今日は曇り空の朝。

昨日は時間を取ることができず、ひさびさに水生ミミズを観察することができませんでしたから‥。今日は意気込んで少しだけ上流へ。

出会いたいのは美しきレインボーきらめく「マッチョ虹色水生ミミズ」です。

(※このところずっとですが、本日もミミズの画像が多数登場いたします・・)

 

いろいろな所を掘っていますと、なんとなくそれぞれのミミズの違いやいる場所の傾向なんかが見えてくるんですね。

たとえば流れの速さで言えば・・

【流れが速い所にいる水生ミミズ】

・マッチョ虹色水生ミミズ(マッチョ虹色)

・くるんくるん水生ミミズ(クルクル)

・オレンジハチマキ水生ミミズ(オレハチ)

【流れが緩い所にいる水生ミミズ】

・富山ブラック水生シマミミズ(富山ブラック)

良く出てくるメンツとしては、こんな感じ。

ただ、これが絶対的にこのように分かれている・・というわけではなく、いる場所はたがいに重なっています。つまり、流れが緩やかな所にいるマッチョやオレハチもいれば、流れが速めな所にいる富山ブラックもいる、というわけです。

ですが、何と言いますか‥マッチョ虹色と富山ブラックに関しては、それぞれ持ち場中の持ち場と言いますか、例えばマッチョ虹色ならば、流れが速い所にいるやつほど、マッチョ虹色らしくムチムチとマッチョでビカビカと虹色に輝いているのではないか‥という印象があります。一方、富山ブラックなら、流れが緩い所にいるやつほど富山ブラックらしく黒さが際立っている気がします。

イワナやヤマメなどとても美しい渓流魚は、しばしば「水や岩が魚の色を磨く」というような表現をされます。渓流釣りの本『RIVER-WALK』の佐藤成史さんの寄稿エッセイは、美しい写真と情緒あふれる文章が、そのことを印象深く表現しています。渓流魚の場合、透き通った冷たい水の流れと、その場所に差す光や岩の色が、体色を磨きあげ、その川特有の美しさを作り上げているのでしょう。

近頃の私は「水生ミミズも同じなのではないだろうか?」と考えています。

つまり、ミミズは水に磨かれるのです。

 

さて。前置きが長くなりましたが、本日まず掘ってみたのはこんな所。

開けた環境。トロ場からチャラ瀬に移行するトロ尻。流れは結構きいています。

近くには小石と砂の混合地に生えるタマガヤツリもあります。シジミとの相性がいい草ですが、水生ミミズとの相性もよいように思います。

こんな感じにガシガシと掘っている・・ように見えて、実はそれほど強く掘ってはおりません。実はこれ、産卵時のサケマスやニゴイに教わった掘り方なのですが、掘るというよりも、あおいで水流をあてる感じ。こうすることで、ガシガシ掘ってしまうよりもソフトに底質を崩すように掘り進めることができるのです。なぜこのようなことをしているか、それこそ重機(スコップ)を用いていないのか・・と言いますと、水生ミミズは小石と砂の合間に棲んでいるのですが、騒がせてしまうと素早く横移動で逃げてしまうような気がしているんです。一番いいのはカラスに学んだようにひとつずつ小石をのけていく方法ですが、それではさすがにミミズを掘って一日が終わってしまいますので、サケマスやニゴイに教わった方法を採用しているというわけです。

さて。ハウツーコラムを挟みこんだところで、さっそく出てきた水生ミミズを紹介しましょう。

はい。「くるんくるん水生ミミズ」です。このミミズは細くて長く、くるんくるんしていて、運動能力は長けていない(筋力は乏しい?)ように思えるのですが、なぜか水生ミミズの中では、かなり流れの速い所にいるタイプです。マッチョ虹色との相性もバツグンです。このミミズがいたら、マッチョ虹色と出会えるチャンスというわけです。

底質は砂利や小石のまじった砂地。通常、この上に、さらに直径2㎝前後の小石が敷き詰めてあります。そして黒川虫(ヒゲナガカワトビケラ)が張った網などによって、小石はやや互いにくっついてマット状になっている所が良い気がしております。

これは流れて下流の小石の間に挟まったクルクル。写真中央やや右上にあるのが黒川虫がエサを捕るための網、ではないでしょうか。

黒川虫です。さらに流れの速い所にもいます。そうなると黒川虫ばかりになって水生ミミズは減っていくような気がしています。

逆にさらに流れが緩い所を掘ると、ガガンボの幼虫が出てきます。水生ミミズとも混棲しますが、マッチョ虹色を探すなら、ガガンボが出てこないぐらいの流れを探したいところ‥。

そして・・もし出てきてもそのまま流されてしまうぐらいの速い流れの中で・・

おったー!!

10㎝ほどと小型ではありましたが、これは「マッチョ虹色水生ミミズ」と言ってもいいと思います。やっぱり開けた瀬の流れの中にいました! 速い流れの中で磨かれたレインボーが輝いております‥。

虹色の色彩を放っているのがわかります。そして全体的に赤っぽく縞模様が目立たないのも特徴。環帯がありましたので、これでもオトナですが、ミミズって成熟してからもさらに大きくなるのでしょうか・・。個人的にはもうちょい育ってムチムチになってほしい。

元気に育ってムチムチのビカビカになっておくれー!

満足をして、次に掘ったのはこんな場所。

左手はちょっとした流れのある淵。右手はその淵から駆け上がった浅瀬です。流れは奥から手前に向けてありますが、浅瀬はそこまで洗われてはおりません。先ほどの開けた瀬頭に比べると緩やかですが、淵の流れに少しは洗われているかと思い、開けた場所だしマッチョ虹色がいないかと掘ってみます。

すると・・

少し意外でしたが「富山ブラック水生シマミミズ」がおりました!

本来、富山ブラックは、かなり流れの緩やかな、植物近くの浅瀬に溜まっているタイプ。こいつは富山ブラックの中でもオープンでやや流れのきいた浅瀬に出てきた旅人タイプなのか?

そして、これまでも薄々感じてはおりましたが、再確認したのはその色合い。富山ブラックは富山ブラックですが、開かれた場所の流れに磨かれるためか、やや色合いは明るく、さらに少し光沢もあります。

これはこれで美しい‥。

このミミズはよいミミズでした。

本来、富山ブラックがいるのはこんな植物のある所。中央やや上にクリアケースが置いてありますが、あのあたり。周囲にしっかりと流れてきいていながら、スポット的に流れが緩んでいる植物の根元あたりが居場所です。

そっと石をのけてみると、黒い富山ブラックがおりました。ほとんど湿った土の中、と言う感じ。もちろん増水すれば完全に水没する場所ですから、水生でもあるわけですが。それよりも、周囲の土混じりの砂が黒っぽいことにご注目ください。

富山ブラックの「黒」を磨いているのは、この黒っぽい砂と土の混合物なのではないでしょうか。

もう一カ所。こんな植物の根まわりにできた黒っぽい浅瀬もチェック。

やはりおりました。

それにしても、この黒っぽい底質はなんなんだろう。落ち葉や腐った根など植物由来のものだとは思うのですが・・。

写真で気付いたのですが、植物の茎?根?も真っ黒ですね・・。

今度調べてみたいと思います。

 

開かれた流れが磨く虹色、そして植物のある黒い土壌が磨く黒。

水生ミミズは、そんな水に磨かれているのでしょう‥。〈若林〉□

 

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