本日も梅雨前線の活発化により雨模様。

九州や東海地方を中心に河川氾濫そして土砂崩れが発生し、埼玉南部では生暖かい強風が巨人の呼吸のように時折吹き荒れています。

事務所前の三面護岸水路、通称「ガタ」の水位は60㎝ほど。ウシガエルのオタマジャクシが冠水した植物の葉や茎にしがみついて身を休めておりました。

さて。

本日もミミズの話‥ではありますが、少しだけ趣向を変えて「釣り餌としてのミミズ」について、少し考えをめぐらせたいと思います。

ミミズは淡水の釣りの、とても良い餌となります。釣りをしない人でもミミズを餌としている釣りの絵を見たことはあるのではないでしょうか。

コイ、フナ、ウグイ、ニゴイ、ナマズ、ライギョ、ブラックバスそしてウナギなどなど、ミミズが淡水魚を釣る生き餌としてとても優れていることは有名です。

なかでも「キジ」と呼ばれるミミズ(おそらくシマミミズ)は、餌釣りの本などには「最上の餌」として書かれることも多く、私も子どもの頃は自分で「穴場」へと掘りに行き、それを餌にコイやニゴイなどを釣っていたものです。ちなみに「キジ」とは「黄血」であり、釣針を指すと黄色い血のような液体(消化液?)が出てくることからの名前です。

釣り餌として販売しているものとしては「りんたろうみみず」がありますよね。ネットでいろいろと調べてみたところ、生ゴミを堆肥に変えるコンポストミミズとしても使われているようです。これも私の記憶ではシマミミズ‥だと思っていたのですが、製造者に聞いたというネット情報では「アカミミズ」だという記述もありました。シマミミズもアカミミズも同じ「ツリミミズ科」という同じグループに含まれるそうで、似た仲間のようなのですが、学術的にアカミミズと呼ばれているものは欧州原産という情報もあり、りんたろうみみずには「国内産ミミズ」と書かれていますので、やっぱりシマミミズなのかな‥と思いつつ、しま模様あったっけな‥?なんてことも思いながら、「熊太郎」というミミズもあるな‥と思いたち、謎が謎を呼んでしまいました。

いずれ製造元にお聞きしてみたいと思うのですが、それにしても「ツリミミズ科」というグループ名自体、「釣りミミズ」ってことなのか?‥と新たな興味のタネが出てきたりと、ミミズはやはりとても謎深い生き物です。

さて。

話はかわり、先日、大変お世話になっている編集者の方から「幸田露伴が似たようなことを書いてたな」とブログのご感想をいただきまして・・。

幸田露伴とは慶応3年(!)生まれの文豪で(『五重塔』などが有名だそうです)、釣聖(!)と呼ばれた釣り名人でもあった方だそう。色々と知らないことだらけで、露伴についても名前を聞いたことがあるかないか?ぐらいだったのですが、そんなすごい方が私と同じようなミミズについてのあれこれを書かれていたとは‥と興味を抱き、ちょっと調べてみると、自分の住処のことを「蝸牛庵(かぎゅうあん)」と呼んでいたそう。

蝸牛庵‥カタツムリの庵‥カタツムリハウス!?

何を隠そう、この私も我が事務所をカタツムリハウスと呼んでおりまして‥(螺旋階段がその由来のひとつです)。

そんな勝手な親近感から、このミミズについての話が書かれている『露伴小品』という本を購入してみたのです。

昭和27年発行の書。このなかの「釣魚談一則」という話の中に、まさに釣り餌としてのミミズについての話がありました。

鮒釣に用うべき餌は、云ふまでも無く蚯蚓なり。

とあり、ここで私は初めてミミズの漢字が「蚯蚓」であることを知るわけですが、ともあれ・・こう続きます。

(以下引用)

蚯蚓に三種あり。俗に「はねみみず」といふものと、赤蚯蚓と、山蚯蚓といふものと、是なり。「はねみみず」は其色青黒く、其性能く跳ね躍るを以て名あり。鮒のみならず魚多くは之を喰ふを悦ばざるが如きを以て、餌として用うるもの無し。山蚯蚓は長さ五六寸より八九寸に至り、太さ人の小指ほどもあるべし。魚の之を嗜むか嗜まざるかは明らかならざれども、其太くして鉤に装するに堪へざるを以て、餌とするもの無し。赤蚯蚓は其色赤くして其性鈍く、これを傷くれば黄色なる液を出し、其液一種異やうなる強き香を具ふ。此は即ち釣魚の餌として最も佳き蚯蚓にして、「まゑさ」の名あるを以ても推して知るべし。

(引用ここまで)

いやあ‥すごいことが書いてあります。

赤蚯蚓は「黄色なる液」とありますから、これはおそらくはキジ、つまりシマミミズのことでしょう。「りんたろうはアカミミズ」と製造者の方が言われたとあるのは、かつてシマミミズの通り名であった「赤蚯蚓」のことを言われているのかもしれません。まるで違うのかもしれません。

いずれにしましても、この当時からキジは釣り餌として「まゑさ(=真餌)」と呼ばれるほど優れたものであるという認識があったことがわかります。

それにしても「はねみみず」。跳ねミミズ。よくわかります。これはすなわち、ツリミミズ科のキジとは異なるフトミミズ科のフツウミミズのことではないかと想像します。確かにあいつら、土から掘り出した時にまるで跳ね回っているような動きをしますから‥。

そして「山蚯蚓」。これはいわゆる「ドバミミズ」とも呼ばれてウナギの餌などに適しているフトミミズ科の大型種ではないでしょうか。もしくはキクチミミズやシーボルトミミズのようなもう少し山奥にいるような大型種のことを指しているのかもしれません。でも大きすぎるのはその時点で却下、なのですね。

 

水生ミミズについての言及はありませんでした。

ちなみに私の川での水生ミミズ掘り掘りで、シマミミズっぽいなーと思ったやつが一度だけ出たことがあります。

こいつです。「非マッチョテズルモズル水生ミミズ」。

15~16㎝ほどの大型でしたが、他にはないシマミミズっぽさと、まさに「はねみみず」とは異なる「動きの鈍さ」がありました。できるだけ不用意に傷つけたくはないので黄色い血が出るかどうかは定かではありませんが、雰囲気は昔採っていたシマミミズのそれでした。

シマミミズは水中でも飼育できるそうですから、水中にいてもなんら不思議ではないかと思います。

ちなみにいた場所はこんな場所。

 

・・と、ここまで書いて、今回のブログの本題である「なぜミミズは釣り餌として有効なのか」について、全然踏みこめていないことに気づきました‥。

でもさすがにブログに時間を費やしすぎだなと‥。

なので今回はここまで、「前編」としておさめたいと思います。

最後に一枚の写真とともに思い出を少し‥。

このめちゃくちゃほっぺの可愛い少年は、小学校5~6年生時の私。当時、今の私ぐらいの歳だった父に連れられてしばしば通っていた相模湖での一枚です。ボートは小川亭で、おそらくは青田ワンド。渓流竿に棒ウキで餌はキジ。記憶では近所の空き地にどのような経緯なのか腐った畳が重ねられている「穴場」がありまして、相模湖に行く前はその「穴場」でキジを大量に採って、それを餌にしていたのです。そして釣り上げている魚はニゴイです。本命はブラックバスでしたが、ニゴイもよくキジを食ってきました。ちなみに兄は隣で最新鋭のバンタム(シマノのベイトキャスティングリール)を用いバックラッシュ連発しながら丸勝で購入したダイワやヘドンのルアーを続けていましたが、結局一度も釣れたことはなかったんじゃないかな‥。今でも棒ウキが豪快に水中に消しこむ瞬間を覚えているぐらい、思い出深い釣りでした。

そう、ニゴイです。ニゴイはミミズが大好きなのです。

後半に続きます。〈若林〉□

 

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