さて。いよいよ年の瀬。

仕事は全くおさまりませんが、今日が本年の仕事終わり。区切りは大切ですからね。

朝、今年最後の川ミミズ観察にも行ってきました。

3匹観察。一匹はおそらく「マッチョ虹色川ミミズ」の幼体。もう二匹はマッチョより少しだけムチムチした「ムチマッチョ虹色川ミミズ」? もうなにがなにやらではありますが、今年も楽しく興奮する瞬間がたくさんありました。

そこで・・需要はさておき、「2022川ミミズ観察TOP10」と題しまして、今年の川ミミズ観察を振り返ってみたいと思います。

では第10位から!

10位 ヒトツモンミミズを同定

昨年まで「オヨギデカミミズ」と呼んでいた15㎝以上にもなる大型の川ミミズですが、どうやらいくつかの種類が含まれていることがわかってきました。そこでそれまでは見た目の印象だけで判別してきたミミズを、初めて分類形質に注目して分類してみたのです。

ミミズはお腹側に、分類に役立つ形質があります。ヒトツモンミミズはDの位置に斑紋が1〜2つあるのが特徴。「一つ紋」というわけです(実際は写真のようjに二つ紋であることのほうが多いのだそう)。

ミミズはDやBの位置を見ることで、ある程度の分類することができるのですが、生きたままの観察が難しいこともあり、結局、私に判別できたのは、このヒトツモンミミズともう一種(忘れてしまった・・)ぐらいでした。

ただ、ヒトツモンミミズを判別することができるようになったことで、これとは違う「オヨギデカミミズ」がいることもわかったのです。

それが私が最も今、気になっている川ミミズである「クリームオヨギデカミミズ」です。

こちらですね。白っぽくてふにゃふにゃしています。

9位 飼っている川ミミズの子どもが成体に!

つい先日、自宅で飼育している川ミミズの第二世代が成体となりました。写真の上がビッグマザーこと親ミミズで、下が成体となったばかりの子ミミズです。親ミミズは昨年の1月に卵胞から飼い始め、丸々2年間生きていることになります。夏場にちょっとぐったりしましたが、涼しくなるごとに元気を吹き返し、いまも元気いっぱい。今年は先日数えたら、すでに36個の卵胞を産んでいます。子ミミズは全部で今のところ6匹いて、そのうち2匹が成体となっていたため、こいつらも卵胞を産むとなると・・。

8位 川ミミズの蛍光発光に驚く

ふとしたきっかけでブラックライトを当ててみたところ、川ミミズの蛍光発光がなかなかすごいことがわかりました。特に「クリームオヨギデカミミズ」の蛍光発光(上写真)は格別です。ミミズに小宇宙(コスモ)を感じた瞬間でありました・・。

ツリミミズの仲間

30㎝ぐらいあった巨大ミミズ

これは5〜6㎝ほどのミミズ。こいつもすごかったです。

7位 表層性種と地中性種を意識する

こちらは本などからの知識をもとに、普段観察している川ミミズがどのようなミミズなのかを考えている際に、主に1年で死んでしまう表層性種と、冬を越す地中性種を意識するようになりました。

先のヒトツモンミミズは表層性種であり、観察している川からは、7月を中心にガッと増えてお盆過ぎまでに一気にいなくなってしまうことがわかりました。そしてヒトツモンミミズは川底にも現れますが、主に陸地の落ち葉の下などにたくさんいることもわかりました。私は川底の暮らしに特化した陸生大型ミミズを突き止めたいと思っているのですが、それらはどちらかというと地中性種なのではないか?というイメージも膨らんできました。

6位 川ミミズの徘徊を1時間31分も追い続ける

それは7月初旬のこと。川ミミズの徘徊を朝方に観察することができました。その後も何度か機会には恵まれてはいるのですが、この時が特別だったのは、1時間31分、観察を続けた末に、そのミミズが流心近くの川底へと潜っていったことです。それまでにも夜には徘徊を何度か観察していました。ですが、夜の観察にはライトを当てなければならず、レッドライトで影響を軽減したとしても、どうしてもミミズ本来の動きを観察しきれている気にはなれませんでした。朝方ならばライトを当てる必要はなく、限りなく彼らの素の暮らしを観察することができるのではないかと思うのです。

このミミズでした。

こんな感じのルートを辿り、川底へと潜っていきました。

この観察によって、川ミミズは夜徘徊して、朝になると川底に潜っていくという生活の着想を得ることができたのです。その後、同じ川の夜の観察では何度も徘徊の観察をしています。

5位 キクチミミズの一斉這い上りを観察

先に種を判別できたのはヒトツモンミミズぐらいと書きましたが、キクチミミズはその体色から判別することができる稀有なミミズです。このミミズがある新月の晩に、一斉に垂直護岸を這い上る姿を観察したのです。

数えませんでしたが、千匹ぐらいは見たのではないでしょうか。キクチミミズは7月を中心に短い期間に一気に姿を現し、一気に姿を消してしまう表層性種です。来年もぜひ、観察してみたいミミズです。

4位 イッタンモメンに襲われる!

川ミミズが這い上る垂直護岸には、黄色くて長いオオミスジコウガイビルというヒルの仲間も暮らしています。こいつが目の前で突然、キクチミミズに襲い掛かったのです!

あまりにも強烈な光景! グネングネンと締め付けるように絡みついていき・・

しまいには腹から消化液を出してグジュグジュにしたミミズをジュルジュルとすすってしまいました・・。衝撃でした。

3位 プラナリアに襲われる!

川ミミズの暮らす川底にはこのようなプラナリアと呼ばれる小さな奴らがいまして、こいつらがなかなかの集団狩人なのです。おそらく観察しているのはアメリカツノウズムシではないかと思っています。

捕まえたミミズをロックしていき、次から次へと集まってきては・・

ぐるぐると絡みついてムシャムシャと・・。

実はこの食べられたミミズは、そもそも20分間ほど、徘徊を観察していたミミズでした。元気に川底を這っていたミミズが、プラナリアに狩られて食べ物になってしまう一連は、とても衝撃的でした。

2位 キクチミミズの交接を観察

6月後半、護岸の溝で交接(交尾のようなもの)をするキクチミミズを観察することができました。出会いから交接に至るまでの一連の動作は、とても慈しみに満ちたものでした。

1位 4月1日の「クリームオヨギデカミミズ」

昨年まで、ほぼ6〜7月にしか観察をしてこなかった川で、今年は4月1日から観察を始めました。早い開花の桜の花びらが川面を流れる季節です。

夜、ライトを当てた先にボワッと浮かび上がった大きくて白くてふにゃふにゃなミミズの姿は、今でもはっきりと覚えています。のちに「クリームオヨギデカミミズ」と名付けたミミズです。

このミミズはまるで、温泉に浸かるように、浅瀬の溜まりにボワッとたたずんでいます。その姿がとても自然で、まさに暮らしの一幕を見ている気にさせてくれるのです。私の中では川ミミズの中の川ミミズとして、その暮らしを求めています。実は今朝も探していたのは、「クリームオヨギデカミミズ」の幼体でした。

このミミズは今年の観察の経験から言いますと、4〜6月にはしばしば川底や護岸に這い上る姿を観察できますが、ヒトツモンミミズや他の大型ミミズ(おそらく表層性種)が一気に増える6月末あたりを境に姿を消してしまいます。4月にすでに大型の成体が観察できるということは、おそらく幼体もしくは成体で越冬しているのではないかと考えています。

気になるのは7月以降、こいつらはどこに行ってしまうのか? 死んでしまうのか、川底に潜ってしまうのか、それともどこかに流れていってしまうのか・・。

もしかすると4〜6月に産卵して、幼体で越冬して、翌春に成体になる一年生のミミズなのかもしれません。もしくはシーボルトミミズのように、1年目の冬は幼体で濾し、2年目の春から初夏に産卵をして死んでしまう多年生なのかもしれません。

先日、一匹の長くて白い幼体を観察することができました。

確かなことは言えませんが、こいつが「クリームオヨギデカミミズ」の越冬幼体なのではないか・・。

そんな妄想を膨らませつつ、新年も冬の川の観察を続けたいと思っています。〈若林〉□

 

【お知らせ】川辺の自然観察をまとめた一冊、『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』発売中です!(アマゾンの販売ページはこちら

★RIVER-WALK Vol.1~Vol.3発売中です!★