今宵はおぼろ月ですね。雪予報もあるようです。

現在のところ、毎月の『ソルトウォーター』が大詰めを迎えてまして、なかなかに首の回らない日々を過ごしているわけですが。

本日はこちらについて少し、

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kindle(キンドル)について。

 

実は私、本と言えば断然、紙が好きでして。

なんといってもページをめくる質感とか、木漏れ日が文字の上に描くまだらな影模様とか、重さとか、折り曲げたり書き込んだりされた痕跡すら好きという。読み物であるとはつまり「モノ」であり、内容とともに五感に伝わる質感が重要なのである、なんて思っていましたので、電子媒体の忍び寄る影、みたいなものは意識こそすれど、自分で好き好んで使うなんてことはしてこなかったわけです。

ですが、昨年のクリスマスプレゼントにkindleをいただきまして、ためしに青空文庫という無料ダウンロードでひさびさに遠野物語でも読んでみるかーと、はじめてみたところ・・。

 

これがなかなか、よかったんです。

もちろん、画面に映っている文字は、次のページに移る際にパッと消えて入れ替わってしまう幻のようなもので、モノとしての存在感というか重量感は断然、紙に印刷されたもののほうが上なのですが、なにがよいかというと・・

 

読みやすいのです。

 

これは私の個人的な感想ですが、文字がどんどんデカくなるのが好きです。

まず私は老眼が出ているので、単純に大きな文字は読みやすい。

そしてそれ以上に、1ページにあまりバーッと文字が書かれていないのがいいんです(もちろんこれは設定で、文字を小さくすれば、それはバーッとでてきます)。

ちなみに遠野物語は文庫でも読んでいるのですが、そうなるとこんな感じ(上の写真と比べてみてください)。

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ちょっと言い回しや文体が古いこともあり、いまひとつ文字を追っても頭に内容が入りづらかったところがあったのですが、これが上のように1ページの文章量が限られていると、すんなりと入ってきて、意外にスラスラと読めてしまいました。

 

なるほどなるほど、意外にいいじゃないですか電子書籍も。

 

なんて、思っていたところ。

友人である小日向知子さんが、小豆島マガジンsonofune booksシリーズとして、短編集『寒の祭り』(ボイジャー・プレス)を刊行したのです。

アマゾンでの紹介はこちらになります。

 

で、この本はそもそもが電子本なんですね。紙の本じゃないんです。

なので私はアマゾンで購入してパソコン経由でkindleにダウンロードをしてみました。

 

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きたー。

そして通勤時に読む。

読む。

読む。

大きな文字で

読む。

 

そして1時間半ほどで読み終えてしまいました。

 

そこにおさめられていた5つの短編は、少し不思議で、なのにとても日常的。

全編を通してそこはかとなくユーモアが漂い、なのに哀しみや寂しさが顔をのぞかせて、

読み終えると、優しさや肯定的な感情が残るような。

素敵な物語でした。シンプルに言えば、とてもよかったです。

そして文体が柔らかく軽やかで、とても読みやすいです。

 

忙しい毎日、功名心とか、締切とか、レポートとか、合理性の追求とか、メールやLINEの返信とか、特売日とか、無駄のない生き方とか・・知ってか知らぬか、そんな色々なものに追われてしまってたり、得も知れぬ渇望感にとらわれているような人には、通勤時間で読めてしまう処方薬のような、そんな効果が得られるような気もしました。

ひとの幸せってなんだろう?・・に立ち返るというか。

 

ひとつ挙げれば、最期の一編である「鳥のおじさん」は私のツボにはまりました。

詳しくは述べませんが、鳥を肩に乗せたおじさんの話です。

なにせ私、野鳥が肩に止まったことがあるくらいですから!(参照はこちら

 

・・ともあれ。

この小説は、一度読んだら終わり、という類のものではないなと。

繰り返し読み返してみたいなと。これは大好きな一冊だぞと。

そんなことを思いながらkindleに入ったこの一冊を見ていたら、なんだ、電子書籍にも本としての所有感はぜんぜんあるなと。そんなことを思ったのです。

ですが、その所有感・・というか存在感は、どうしても紙にインクで印刷された本の持つ確固たる存在感に比べると、少しはかなげで、不確かで、きっとシャットダウンすれば消えてしまうという暗示のようなものなのだと思うのですが、でもそれは決して悪いものではなく、なるほど、電子書籍が宿命的にまとうこの雰囲気もまた、本の持つ魅力にはなりうるのであるな・・・なんて、そんなことまで思ったのでした。□