暑い日が続きますね。いよいよお盆です。

お盆といえば、川ミミズの様相が一気に変化するシーズンだと考えています。おそらくは一年生の表層性フトミミズたちが産卵に向けてそれまでと動きを変えるためだと考えているのですが、果たして・・。

川ミミズ観察のクライマックスシーズンであるこの機会に合わせて、私がこれまで観察してきた川ミミズの這い出し・這い上りパターンについて、簡単にまとめてみたいと思います。

その前にサラッと私的な用語解説を。

「川ミミズ」とは、その名の通り川で見ることのできるミミズのことです。ミミズ全般をそう呼んではおりますが、おそらく私が観察しているのは陸生の大型ミミズに含まれるものたちで、大部分はフトミミズ科の仲間、そして一部ツリミミズ科の仲間が含まれていると考えています。ちなみに川には水の流れている部分のほか、河原や河道など水の流れていないところも含めています。

また、ミミズはとても種を判別することが難しく、私もたくさんの種類がいるだろうことは分かるのですが、おそらくこれだろうと思えるのは数種類しかいません。例を挙げると・・

・ヒトツモンミミズ(腹側にある特徴的な斑紋で判別)

・キクチミミズ(特徴的な黒っぽい縞々の模様で判別)

・ヘンイセイミミズ(太さに比べて長い体型で判別)

・フトスジミミズ(特徴的な縞模様で判別)

・ノラクラミミズ(特徴的な形態で判別)

・シマミミズ(特徴的な縞模様で判別)

・サクラミミズ(特徴的な桜色の体色で判別)

こんなところ。「マッチョ虹色川ミミズ」と呼び、観察初期から親しんでいるヘンイセイミミズについては、大きさにばらつきがありすぎて、複数の種を含めて認識している可能性も大です。

上に挙げたほか、いくつかのミミズには独自の名前を与えて呼んでいます。その場合は「」をつけています。

・「クリームオヨギデカミミズ」

・「オレンジハチマキミミズ」

・「マッチョ虹色川ミミズ(小)」

といった具合です。

さて。では以下にこの4、5年ほどで私が観察してきた川ミミズの這い出し・這い上り行動のパターンをまとめてみます。複数の川で観察しているので河川A〜Dと書き分けています。A、B、Cは浅く左右が護岸されている、いわゆる二面護岸河川です。川の規模はA<B≒Cといった感じです。いずれも川ミミズの他にはドジョウ、サワガニ、モクズガニ、川エビ、トビケラ幼虫、カゲロウ幼虫、ヒル、ウズムシ、ヒラタドロムシ幼虫などが棲んでいます。BとCにはコイやフナ、カワムツもいます。観察は基本的には夜ですが、河川Cの一部と河川Dは薄暗い日中です。

川ミミズ這い出しパターン①季節的な傾向を感じた這い出し

ヘンイセイミミズ?(写真上)は河川Aで2〜3月に集中して河床這い出しと護岸這い上りを観察した。特に降雨時に這い出しは多くなった。成体と成長した幼体ともに見られた。6〜8月は河床の砂礫下に成体や成長した幼体が見られるが、河床這い出しは1例しか観察していない。

サクラミミズ(写真上)は河川Aで2〜3月に少数河床這い出しを観察した。

大型の「クリームオヨギデカミミズ」(写真上)は河川Bで3〜6月に河床這い出しと護岸這い上りを観察した。主に5月。成体と成長した幼体だった。

 

「マッチョ虹色川ミミズ(小)」(写真上)は河川Cで7月に這い出しをたびたび観察した。

ヒトツモンミミズ(写真上)は河川Aで7月中〜下旬に集中して河床這い出しを観察した(8月にも土壌中で観察)。主に成体だった。河川Aでは6月初旬から7月に護岸這い上りを観察した。8月下旬にはほぼ見られなくなった(土壌中で一部観察)。

フトスジミミズ(写真上)は河川Aでヒトツモンミミズよりも幅広く7月を中心に河床這い出しが見られた。主に成体だった。河川Bでは6月に護岸這い上りも観察した。

 

川ミミズ這い出しパターン②氾濫冠水時の木登りと這い出し

6月初旬の集中豪雨による河川Dの氾濫冠水した河道で木に上るヘンイセイミミズらしきもの(写真上)などフトミミズを多数観察した。また、木の根元にも多数のフトミミズを観察した。

6月初旬の集中豪雨による河川Dの氾濫冠水した河道で大型のノラクラミミズ(写真上)が多数這い出し、カラスなのか捕食者に食い荒らされている姿を観察した。

(写真上)7、8月の降雨時に桜などの木に上るミミズを複数種観察した。

 

川ミミズ這い出しパターン③大群の護岸這い上り

キクチミミズ(写真上)は河川Bで5月下旬と6月下旬に濡れた護岸で集団這い上りを観察した。100個体は超えていたように思う。主に成体と成長した幼体だった。交接も見られた。※ちなみに6月19日に大阪で木登り行動が観察されている(南谷・辻井2013)。

ざっとこんなところでしょうか。

彼らはいったい何のために土から這い出し、身を晒して移動するような行動を取るのでしょうか?

私的には、パターン①とパターン③は主に十分に成長した個体が分散する本能に基づいた行動(好適な産卵場所への移動?)、パターン②は主に河川氾濫に対する逃避行動。かなあ・・と考えています。

面白いのは這い出してくる時期です。同じ川でも季節によって種類が違うんですね。特にヘンイセイミミズの場合、夏場にも成体はいるのですが、這い出した姿を見たことはこれまで1度しかありません(それも流されている状態)。いるのに出てこない時期がある、というのは面白いなあと思っています。そこに這い出しの謎を解くヒントがあるのではないかと。

とりあえずのまとめでした。〈若林〉□

 

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