昨日はパタゴニア東京・渋谷にて行われた「ARTIFISHAL(アーティフィッシャル)」という映画の試写会に行って参りました。

製作責任者はパタゴニアのイヴォン・シュイナード代表。

タイトルの「ARTIFISHAL」は「ARTIFICAL(人工)」と「FISH(魚)」をかけた造語とのこと。

内容は、簡潔に言えば、ふ化場育ちの放流魚が元々そこに棲む野生魚に影響を与えているという警告です。

話は主にキングサーモンについて、「影響」とは野生魚の小型化や生息数の減少。

映画の内容を追うことはここでは鮭鱒‥いや避けますが、私が感じたことについて少しだけ。

まず最も自分の中で強く感じたのは、ふ化場育ちの放流魚が野生魚に悪影響を与えているという「事実」についてのエビデンス‥というか科学的な研究事例をもっともっと紹介してほしかったな・・ということでした。具体的に数例は挙げられていましたが、全体の割合としては、薄かったように感じます。このような映画の場合、そんなこと言ってたらそれで尺を使いきってしまうでしょうし、ですからあくまでも私個人の印象として。

また映像では、ふ化場による放流事業を否定的に見ているためか、採卵・採精するためのサーモンを棒で撲殺するシーンや、腹をかっさばくシーンなどが暗いトーンの音楽とともに流れ、生命の尊厳を損なう行為であるかのような演出がなされます。演出の本当の意図はわかりませんが、私にはそのように感じました。そのトーンが結構、強めだったなという印象をもちました。魚を棍棒で撲殺するについては、私自身どちらかというと慣れている類なほうですので、そのようなことに慣れていない方の目には、さらにもう少し強烈に映るかもしれません。

私が特に強く感じたのはこの2点。そしてこの2点は私を少しそわそわとさせました。

誤解を怖れつつ(そして私が誤解しているかもしれないことも怖れつつ)言ってしまうと、理解が追い付かないうちに「これこれこういう理由でダメなんですよ」と結論付けられてしまっている感じ。

どうやら私は、そのようなことに極度の怖れを抱いているのです。

映画で訴えたい主旨とは無関係に、手法に対しての怖れです。

 

一方、訴えたい主旨に関しては、私個人としては「うん、そうなるとよいな!」と賛同したいものでした。

主に北海道のシロザケやカラフトマスについても、主に北海道を除く地域の渓流魚についても。

ただ、利権やら政治やら、それらを脇に置いたとしても、もう少し我々人間側は譲歩しなければならないとは思います。

試写会の後に、フィッシングジャーナリストの佐藤成史さんが進行役を務め、この映画を受けて「では日本には(おもに管轄漁協のある渓流釣りにおいて)どのような問題があるのだろう?」というテーマのディスカッションが行われました。

そのなかで、然別湖のミヤベイワナについて遊漁管理の研究をされた芳山 拓さんが「釣り人が一日に満足を得られる釣果は平均10~15匹」というアンケート結果を言われてました。

どうですか? 10~15匹。

私は結構多いなーと思いました(ちなみに然別湖では、釣り人が満足する釣果を得られるだけのキャパがあるとのこと)。

ちなみに私は告白しますと、渓流で一日にイワナやヤマメなら2匹釣れば満足できてしまいます(少なっ!)

1匹だと物足りないけど、まあいいか。0匹だと不満。釣行回数は月に平均1度でそれですよ!

何この体質?

何も聖者のように自分を言いたいわけではなく、かといって枯れきった人間だと人に思われるのもいやなのですが‥。

でも、俯瞰してみると、そこに糸口があるのではないかと、自分を一個体のサンプルとして、その理由をアレコレと考えているのです。

 

とまあ、パタゴニアの映画のことを書くつもりが、自分が自分が‥になってしまいました。

そこに限定しないと、話はどこまでも膨らんでしまいそうで‥。

それだけの「問題提起」としての力を持った作品だとも思います。

 

今後、全国のパタゴニア店舗でフィルムツアーが行われるとのこと。

https://www.patagonia.jp/artifishal.html

機会あらば、ぜひご覧になってみてください。□〈若林〉