昨日、「春には春の川ミミズ、夏には夏の川ミミズ」などと長文でつらつら書いておりましたが、さっそく一夜にして妄想仮説が崩れました(ブログはこちら【春と夏の川ミミズ】)。 私が春にたくさん河床で見てきた「マッチョ虹色川ミミズタイプ1」(おそらくはヘンイセイミミズ)の成体が、スルスルと這い出していたではありませんか! 夏にはいなくなっているのでは?との妄想は、一夜にして崩れたのです。 成体か幼体かはわかりませんでしたが、なかなかのボリュームのものがもうひとつ(左下はアメリカツノウズムシ)。 この、書いたそばから崩れてしまうことは、当ブログのあるあるでもありまして(汗)、そのことはある事実を如実に語っているわけです。それは・・ 結局のところ、「ほんの一瞬しか見ていない」ということなんです。 たまたま私が川に入った瞬間に、目前に現れたものとの出会いでもって、あれこれと妄想を膨らませて楽しんでいるわけですが、彼らからすれば、ほんの一瞬の出来事。たとえばですよ、私がたまたま、本当にたまたま、暑くて暑くてたまらない日の昼下がりに、舌触り抜群の「ふんわりイチゴかき氷」を食べていたところを目撃されて、「あいつの食べ物はふんわりイチゴかき氷なのだ」と思われているようなものです。そのことを常にキモに命じなければなりません。 さておき。 この日は、このところ河床に多く現れる(おそらく)フトスジミミズが、いったい河床に這い出して何をしているのかを考えてみたいと思い、主に行動観察に重きを置いてみました。 ミミズは光を嫌がります。ライトを当てた瞬間、そこから逃げるモードに入ったりもしますので、厳密にはなかなか難しいことではありますが、私の場合、白色ライトの端っこの暗い部分で探しつつ、姿を認めたらさっと赤色ライトに変えて観察するようにしています。赤色ライトは白色ライトに比べ、影響は少なく思えます。 この日もたくさん見ることができました。10匹ぐらいはいたかな? あと忘れないうちに。小さなミミズの死骸が沈んでいました。レース鳩も沈んでいました。そしてホタルが一匹つーっと飛びました。 さて。 これはまた別のミミズ。細くて小さい。 じっくり見ると、やはり口先をもぐもぐ動かして、何か食べ物を探しているように見えるんですよね。 このように頭を石の間に突っ込んでいるものも。 頭を振りながら、口をあらゆる石や壁に吸い付けてはもぐもぐしています。 動きは(おそらく)ヘンイセイミミズに比べると、やや緩慢ですが、ミミズの中ではキビキビ動きます。基本的に平常時は伸ばしては縮み進む、蠕動(ぜんどう)運動。触って刺激を与えたりするとS字にうねるスネークロールもしますが、その後はすぐに力尽きてジッとしてしまうなど、全体的に、(おそらく)ヘンイセイミミズに比べると、水中での動きには慣れていない雰囲気を感じます。 ハッとしたのは、張りたてや張っている最中と思わしき、新しいヒゲナガカワトビケラの捕食網が見られたことです。 中央に穴が開いているこちらのネットは、おそらく幼虫が網を作っている最中だったのではないかと思います。が、カメラを近づけたら奥に引っ込んでしまいました。 ヒゲナガカワトビケラは、捕獲網というフィルターで流れてくる動植物の遺体などを集めて食べるため「フィルターラー」と言われています。 私は昨年の夏、このヒゲナガの捕獲網でむしゃこらと口を動かしている川ミミズを観察したことがあります(その様子は過去ブログ【たぶん食べてる】をご覧ください)。 なので、ヒゲナガの捕獲網は、常に気になっているのです。 例えばこんな感じの姿を見ると、捕獲網をむしゃこらしていたんじゃないの?と期待してしまいます。 こんなのも気になります。 そしてこの日、こんな姿を見ることができたのです。 なんと、作りかけ?のヒゲナガカワトビケラの捕獲網の中に、12㎝ほどの(おそらく)フトスジミミズが潜んでいたのです! これは光を当ててしまったので、頭を引っ込めてしまったのですが、最初の一枚はこんな感じ。 なんとなく網にかかった有機物をむしゃこらしているようには見えませんでしょうか。焦らずすぐに赤色ライトに変えればよかったのですが、この時は思わず白色で観察してしまい、ミミズを少し驚かす結果に。 頭側はこんな感じに時折覗かせていました。 尻尾側はこんな感じ。 うむ、素晴らしい! やはり川ミミズの中にはヒゲナガカワトビケラの捕獲網を活用している奴がいるのではないかな?と妄想を膨らませてくれる観察となりました。 夏場の河床は、基本的にミミズの餌がかなり減るのではないかと思っています。川ミミズの餌を2週間に一度探しにいくのですが、最も多いのは落葉期の晩秋から冬。川虫の量や水温などによっても違うのでしょうが、川の中は陸地に比べて分解が早いようで、4月5月にもなると、川の中で食べごろのリター(腐植)を探すのは難しくなってきます。流されてもしまいますからね。 一方で、土壌表層のリターは6〜8月ごろに、食べごろとなるのではないでしょうか。一年生の表層種のミミズは、それを短期間でもりもり食べ急成長するのではないかと。しかし川(特に二面護岸河川)では、それだけの餌はないのではないかと思うのです。 だとすると、そのような二面護岸河川に残りやすいのは、餌の少ない夏場の河床でも、何らかの方法で餌をとることに長けているやつらなのではないでしょうか。河床で観察できるミミズの種類が偏っているように見えるのは、そんな理由もあるのかな…なんてことも妄想しています。 そしてこの「何らかの方法」とは・・?と考えると、それは例えば、河床を活発に移動して餌のあるところを探し回ることができることだったり、もしかすると、ヒゲナガカワトビケラの捕獲網を利用することだったり…。完全なる妄想ですが…。 いずれにせよ、今はヒゲナガが新しいネットを張り始めている季節のようです。それを利用する川ミミズ、という視点で、しばし観察してみたいと思います。そしてモクモクと膨らむ妄想を楽しむのです! ほんの一瞬しか見ていないことを常に肝に命じながら…。〈若林〉□
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