今日は晴れ。一日良い天気で、日没直後は今年初めて野良猫の盛り声が聞こえました。春が刻々と膨らんでいます。

さて。

早いもので、1月8日に開始した「ミミ活」こと川ミミズ孵化計画は、本日をもちまして丸々1カ月となりました(第ゼロ回目がこちらです)。

氷の張る、水温0℃の川底でミミズが暮らしている様子を観察して、これは孵化させられるのでは?と思ってのスタートでした。

ツイッターにアップした決意表明。

本日、2つの丸型卵胞からの孵化を確認しまして、合計19匹が誕生。

水温16℃前後の湧き水から採取した卵胞は、ほとんどが孵化したように見えます。川で採取した4つの卵胞はいずれもまだ孵化していません。

ここで「孵化したように見える」とするのは、ミミズの場合、ミミズが孵化した後の卵胞が、そのままの形で残るからなのです。

フトミミズ科の場合はパカッと卵胞が割れるように破けて出てくるそうなのですが、どうやら今回観察しているのは、卵胞が割れずに開いた口からゆっくり出てくるツリミミズ科のようで、その場合、孵化した後も卵胞は壊れずにしばらく残るようなのです。

孵化したミミズの真横にある空気の泡がついている卵胞は、すでに孵化した後の抜け殻かと思います。同様に透けているものが5~6個見えるかと思います。ただ、よく見ないと生まれる前なのか抜け殻なのか、見分けがつきづらい場合もあります。

ちなみに、なぜミミズの場合、卵ではなく卵胞と呼ぶのか。

その説明を簡単に記しておきたいと思います。

名著『ミミズ図鑑』(著:石塚小太郎/写真:皆越ようせい/全国農村教育協会)によりますと・・

環帯(ハチマキ)の表面に粘液が分泌され、それが固まって卵胞膜になるのだそうです。そして筒状の卵胞膜が次第に前方へと移動して(実際にはミミズが後ろに下がるそうです)、その過程で卵と精子が体表と卵胞膜の間に排出され、最後は頭部の口先から脱ぐように離れて放卵される・・とあります(わかりやすく言い換えてます)。

これは今回観察している丸型卵胞の親ではないかと踏んでいる通称「オレハチ」。オレンジ色のハチマキが特徴ですが、ここを脱ぐようにして、それが卵胞になっていくのですね。

精子と卵子の両方とも!?と思った方もいるかと思いますが、ミミズは雌雄同体なのでオスもメスもないのですが、精子は他個体から受け取らないとならないらしく、交接(交尾)を行うことによって、精子を互いに交換するのだとか・・(なかには一匹で増える単為生殖のやつもいるそうです)。

文字ばかりだとわかりづらいのでイラスト化してみました(わかりやすく描いているので少し実際とは異なります。詳しくは名著『ミミズ図鑑』をご参照ください・・)。

こんな感じです。ネックウォーマーのような、もしくはワッキーリグで使用する収縮チューブのようなものを少しずつ脱いでいきながら、その中に産卵をして、生み出す際に前方と後方がすぼまるように縮んで収縮して閉じる感じです。

なので、一見卵のように見える外側は、卵を包み込むカプセル的なものなのです。

あくまでもイメージです実際、卵の膜は私の観察精度では確認することができません。

ちなみにシマミミズなどでは、ひとつの卵胞に4~5個の卵を産むこともあるのだそう。今回、私が観察した卵胞には、すべて一匹ずつしかミミズは入っておりませんでした。

初期はこんな感じ。もやもやとした姿。

光りのあて方によっても見え方は変わるのですが、少しずつ細長い体が卵の中で出来あがっていく様子を観察することができました。

急に血の気が失せて透明になってしまったことも・・(これについてはまた別の機会に書きたいと思います)。

中のミミズは少しずつ伸びていくにしたがって、卵の中でとぐろを巻いていくようです。

今回観察した丸型と細長型。これはいずれも孵化2~3日前の状態。もう完全に中にミミズがいる様子がわかり、それがウネウネと動いています。

そしてある時、卵胞の中から誕生していくわけですが、初めてミミズの孵化を観察した際は、ちょっとした事件があったのです。

それは卵胞についたゴミをスポイトで取り除こうとしていたところ、勢い余ったのか?プチッと卵胞がはじける音がしたとともに、ミミズが噴射するように一気に体の8割5分ほど飛び出してきたんです。

「卵をつぶしてしまった!!」と。なんてことをしてしまったのかと・・。

ところが、飛び出してきたミミズを観察をしていましたところ・・

こんな感じにホースが巻きつくように、しゅるしゅると再び卵胞の中へと入っていったのです!!

その後、完全に卵胞の中におさまったミミズは翌日になっても卵胞の中から出てきませんでした。ところがその翌日に孵化をしたのです。

刺激を与えてしまった偶然からなるものと思っていたのですが、その後、細長卵胞でも丸型卵胞でも、一度出てきてから引っ込んで、そこから数日の後に孵化する様子を観察することができました。

これは細長卵胞のミミズ。しばらく卵胞の外でうごめいてから急に活動を停止したかと思うと、しゅるしゅると再び卵胞の中へ。そしてその2日後に孵化しました。

こちらは2月3日に観察。

こんな感じに、ヤドカリだかカタツムリみたいに卵胞を引きずりながらしばらく活動をしていたのですが、じきに卵胞の中へとしゅるしゅると戻り、それからしばらくそのままに・・。

孵化を観察したのは今朝(2月8日)。昨日は休みをとったので観察しておらず、それでも一度出てきてから引っ込み、それから4日か5日後になって完全に抜け出してきた、というわけです。

 

卵からほとんど孵化してるのに、また卵の中に戻り数日過ごす生き物なんて、他にいますでしょうか?

ですがミミズの場合、戻るのは「卵」ではなくカプセル状の「卵胞」であると考えると、なるほど彼らにとってはヤドカリの背負う貝のようなものだったのかもしれないなーと。そんなことを考えたのです。

おそらく土の中で孵化したミミズは周りが安心できる?土の中ですから、すぐに卵胞から離れていくのかもしれません。ところが今観察しているケースには水しか入っておりませんので・・。落ち着かずに出るに出られず、また戻る・・みたいなことになっているのかもしれません。

 

この後はかなりの妄想となりますが・・

ヤドカリは都合のよい貝殻が身の周りにあったから、ああなったわけで・・

ミミズにも適した殻があれば、似たような暮らし方はあり、なのかもしれません・・

隠れ家を持ったまま移動して、外敵に襲われそうになったらしゅるしゅると引っ込む・・

特に身をさらす危険の多い川ミミズの場合・・

身を隠せるものがあれば・・

卵胞に包まれた幼少期を思い出し・・

 

 

探してみる価値はありそうです‥。〈若林〉□

 

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