台風が温帯低気圧に変わりました。

湿った空がとても鮮やかな夕焼けでした。

そして振り返るとおぼろ月。

このところぼんやりと考えていたことがあります。

それは、なぜに自分は、こんなに鮭やら鱒やら、それらが生きる森やら川やらが好きなんだろう・・ということです。

イワナやヤマメなど、渓流魚を見れば、それらはとてもきれいですし、棲んでいる川の水も清らか。川の流れる森の緑も心地よく、見た目もさることながらヒンヤリとした空気の肌感も、甘い季節の香りも、それはそれはとても心地のよいものですから、そりゃ好きですよ・・といったところ。私でなくても「きれいだな」とか「心地よいな」と感じる人は多いと思います。

でもそれだけじゃちょっと説明がつかない好きな感じもありまして・・。

たとえば1カ月前に泊まった福島県の桧枝岐で、宿の夕食時にこんなものに出会った瞬間。

イワナの骨酒用の徳利と言いますか、焼き枯らしたイワナを寝かせて熱燗を注ぎ骨酒をつくるための器です。

ううむ・・素晴らしい。その造形もさることながら、最も心を惹かれたのは、イワナの骨酒をイワナの器で注ごうという心意気、とでもいいましょうか? 

これを最初に考えた人は、よっぽどイワナの骨酒が好きだったんだろうなー・・と。

宿の玄関にもありました。これも素晴らしい。そして段ボールに描かれたイラストも・・。お腹が赤いところとか最高です。

あまりに好きすぎてその時同行していた方に「欲しいなー欲しいなー」としつこく言っていたところ、つい先日、再訪した宿で、なんと・・・。

そのときに「欲しい欲しい」としつこく聞かされていた(?)同行者の方に、プレゼントしていただきました!

45歳を過ぎたオトナとして、ちょっぴり(いや結構)恥ずかしくもありましたが、素直にとてもうれしかったです。なにせこの日もコイツを手に入れようと置いてあると聞かされた商店に乗り込むも売り切れという憂き目にあっていた直後でしたから・・。そのぶん恥ずかしく、そしてうれしい頂き物でした。

そう、実際の魚だけじゃなく、その魚をモチーフにした作り物もまた大好きなんです。

特に手作り。人が時間をかけて作ったもの。

これも好き。

これも好き。

これも好き・・。

なんと言いますか、それが本物に似てるとか似ていないとか、そういった部分じゃないんですね。作者の方がそこにかけた時間が好き、と言いますか。「作ってみよう」と考えた時間とか実際に手を動かして作っている時間とかが浮かび上がってくるような作品が好きなんです。

帰りに短時間釣りをした、桧枝岐の渓流はとても美しかったです。

大好きなカツラの巨木。

そして一匹だけ釣れた躍動感溢れるイワナも、とても好ましいものでした。ああ・・やっぱり川を歩く時間はいいな、イワナはいいな・・と思わせてくれる一匹でした。

でも、それと同じぐらい木彫りになったイワナとか、美しい写真に納められたヤマメとかも好き。さらには命を奪われた末に、ていねいにさばかれ串を打たれた魚も、じっくりと焼き枯らされて熱燗に浸けられた魚もまた好きであると・・。節操のない好き加減。

ところで、今回なぜこんなことを書こうと思ったかと言いますと、同行したカメラマンさんが、ただいまVol.2まで世に送ることができている渓流釣りの本『RIVER-WALK』について、こんなことを言ってくれたからなんです。

「リバーウォークって、釣りとか自然とか魚そのものってよりも、自然とか魚が好きな人自体が浮かび上がってくるような気がするんですよねー」と。

結構飲んでました。ちゃんぽんもしてました。なので違った解釈をしてしまったかもしれませんが、そう受け止めた私は、なるほどな・・と焦点の定まらぬ目のまま考えたのです。

集めて編んで多くの人に見てもらいたかったのは、結局のところ「イワナやヤマメが(それらの棲む自然が)好きなのである」という人の気持ちなのかもしれないなと。イワナやヤマメや川や森そのものも好きだけど、「それが好き」という人の気持ちに浸ることが好きなのかもしれないなと。

この腹の筋肉のすじがたまんないんだよなぁ・・という、やや変質的?な趣味もありますが・・。

そんな「好き」を集めた本を今年も一冊、出していけたら・・と思っています。〈若林〉□

 

☆RIVER-WALK First Issue、Vol.2発売中☆