昨夜、今年公開のドキュメンタリー映画『ミルクの中のイワナ A TROUT in the MILK』の試写会に行ってきました。

イワナとはどのような魚なのか。どのような場所に暮らし、どのように人と関わり、どのような現状にあるのか。そしてどのような思いを人に抱かせてくれる魚なのか。

人と自然はどのように折り合いをつけるべきなのか?

種を守るとは どういうことか?

61分の美しい映像とともに、観るものにさまざまな視点を与えてくれる、素晴らしい作品であると感じました。

監督・プロデューサーは釣り人。

釣り人として「イワナが好き、イワナを大切にしたい」という純粋な願いに端を発し、あらかじめ用意された答えはなく、保全のキーパーソンや利害関係者の話を聞きながら学び、自らが感じたこと、心を動かされたことに正直に、少しずつ、少しずつ思考を繋げていった労作であるとの印象を受けました。

イワナと人との関係、内水面の漁場管理は今、大きな転換期を迎えています。数十年後に「ああ、あの頃が転換期だったね」と振り返るべき時代です。

これまでの慣行からシフトしなければ色々と立ち行かなくなるタイミングであるとともに、道筋を選ぶための科学的知見も、ここ数年で十分に積み重なってきました。

制作陣も語られているように、本作品の内容は、イワナと釣りの話に留まらず、今の社会が抱えている、人と自然との関係における課題も提示しています。

どのような巡り合わせか必然か。これ以上ないほどのタイミングに、この映画は作られ、公開されます。

 

媒体とは、物事に人をコネクトさせるトビラです。

今回、ドキュメント映画という形で、私が仕事とする雑誌や本などの文字媒体とは、大きく異なるトビラが開かれたことを実感しました。まずもって、日本の自然の深さを感じさせる映像美は人を選びませんので、多くの人に楽しんでいただけるに違いありません。

釣り人はもちろん、そして自然保護や生物多様性保全に興味のある人たち、さらにもっと多くの人たち(近しき人に常日頃「なんでこの人、こんなにイワナイワナって言ってるんだろ…」と感じている方々にも)観ていただけることを願います。

 

蛇足ながら個人的な感想をもう一つだけ。

釣りは他でもない趣味であり、娯楽であり、癒しである。では天秤の一方に乗せられるこの分銅の重さは、いったいどのように計られるのだろう。

そんなことも改めて思った次第です。〈若林〉□

 

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