台風24号とともに、渓流釣りの今シーズンが去ってゆきました。 本当にアッと言う前に・・。 今年はここ数年のうちでは最も釣りにいけませんでした。奥秩父の年券も、もちろん元を取れず(これは毎年のことですが・・)。 8月末に行ったのを最後に、このまま終了かなーと諦めていたのですが、ひょんなことから山梨県の勝沼方面で短時間の撮影が入り、そのついでに近くの川で、ほんの数時間だけ、今シーズン最後の渓流釣りをすることができました。 川はやや増水気味。それでも気持ちいいことには変わりなく、「ああ、やっぱり川はよいなー」と心洗われつつルアーロッドを振り始めたのですが・・。 1カ月も釣りをしていなかったので、思うようにルアーを狙った場所に投げることができません。ゴロゴロの石を歩くだけですぐに息が上がってしまい、川を渉れば苔で滑って転びそうになるしまつ。まるで解禁して初めての釣りみたい。 解禁直後って身体が川歩きに慣れていませんから、足場の悪い沢を怪我しないように恐る恐る歩くぐらいが精いっぱい。でもなにせ、解禁直後ですから。「次回、次々回と少しずつ川に慣れていけばいいさ」ぐらいなゆとりのある気持ちで、なによりも川に浸っている時間を楽しむことができるものです。 ですが、この日は今シーズンの最終日。次は5カ月も先ですから、いわば後がないわけです。 それでもたとえば友人と一緒の釣りだったなら、まあ釣れなくてもいいや・・なんてゆったりとした気持ちになって、川歩きを楽しめたりもするのですが、この日は違いました。 釣りたい。そしてイワナを触りたい。 そんな気持ちが先だって、なんだかそわそわと焦りにも似た気持ちで竿を振りつづけました。 釣れない・・。 いや、別にそんなにたくさん釣れなくたっていいんです。 普段の釣りだって、2匹ぐらい釣れば、結構満足して、川歩き自体を楽しめるのが常なのですが、久しぶりの最後の釣りは、そんないつまで経ってもそんな気持ちにはさせてくれませんでした。 釣りたい。つるりとしたイワナのお腹に触りたい・・。 雨上がりの渓には、美味しそうなキノコがにょきにょきと生えていました。 美味しそう・・。 サワグルミの若木が夏の台風に倒されてました。 シカの水場で一休み。 ブナとミズナラは実をつけてましたが、ともに去年よりも不作で小さい?印象。 そしてぺろりと5時間も釣りをしてしまい、もうそろそろ川を退かねばならない時間に。 釣りたい。イワナの目にカメラのピントを合わせたい・・。 鮮やかなヤママユを見つけました。 やった。ほぐしてスレッドにしよう・・。 (・・・と、そのときは思って喜んでいたのですが、これヤママユではなくウスタビガというヤママユガ科の蛾の繭だろうというご指摘をいただきました。糸をつむぐのは難しいのだそう。確かに堅い。残念だけど、一応試してみます・・)
そんなことをしているうちに、もうおしまいの時間です。残り5投!と決めて最後のポイントに挑みます。 釣り雑誌の編集&ライターという仕事柄、これまで多くの釣り人の釣りを見てきておりますが、実際に上手い人って、なかなか釣れない日に限って、最後の5分とか、最後の1投とかで、いい魚を釣ったりするんですよねー。 いわばドラマチックなラストを飾ってくれるんです。 でもそれは偶然でもなんでもなく、ちゃんとした理由がありまして。 たいてい最後の瞬間って日が暮れる寸前の夕方で、その時間はそもそも魚の活性が高く釣りやすいんです。 加えて一日中ルアーを投げ続けていますから、それが練習にもなって、ルアーを投げ入れる精度が高くなっているということもあります。 そこにラストスパートの集中力が加わって、見事にドラマ成立!・・となるわけです。 この日の私の場合、最初の2投で何も起こりませんでした。職業柄の悪癖ですね。心の中ではドラマチックなラストをカタカタとタイピングしています。「何事もなく過ぎた一日。・・・が、最後の最後にドラマが・・・!!」みたいな。 で、この日私の場合、次の1投で木にルアーを引っかけました。もうぐるぐるに。 コホンとひとつ咳払いをして、無言のまま、そろりそろりとポイントを荒らさないように、ルアーを木の枝から外します。 さあ、残り2投。頭の中では職業柄な悪癖が発動。「それは実に、ラスト2投目の出来事だった。投げ込まれた5㎝のシンキングミノーが流れを横切ったその瞬間・・!!」みたいな。 ぽちゃん、クルクル。何もなし。 そしてルアーをボックスに納め、ごく自然に、極めて平坦に、2018年の渓流釣りを終えたのでした。 なぜだか最後の1投はしませんでした。
そうそう、今年の夏、この川の支流で、生まれて初めてツキノワグマに遭遇したのでした。 周囲が靄立ち、雨にも降られ、退渓して車に戻ってきたとき、ちょうど車の向こう、距離にして10mほど。ほぼ目の前の山桜の木立から、真黒い塊がドスンと落ちてきて、そのまま渓底へと転がっていったのでした。 こっちに向かってきても、何もすることはできなかったはず。おそらくは木を駆け下りてきたのだと思います。自由落下よりも速く。 薄暗いなか、その日は同行者ともども、たまたまクマ鈴を下げていませんでした。 そして、久しぶりの最終日となったこの日は釣りを辞めるちょっと前の時間に、自分の真横2mほどの所に、真上から大きな黒い塊がドスンッと落ちてきたのです。 台風で折れかけた巨大な枝でした。 自身の重さにこらえきれずに落ちてしまったのだと思います。直撃したら、おそらくただでは済まなかっただろう幸運でした。興味深かったのは、横目に感じた大きな枝が落ちる影とドスンッという音から、一瞬でツキノワグマだ!と認識(誤認)をした自分でした。 心臓が止まることはありませんでしたが、心臓まわりの普段はほとんど使っていないであろう筋肉が、あまりの驚きにひきつって、筋肉痛になりました。ああ、びっくりした・・。 皆さんはよい思い出ができましたでしょうか? 来年もまた、楽しく川で釣りができますように。
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ご無沙汰です、大血川釣場の愚息でございます。シーズン締めと山繭拾い拝見しました(毛鉤作りにももってこいですよ、羨ましい限りです)。
釣り人はもう竿をたたむ季節ですが、秋の川、冬の川と、よく目を凝らすと粋な世界が広がってたりします。そしてほんのちょっぴり、そこには侘しさがある。
台風も時代と共にスケールが増してきた感がありますが、それでもまた元の川へと戻っていく自然の営みがそこにあります。(「不易と流行」は、たしか芭蕉でしたか)
R.Y
読んでいただき、ありがとうございます!
秋の川、冬の川もよいですよね。私も11月の落葉の時期が大好きです。カツラの落ち葉の匂いとか。
不易流行、深い言葉ですねー(ネットで調べて、うなずきました)。
また御うどん、食べに行きます!