今日は朝からとても強い日差しが降り注いでいる埼玉南部です。

湿度も高く、かなり厳しい日中になりそう。

さて。シリーズ「彼らはなぜ木に上るのか?」も5回目を迎えました。

台風3号の大水で冠水した木にミミズが這い上っているのを観て以来、ずっと気になっているのが、「冠水しないよくある雨の日にもミミズは木に上っているのではないか?」という疑問です。

これを確かめるため、冠水時に木への這い上りを見た場所へ、仕事帰りに夜な夜な通い込み観察を続けてきました。日中も雨が降ればお昼休みに川へと向い、木に上るミミズを探す日々(といっても5日ぐらいですが)。

観察するうちに、一口に木と言ってもさまざまだな・・と気づき始めました。樹皮にしてもザラザラとゾウの皮膚のようなものから、深く溝が刻み込まれたもの、ツルツルしたものまでさまざまです。

そんななか、ひとつの木が気になってきたのです。

それはこちら。

クワです。1カ月ほど前には鳥やタヌキのご馳走となる大量の実をつけていた桑の木です。

これですね。甘酸っぱくてとても美味しいです。

この桑の木がなぜ気になったかと言いますと、いくつかの理由があります。

その前に、私が観察してみたいと思っている木登りミミズについて少し書きたいと思います。

川ミミズにも似たところがあるのですが、できたら「そこで暮らしているミミズ」を知りたいと思っているんです。つまり、川の水中にいたからといって、そこに暮らしているとは限りません。誤って陸から落ちて流されている姿かもしれませんし、雨で水位が上がってことで、それまで陸地だった場所が水没して水の中になってしまい、そこから抜け出してきただけの状態かもしれません。

そうではなく、できたら自ら率先して(?)川の水中に暮らしているミミズを知りたいと思っています。

木登りミミズについてもそれは同じです。冠水したことによる避難もまた、暮らしの1シーンではありますが、それよりも、もう少し普段から木の上で暮らしているミミズがいたら、それを知りたいなーと。そんなことを思っています。

では、どんな木ならミミズは暮らすことができるのかを考えました。

大きく条件は3つ考えられます。

①常に湿っている場所がある

ミミズは湿っている場所でないとすぐに干からびて死んでしまいますから、これは絶対条件です。また、基本的にある程度湿っていないと移動できない、ということもあります。

②常に暗い場所がある

ミミズは夜行性で、明るさから逃げる行動を取ります。日中でも明るさから逃げられる場所が必要です。

③食べるものがある

食べものがなければ普段暮らしはできません。ミミズの主食は落ち葉が半分腐った腐植ですが、川ミミズの観察から、おそらくは濡れたコケの間やヒゲナガカワトビケラの捕獲網に溜まった有機物なんかも食べていると思います。落ち葉以外に朽ちた木からできた腐植や、動物の死骸由来のものもいけるかも・・などと思っています。いずれにせよ、何かしらがないとダメだと思うのですが、食べものは先々のカギとなる要素だと感じています。

他には捕食者が少ない、気温差が少ないことなども条件にはなりそうですが、絶対条件とも言える大きなものは上の3つかと思います。

 

話が長くなりかけておりますが・・。

なぜクワに注目しているかと言いますと、これらをしっかりと備えているからなんです。

 

実は①②③の条件を満たす場所は、互いに重なっていることが多いのではないかと思います。

例えばこんなところ。

これはハンノキですが、木の股になっているところです。

落ち葉や流れてきた雨水が溜まり、このように他が乾いていてもここだけ湿った状態を保っています。ここは実際にミミズを見つけた場所ですが、ミミズがいると腐った落ち葉を食べてフンとすることで、自らが身を隠すことのできる土も増やしていくことができます。

もう一つは樹洞です。これはクワですが、このように穴が空いているとそこは暗がりになっていますから、ダンゴムシやらハサミムシやらが暮らしています。乾燥も他に比べると防げます。また菌類が蔓延りますので、そんなのも餌になったりしないかな・・と思っています。さらに樹洞からは樹液が出ていることも多く、それによっても湿った空間が作られています。

クワは他の木に比べ、枝分かれがとても多いので、雨水や落ち葉が溜まる木の股がたくさんあります。さらにカミキリムシなどにも利用されやすいのか、樹洞も多く、樹液も多く出ています。剥がれがちな樹皮も雨水や樹液による湿気を保ちやすい気がします。

たとえばカタツムリもたくさんいます。全体的に湿り気の多い木なのです。

湿り気・・といえば、渓流などに生えているような常に湿った木には、コケがびっしり生えていたりしますが、そんな苔の裏には、きっとミミズもいるだろうな・・と思っています。でもそれを剥がして調べるわけには行きませんので、コケは今のところスルーすることにしています。

で、昨晩ですが(すでに長文になってしまいました)・・

いつもの場所ではなく、クワに的を絞って、クワが多い川っぷちへ行きました。

クワが多数にエノキとオニグルミ。

あたりが暗くなるタイミングで、結構な雨。絶好の条件です。

道路にも大きなミミズが這い出していました。

キセルガイ。

変形菌?

こっちもキセルガイ。

これは!・・と思ったのが、木の股にいたガガンボの幼虫。

なんとクモがゴキブリを捕食しておりました。

小さな甲虫とアリも。

左巻きさんに・・

右巻きさんも。

からつきとからなし。

ジーパンがずぶ濡れに・・そしてひどく蚊に刺され、もうこれはいないなと。

諦めて帰ろうとしたその時でした(何かが起こるのは不思議といつもそんなタイミングです)。

クワの地表から50㎝ほどのところに・・・

おお・・おった!!

6〜7㎝ほどの幼体でした。細長い。「マッチョ虹色川ミミズタイプ1」にも似た感じ。

樹皮でうねうねしている!

光を当ててしまったので、すでに通常行動ではないかと思いますが、印象としては、川のミミズよりも光に対する忌避反応は少なめな感じ。

濡れた樹皮をもしゃもしゃしながら進んでいきます。

尻尾の方。体型は細長く「マッチョ虹色川ミミズタイプ1」やヘンイセイミミズに似ています。ただ雰囲気は少し違うかな・・。

ツルツルと濡れた樹皮を上っていきます。

そして木の股へと・・。

行ってしまった。

たった1匹との出会いでした。

でも1匹見ることができた。

不思議と川ミミズもそうですが、出会いはほんのわずかです。

光を嫌がったのかもしれませんが、15㎝ほど樹皮を登って、木の股へと消えていきました。そこに居心地の良い空間を見つけることができれば、木の上の暮らしが始まるのかもしれません。もしかしたら初見の時に下向きになっていたので、もう少し上の樹上から降りてきたところだったのかもしれません。

満足です・・。

イメージはこんな感じです。赤い斜線はミミズにとっての安全地帯。①②が確保されやすい場所(木の股もしくは樹洞)です。矢印のように、雨が降るたびに少しずつ木を登っていくミミズもいるかもしれません。樹上に安住の地を探すために・・。

藪蚊の猛攻に耐えながら、もう少し観察を続けてみたいと思います。〈若林〉□

 

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