今日も肌を撫でる風。

本当に毎年、大型連休前後の気候は気持ちよいものですね。

さて。

先日もブログに書かせていただきましたが、今年も北上川水系の追波川に、サクラマスを狙いに行ってきました。

私がこの川で釣りをするのは今年で5年目。

初年度は2月と3月に一回ずつ釣りに行きまして、幸運にも2回目の釣行で人生初のサクラマスをキャッチすることができました。

でもそれ以降は3年間、釣ることはできず。

でも実に、サクラマスはこんな魚です。

それでも毎年、春になると北上川に足を運んでいるのは、やっぱりこの川のサクラマスに会いたいことがまずひとつ。そしてもうひとつは、この川のサクラマスが大好きな人たちと思いを共有したいががため、と言えるでしょう。

毎年、お世話になっているのは、この人。

弱冠、10歳でサクラマスの釣りをはじめ、出会えるまでに7年、それから17年間、毎年この川のサクラマスを手にしている釣り人の佐藤文紀さんです。

佐藤さんといえば、いま大人気のロックフィッシュゲーム(ハタ、ソイ、アイナメなどの釣り)を牽引する、その道の第一人者。2011年にプロズワンというブランドを立ち上げ、この釣りの魅力を伝え続けているパイオニアです。

お仕事ではロックフィッシュひとすじの彼ですが、プライベートではサケマス類の釣りが大好きで、こと追波川・旧北上川の、春のサクラマス釣りに関しては、エキスパートとも言える腕前。

毎年、シーズンはじめに早々、釣ってしまうことが多いように思えるのですが、今年はロックフィッシュブームのさなか忙しく、しっかり竿を振るのは私と釣り場に立った日で2日目。まだサクラマスも手にしてはいませんでした。

先ほど私は〝幸運にも〟と、サクラマスが初年度に釣れた理由を述べましたが、実を言うと、それは経験に裏づけされた〝読み〟の上にちょこんと乗っかった〝ラッキー〟という感覚です。もちろん幸運だけでも釣れる人には釣れると思いますが、佐藤さんとその仲間たちのサクラマス釣りは、幸運への寄っかかりをどこまでも少なくしていこうという、組み立ての釣りと言えるでしょう。

そして今年も、私はその読みの上にちょこんと乗っかったラッキーを得ることによって、サクラマスを手にすることができました。

毎年、サクラマスを手にしている佐藤さんも、今年はまだゼロ。

経験に裏打ちされた読みをもってしても、釣り場に立たなければサクラマスは釣れませんし、いくら釣り場に立って竿を振り続けても、ちょこんと乗っかるラッキーが得られなければ、釣れないのもまた、このサクラマス釣り。

佐藤さんの仲間のひとりであるKさんは、昨年はサクラマスを手にすることができませんでした。今年もすでに20日通い、まだ一匹も釣っていないとのこと。それでも、久々に再会すると、とてもうれしそうにお手製のランディングネットを見せてくれました。

檜を手曲げして作ったそれは、やや歪み、専門店で入手したという花梨材のグリップは渓流用のとても短いものでした。

「かなりショートグリップになっちゃいましたけど、そのぶん、枠が長いのでバランスは取れているかと(笑)」

ネットは自分の好みの色に染色してあり、そして自分で描いたサクラマスの絵から作ったステッカーをグリップに貼りつけてありました。サクラマスへの気持ちがとてもこもったランディングネット。このネットにおさまるサクラマスをぜひ見たいと思いました。

一緒に竿を振った初日、とうとうKさんに待望のサクラマス、しかもかなりのサイズがヒットしました。ところがお手製ランディングネットに手を伸ばす間もなく、根に潜られてしまいフックアウト……。しばし呆然の後、また竿を振り続けましたが、二度目の幸運は訪れず、隣で竿を振っていたSさんが、実に4年振となる生涯2匹目のサクラマスを釣り上げるのを見ると、そのまま我々よりも一足先に帰っていきました。

私にサクラマスが釣れたのは、それから1時間ぐらい経った後のこと。4年前の一匹目と同様、佐藤さんにランディングをしてもらいました。

佐藤さん、そして佐藤さんの先輩である大ベテランのOさんと固い握手を交わし、幸せなひとときに酔いしれました。Oさんもまた、今年はまだ一匹も手にしていないとのこと。

そして私はメールで、ふたりの友人にサクラマスを手にしたとの報告を入れました。

昨年、一緒に竿を振り、今年も一緒に・・と予定していたものの、どうしても予定がつかずに断念にしたふたり。まだふたりとも、サクラマスを手にしたことはありません。それでも昨年は佐藤さんが釣りあげた見事な一匹を、皆で自分が釣った魚のように喜びました。今回も喜びつつ、悔しがりつつ、そんな気持ちが戻ってきたメールの文面から読み取ることができました。

翌日は、佐藤さんが今年一匹目となる、そして17年連続となるサクラマスを手にしました。

朝方の読みが外れ、次にどう動くのか・・というタイミングで前述のOさんが上流部のゲートオープンを水の具合で察知し、それに佐藤さんが応じて読んだ末に手にした一匹。

ラッキーとは言い難い一匹。でもラッキーもなければ手にはできない一匹。

 

そして埼玉に戻った翌日、佐藤さんからメールが入りました。

Oさん、そしてKさんも今年初のサクラマスを手にすることができたとのこと。

お手製のランディングネットにおさまったサクラマス。

その格別の思いたるやいかに。

ああ、またこの魚に会いたいな。

この魚への思いを共有したいな。

本日、肌を撫でる風にしばし吹かれた午後ですが……

サクラマス、冷めやらず。〈若林〉□

 

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