暑いですね。朝方は少し秋めいたふくよかな風を感じたりもしましたが、日中の強烈な陽射しは埼玉南部の本領発揮といったところ。

さて。少し空いてしまいましたが、7月下旬に日々観察をしておりましたものについて、忘れないうちにレポートしておきたいと思います。

それはこちらです。

小型のアオダイショウ。長さはそうですね、50㎝ほどでしたでしょうか。

こんな感じに道ばたの側溝から這い出して休んでいるのかと思い、そろそろ近づきました。

が、動くことはなく息絶えておりました。これはタヌキやカラスが持っていってしまうだろうなーと思いつつ、そのままに。

そしてその二日後に見にいってみると、細やかな土の粒やダンゴムシの殻がアオダイショウの体の横に集まっていました。これは・・彼らの仕事でしょう。

そう。

埋葬蟻の仕事です。

埋葬蟻とは私が勝手にそう呼んでいるだけで、実際の名前はトビイロシワアリというアリなのだそうですが、このように土粒などで大きな獲物を埋葬するように隠し、他者に取られないようにするのだとか・・。

ヤマトタマムシを埋葬する埋葬蟻。

彼らの作品を観察することは私の小さな趣味なのですが・・ここまで大きな獲物の埋葬は初めての観察です。

午後にもう一度来てみますと、せっかく運んだ土粒は風に飛ばされたのかなくなり、アオダイショウの位置も変わっておりました。そして体の中央あたりでは新たに埋葬が始まっていたのです。

その翌日に来てみますと、かなり埋葬が進み、大きな葉っぱも被せられていました。

面白いのは宙に浮いた頭部も埋葬したいのか、その下の地面には土粒や葉、枝、ダンゴムシの死骸などが積み重ねられていたのです。アオダイショウはだいぶ乾燥してカラカラに・・。

この日の午後にはご覧の通り。朝方青かった葉っぱが茶色く変色しています。埋葬はかなり進んだ模様。

よくみると、体のところどころには穴が開けられ、肋骨でしょうか。骨も見えています。埋葬しながら体のお肉をせっせと巣に運んでいるのでしょう。

そしてその夜・・。

驚いたことに、アリの他にダンゴムシやナメクジがたかっていました。日中は見ることのできない世界がそこにはあったのです。埋葬蟻は彼らに取られないように埋葬していたのかもしれませんが、だいぶガジガジやられていました。

それでもアリは懸命に埋葬を続けます。

そして1日あけて翌々日の朝。みてみると、ご覧の通り、尻尾が白骨化して外されていました。夜のうちになにか大きな力を持つ者が来たのかもしれません。ナメクジやダンゴムシによる仕事なのかもしれません。頭の方の埋葬はさらに進んでいました。

体のあちこちで骨が露出してきました。

肉はほとんど食べられているみたい。

面白いのは目玉のなくなった空洞にまで土粒が収められていたこと。一度埋められてまた露出してしまったのかもしれません。

尾部の骨。何がどうやったら、ここまできれいに骨だけになるのでしょうか。

そしてさらにその2日後、骨となった尾部はなくなり、頭部の埋葬がさらに進んでいました。

だいぶ頚骨が露出していますね。

埋葬蟻の建材である土粒やダンゴムシの殻、樹皮や枯れ葉や枯れ枝など、その素材の割合をじっくり調べてみたい衝動に駆られます。今はそこまでの時間がないので老後の楽しみにしたいと思います・・。

そして夜。またしても別の世界を期待して行ってみましたが・・

そこまでの変化はなし。

ダンゴムシは数匹いたかな。雨が降ったりするとまた違うのかもしれませんね。

そしてこれがアオダイショウを観察できた最後の姿となりました。

ちなみにこの夜、観察したアブラゼミの埋葬。これが翌朝には・・

こんな感じの仕事のスピード感です。

そして観察から8日目の朝。残念ながらアオダイショウはいなくなってしまいました。ケモノか鳥が持ち去ったのか。埋葬のための建材はあまり荒らされていませんでした。最後の最後まで見てみたかったので残念ではありますが、結構仕事のようにもなっていたのでややホッとした自分もいました。ともあれ。埋葬蟻の埋葬は8日間続き、解散となったのです。

今気になっているのは、どこまでの大物まで埋葬しようとするのだろう?という点です。ネズミぐらいなら埋葬するのかな? ちなみに「埋葬虫」と呼ばれているモンシデムシは、ネズミを土に埋葬してそこを産室にするのだとか・・。

いやあ。すごいもんですね。

これからはセミ埋葬のシーズン。道ばたにその姿を見かけたら埋葬蟻たちの働きっぷりを、そっと観察してみてくださいね。〈若林〉□

 

【お知らせ】

『ミルクの中のイワナ film book』販売について

川辺の自然観察をまとめた一冊、『武蔵野発 川っぷち生きもの観察記』発売中です!(アマゾンの販売ページはこちら

★RIVER-WALK Vol.1~Vol.3発売中です!★