私は現在、SALTWATERという海釣りの雑誌を作る仕事をさせていただいているわけですが、そのためしばしば「釣りの取材」に行きます。釣りの取材ですから、やっぱり魚が釣れないとさびしいわけです。ところが、そうそう簡単に海の魚は釣れてくれません。

なので釣り方を教えてもらったり、仕かけを紹介してもらったりするのと同じぐらいか、ときとしてはだいぶそれ以上に長い間、魚が釣れるのを「待つ」という時間を過ごすんですね。

それはそれで楽しい時間なわけですが、ちょっと「待つ」時間が長くなったりしてくると、ときに不思議なことが起こったりします。今回はそんな話をひとつ。

結果から言いますと、鳥が肩にとまったんです。

まあ言ってしまえばそれだけのことなのですが、鳥と言っても手乗りブンチョウみたいなのじゃありません。野鳥ですよ。ちょっとすごくないですか?

その取材はこんな企画でした。

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10種100匹。3日間の取材で10種100匹を釣れるかどうか・・という企画です。

なかなか難しいテーマですが、さすがは釣りの達人です。OさんとYさんがおふたりで魚という魚を釣りまくり、しっかりと目標を達成してくれました。

ちなみに釣れた魚はシーバス、メバル、クロソイ、ウミタナゴ、アジ、イナダ、サゴシ、ダツ、チヌ、マダイ。

前日から始まった釣りは、夜も終わることなく続きました。ほとんど不眠不休で釣り続けるふたりの心意気を受け止め、こちらもがんばってカメラを構え続けたのですが、さすがに二日目の午後になると寝不足で眠くて眠くて、ちょっとフラフラしてたかもしれません。

 

で、事の起った舞台がこちら。

 

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いわゆる堤防ですね。

 

このときはサゴシ(サワラの若魚)が次から次に釣れました。普段なら同じような魚をそんなにたくさん釣ったりはしないのですが、このときは「10種」と同時に「100匹」という目標もあったため、とりあえずカメラに収めなきゃなりませんでした。ちなみに撮影した魚はすべて海に戻すという、こんなルーティンなやり取りをつづけるさなかのことでした。

 

 

釣り人を前にカメラを構えていると、どこからともなくファサッファサッ、ファサッファサッ、という羽ばたきが聞こえ・・てきたかと思ったらファサッ! 

 

 

私の肩に着地したのです。

 

こんな感じに。

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まず、驚いたのは釣り人でした。「鳥・・・とまってますよ・・・」

 

でも釣り人もとても疲れて眠かったので、それ以上の追求はしませんでした。私も「わかってます」。とだけ。

そして撮影を終えて、どれどれ鳥の顔でも見てやろうかと首をひねると、ファサッ・・・とそのまま飛んでいってしまったのです。あ~行っちゃった・・。大きさから判断すると、たぶんヒヨドリだったかと思います。

 

野鳥が肩にとまった。なんというか、とてもうれしかったんですね。自然に溶け込めたというか。気配を消せたというか・・。

 

迷彩服を着こんで気配を消すことで魚に警戒心を抱かせないYさんという釣りの達人がいます。その方に以前、「釣りをしてたら鹿に踏まれたよ」という話を聞いたことがありまして。野生の鹿にも気づかれない状態。そりゃすごい!いつかその境地に至りたい!・・なんて憧れていた私の肩に野鳥が。

 

まあ、それだけのことなのですが、最後にナゼ鳥が肩にとまったかについて考えてみました。

 

まずひとつ目に、とても疲れて眠かったので気配というか殺気が十分に消せていた。

そしてもうひとつ、これが大事なことなんですが、私はその堤防で唯一、釣り竿を持っていなかったんですね。

実はこれが大きかったんじゃないかと思ってます。

 

 

前述の迷彩の達人Yさんは、「釣り竿が魚に与える影響は計り知れない」とも言ってました。「本当は竿も迷彩柄にしたほうがいい」とも。

 

そしてこんなことまで考えていると。(注・絵は私の描いたものです)

 

 

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こんな竿なら、鳥だってもっととまってくれそうですよね!□