったシーンがこちらでした。 始めは護岸の隙間で不自然に暴れる6㎝ほどの「しまぐろミミズ」(おそらくキクチミミズ)に気づきました。何をこんなに暴れているのだろうと目を近づけると・・。 なんと、ミスジコウガイビルが、ミミズをまるでイッタンモメンのようにぐるぐる巻きにしてホールドしているではありませんか! はじめは暴れていたミミズも、するすると長い体を巻きつけながらT字の頭でミミズの頭の方に這い上がって生き、締め上げていくと、わずかにしか動けなくなりました。ちなみにミスジコウガイビルの尻尾は護岸の隙間に差し込み、しっかりと垂直護岸から落ちないように確保しています。川に落ちればミミズの勝ち、なのかもしれません。 この姿はまさに、アメリカツノウズムシの狩りに似たものでした。いや、それ以上に攻撃的で一瞬の締め技といった感じ。そしてT字の頭をミミズの頭付近まで伸ばしていくと・・ 体を折り返して、すっぽりとミミズの頭を包んでしまったのです・・。 そして1分ほどすると・・ お腹から白いネバネバのような粘液が出てきました・・。後で知ったのですが、ミスジコウガイビルの口はT字の頭にあるわけではなく、胴体のおなか側にあるそうなのです。そこから消化液を出して相手を溶かし、それをジュルルル・・と吸うみたい・・。 完全に粘液に包まれてしまったミミズは、少しずつ溶かされ、吸収されていきました。 この観察で驚いたのは、ミミズが全くの健康体に見えたことです。アメリカツノウズムシが襲いかかったミミズは多少擦り傷などがあり、弱っているようにも見えました。傷ついたり病気になった弱い者が襲われた・・という印象を持ちましたが、このミスジコウガイビルに関しては、元気なミミズに瞬時に襲いかかり、ぐるぐる巻きにしてドロドロに溶かしてブジュジュジュジュ・・とすするという、それはまたなんとも言えない捕食シーンだったのです。 狙われたミミズはこの怖るべき狩人から逃れる術はないのでしょうか? ミミズが襲われる、といえば、以前渓流釣りの帰りに山の中でヤツワクガビルという大型のヒルがこれまた大型のミミズに襲いかかっているシーンを目撃したことがあります。 ミミズを追いかけている最中のヤツワクガビル。もう、なんと言いますか、襲いかかり方が、鎌首をあげた蛇のようで、とても素早い動きでした。逃げるミミズを一身に追いかけ、最後にはスポッと体に吸い付き、飲み込んでしまいました・・。 それにしても、目は見えないでしょうから、匂いか何かでミミズの存在を感じているのでしょうか・・。 対してこのミスジコウガイビルは、もっとヌメヌメとした動きですから接近も比較的ゆっくりです。たまたま偶然にも、真正面から小さなミミズとミスジコウガイビルが出くわすシーンに遭遇することができました。ミミズはミミズで接近するミスジコウガイビルに全く気づくそぶりを見せません。 ミスジコウガイビルの方は、近くに来たところで何かを感じてはいるようで、T字の頭がヒクヒク動いています。動きながらミミズへと近づき・・ 襲われる! ミミズはこの距離でも微動だにせず。しかし次の瞬間。 軽く触れた瞬間に、ミミズは危険を察したのか、ピッと1㎝ほど頭を引っ込めました。 そのミミズに再度近づいていくミスジコウガイビル。この時も、ミミズは逃げるそぶりを見せません。 ところが触れた瞬間、またしてもピッと頭を引っ込めてコケの中にうずくまりました。ミスジコウガイビルがさらに追い詰めればおそらく捕まえることができたのではないかと思いましたが、この時はそこで諦めたのか、もともと食べるつもりもなかったのか、そのまま進んでいってしまいました。 観察例が一度きりなので、これがどのような状態だったのかはわかりません。ただ、ミミズにも逃げるチャンスはありそうだな・・とは感じた次第です。でもミスジコウガイビルが食べる気満々だったら、こうもいかないのかも・・とも思います。 オオミスジコウガイビルの狩りを一度見てみたいと思ったり、思わなかったり・・。 そしてコウガイビルの仲間にはフグ毒と同じテトロドトキシンを持つ者がいたり、ド派手で鮮やかな色合いを持つ者がいたりと、不思議な生きものです。〈若林〉□
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