一年ほど前から日本自然保護協会の会報誌『自然保護』の特集ページ編集のお仕事をさせていただいております。

釣りの本作りとは異なり、不慣れな分野の取材や執筆になりますが、そこは生きもの好き。毎回、本やネットを読み漁っての勉強から始まる編集作業は大変ですが、楽しんでやらせていただいています。

で、最新号となるVol.568(←すごい号数です!)の3・4月号の特集タイトルは「遺伝子から見えてくる自然の不思議」でした。

「遺伝的多様性」についてまとめた特集となりますが、これがまた難しい…。

ざっくり言いますと「種が同じなら皆同じ……ではない」ということ。

たとえひとつの「種」だとしても、その歴史を紐解けば、地域ごとにかなりオリジナルな個性を持った集団や個体が存在する……ということが少しずつわかってきているんですね。

その「歴史」を紐解く重要なカギこそが「遺伝子」であると。

概念だけ伝えようとすると、すぐにわかりづらくなる「遺伝的多様性」ですが、今回はいくつかの実例を専門家の先生方にお聞きしてまとめさせていただきました。

こちら特集のトビラ。そう、実例のひとつはイワナなのです。

話をお聞きしたのは、奥日光にある中央水産研究所内水面研究センターの山本祥一郎先生。サケ科魚類の系統分類や集団遺伝学研究の第一人者です。

当研究所は、中禅寺湖などに釣りに行かれる方にはおなじみの「さかなと森の観察園」に併設されておりまして、実は私も学生時代(もう25年ぐらい前の話ですが…)に大変お世話になったところです。

詳しい内容はここでは控えますが、日本産イワナの分布図(『RIVER-WALK First Issue』でロングインタビューをさせていただいたイワナ研究の第一人者である森田健太郎さんの作図最新版です! ※トビラのイワナ写真も森田さん撮影のもの)も掲載。

主に体色の違いで分けられているイワナの「亜種」を、遺伝子で見たらどうなるのだろう……?という山本先生の研究結果をはじめ、これからの渓流魚保全のあるべき姿なども含め、イワナの遺伝的多様性についてのトピックをわかりやすく紹介しています。

ほか、ツキノワグマなど野生動物の遺伝的多様性について大西尚樹先生に、また遺伝子の不思議や遺伝的多様性を守る必要性について奥山雄大先生にお聞きして、記事作りをしています。また辺野古のアオサンゴの実例や、生物多様性条約の締約国会議などのレポートもあります。

ページ数は限られていますから、そのなかでなるべくわかりやすく説明しようと取捨選択してまとめた結果、実例をともなって「遺伝的多様性」の理解を深めることのできる入門記事になったのではないかと思います。

基本的には会員の方々に配られる会報誌となりますが、一般販売も行っています(1,300円+送料200円でご購入いただけます)。購読をご希望の方は、代表電話(03-3553-4101)もしくはEメール(nature@nacsj.or.jp)までご連絡ください。ご興味のある方はぜひ!
 
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〈若林〉□