今日は雨。昨日よりも一気に気温が下がりましたね。そして明日はまたグンと気温が上がる予報。抜けない疲れもあって、なかなか体に応えます。

さて。昨日は夕方までかかりきりでしたが、緩く一区切りがついたタイミングで少しだけ川へ。産卵のために陸地に出てくるアカミミガメを追っていたら、偶然見つけたキツネの古い巣穴。そして小雨降るローライトの朝に偶然出会うことのできたキツネ。自然観察の醍醐味は、この偶然性なんですよね。

いえ、なにかを狙って観察に行くのですから、全くの偶然ということはないのですが、それでもアカミミガメと出会わなければ、キツネとの出会いはありませんでしたし、自然の姿を見ることのできる時間なんて、自分の場合、ほんの一瞬にすぎないわけなので、痕跡はともかく、実物との出会いはどこまでも偶然であり、この偶然性こそを愛していると言っても過言ではありません。

たとえば、もう3年以上も観察を続けている川ミミズは、ニゴイの卵を探したことがきっかけでした。その前にニゴイの産卵を観察したのは、サケマスの産卵行動が好きで、それと似ていると気付けたから。

たとえば、河道のイバラドームでアカネズミが暮らしていることを知ったのは、迷い込んだ一頭のイノシシの足跡を追ったのが始まりでした。イノシシの足跡を探して地面を見ていたら、これまで気にしたことのなかった小さな穴が気になるようになり、その近くにネズミの死骸が落ちていたことで、これはネズミの穴?と気づいたことで、別の場所にあるイバラドームの近くには似たような穴がたくさん開いていることが気になって、そこを見ていたら、齧られた痕のある小さな梅のタネを見つけたのが、アカネズミの存在に気づいたきっかけだったのです。

このように、自分の興味の枝葉が伸びていくままに、その道を進んでいく偶然性に満ちた自然観察が面白いんですよね。そして私の場合、そのほとんどは、川につながっているような気がします。考えてみれば当たり前のことで、川や沢、湧水場は、生きものにとって、大切な水場だからです。

夕方、薄暗くなるタイミングを見計らって、デスクを離れたつもりが、思ったよりも早かったみたいです。ただ、北の空はどんよりと黒い雲が湧いており、その一カ所が破けるように黒い帯が地面まで伸びていました。そして時折、ゴロゴロと・・。

風向きを感じながら、こっちにくるなよ・・と願いつつ、キツネと出会った場所に向かいます。途中、一瞬だけヒンヤリした風を感じ、戻りかけましたが、半ば濡れることも覚悟の上で、その場所へ。

幸運にも黒い雲は北東へ流れ、雲間が空き、まだだいぶ高い位置に太陽が覗きました。早すぎた・・。

ふくよかで湿った風を感じながら、時間の経過を楽しみます。途中でカラスに怒られたり(巣が近くにあったのでしょうか)、聞き慣れない細やかで涼しげな虫の声を楽しんだり、ネズミムギにカヤネズミの巣を探しながら時間を潰し、川沿いの土手の上でキツネを出待ちしました。

土手を幾度か行き来していると、風がツンと鼻を突く匂いを運ぶ場所があることに気づきました。膿んだ傷口のような、それでいてキツネのフンの匂いとも言われるラー油のような匂いもしました。かなりピンポイントだったので、地面にフンでも落ちてやしないかと探しましたが、見当たらず。

そんなことをしながら時間を過ごしましたが、薄暗くなるにはまだだいぶ時間がかかりそう。思えば夕方に外にいるのは久々でした。もうちょっと粘りたいけど、仕事の続きもあるし、なによりも立ちっぱなしで腰が痛くなり、太ももが痺れてきたところで限界を感じ、その場を離れようとした、その時です。

・・と、書きながら、私のブログに多いフレーズだな、と思うわけですが、本当に不思議と、何かが起こるのは、ふとした「その時」なのです。

キツネがポツンと、目の前に現れました。

その場所は先ほどから行ったり来たりしていた、匂いを放つ場所でした。

いったいどこから出てきたのでしょう。たまたま偶然、そこに通りかかっただけかもしれませんし、ここに現れたのには意味があるのかもしれません。

それでも、帰ろうとした私の目の前に現れたのは、きっと偶然なのでしょう。

思えばキツネを肉眼でまじまじと見つめたのは、生まれて初めてのことでした。

キツネって、こんな動物だったんだ・・という、イメージとは少し異なる雰囲気を放っていました。胸前のふさふさした毛と、よく動く大きな耳が印象的でした。

そして時折、心地よいふくよかな風の吹く方角に顔を向け、心地よさそうに目を細くするのです。

30秒ぐらいか、1分ぐらいでしょうか。

キツネは私がどかないことを諦めたのか、何かに気づいたように振り返ると、トコトコと草間に消えていきました。

 

自分の目の前に伸びていく道に、キツネがいた。

そんな幸福な川っぷちの自然観察体験でした。〈若林〉□

 

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