すっかり寒くなりました。キーパンチをする指先が冷たくなってしまうぐらい。今日はじめて、事務所にて暖房を入れました。

週末も怪しげな空模様だったのですが、山梨県の奈良子釣りセンターへ遊びに行ってまいりました。

 

今回は総勢9名で釣り+バーベキューセットを予約していったのですが、雨もさほど降らず、バーベキューはボリューム満点。ニジマスの塩焼きと塩レモン乗せホイル包みとバジルたっぷりソテーと燻製をいただき、ニジマスのもつ食材としての実力を改めて実感した次第です。ニジマスって優しいんだよな、うん、優しいんだ・・。

9名のうち1名は2歳(なりたて)男児だったのですが、彼がお母さんにサポートされながらも一匹目のニジマスを釣りあげた瞬間にキラリと光る眼を見逃しはしませんでした。プリミティヴな興奮に光った眼を。うん、よい眼をしていた。

全員が釣ることもできて、大満足の一日でした。

奈良子釣りセンターは、とても好きな管理釣り場で、毎回行くたびにその思いを強くするのですが、今回も新たな魅力を発見できた気がします。今年の台風5号で大打撃を受けてしまい、いまだ復興のめどは立たず・・な状況であるようですが、ニジマス釣りやバーベキューは完全に通常営業。これからは紅葉も楽しめるシーズンですから、よい休日が過ごせることと思います。

奈良子については、また改めてブログに綴りたいと思います。

 

で、今回はこちらについて。

右『私の釣魚大全』は、開高健が最も最初に出した釣り本の文庫版。ハードカバーの発行が1970年ですから、いまから45年以上も前ですね。日本各地の「釣り名人」を訪ねるルポ的な文章となっていて、ここで開高さんは数々のオーパ(驚き)に出会い、釣りや釣り人の持つ酔狂な魅力に取りつかれていったのではないかと思います。その後に続く『フィッシュ・オン』は世界各国を釣り巡った記録であり、そこからさらに有名な『オーパ!』へと繋がっていきます。左『河は眠らない』は『オーパ!』や『オーパ、オーパ!』などで各国を釣り巡り、いわば釣り師として経験豊富なベテラン域に達した開高健がアラスカでキングサーモンに挑戦した様子を収録したDVD(発売の1984年当時はVHS)。

つまりこれらは開高健の釣りにおける最初と最後の作品、とも言ってもよいのではないでしょうか。

で、今回は、釣りをしながらこの初期作品である『私の釣魚大全』の読書会をしよう、という試みであったわけです。

本好きの仲間が集い、同じときに同じ釣りの本を読んで持ち寄る。

これだけで新鮮な感覚がありました。心が動かされる感覚。

 

いろいろな感想がありました。今回はあまり普段釣りをしない人の割合が多かったので、感想を楽しみにしていたのですが、とっても乱暴にまとめてしまうと、つまるところ・・。

「釣り人ってヘンタイよね」

だったような気がします(乱暴!)。

 

無理もなく。

『私の釣魚大全』は、まだリール竿のキャスティングもままならない釣り初心者の開高健が、各地名うての釣り名人を取材した記録でありまして。私のような釣り人から見ても、常軌を逸した名人芸やこだわり、ひとことで言えば「酔狂」をこれでもかと拾い上げ、一流のユーモアあふれる誇張表現でまとめあげており、これを釣りをあまり知らない人が見たら、基本的に釣りはそれ自体が「酔狂」であるからして、それに名人たちの、より濃度の高い「酔狂」が二乗されているわけですから。

結果としては・・・

「ヘンタイ」。

ということになるわけです。

 

ただ、この「ヘンタイ」って言われようが、釣り人にとってはそんなに悪くないんですよね、へへへ(笑)。いや、少なくても私にはほめ言葉のようにすら感じました。「世間とのズレ」とも言えそうですが、釣技とか釣りへの理解って、世の中との間で培っていくわけではなく、あくまでも世間とは関係のない、自分と魚との間で育まれていくものですから・・。それがひとたび世間という白日の下にさらされれば、当然「ヘンタイ」となるわけで・・・。

開高健自体はその後、釣りに対する驚きを、どちらかと言えば海外や怪魚にどんどん求めて行ったように思えます。もっとわかりやすいアイコン的な驚きを万人にわかりやすく表現していくスタイル、とも言えましょうか。

開高さんがいまもなおご存命だとすると、今年で87歳。

世界を巡って鮮やかな釣りをたくさん体験して、目指した魚をことごとく手中に収めた老釣り師が綴ったかもしれない、平凡なそこらへんの釣り(たとえば近所の川にある小さな水門で毎日ウキを見つめては数匹の小ブナを釣っているおじさんの釣り)の酔狂を、読んでみたかった。

・・なあんてことを改めて思った、秋の川辺の読書会でした。〈若林〉□

 

RIVER-WALK First Issue 好評発売中☆