梅雨空が続きます。曇天ベースに降ったりやんだりの繰り返し。

早く梅雨明けてくれないかなーと思いつつ、明けてしまえば酷暑が待っているわけですから、なかなかですよね。ただ、線状降水帯など集中している地域の雨は、これからの時代、とても怖いものですね。NbS(Nature-based Solutions)という概念が昨今のキーワードとなっているそうで(勉強中なのです‥)、日本語に訳せば「自然に根ざした解決策」。たとえばこれまで自然災害への防災は人工物に頼りがちだったところを、自然環境の力を借りながら防いでいく‥というような考え。土石流や河川氾濫など自然災害が起こるたびに、その解決策が議論されますが、自然の力も上手く借りなければ防ぐことが難しい災害は、これから益々増えていくような気がしています。

さて。そんなここ数日ですが、二面護岸の川へちょこちょこと足を運び、川ミミズ観察をしています。

こんな川です。

水深は平均で10㎝ほど。下には砂利や石が敷き詰められていて、両岸にはブロック状の護岸がそびえたっています。

この川、昨年の今頃にも足しげく通っていたのですが、なんともミミズの多い、ミミズ川なのです。そしてここで面白いのは、川底を這う‥いや、泳ぎ回るSWIMMING WORMSが観察できることです。

泳ぐミミズはおそらく2種類いて、小さい方は当ブログにもたびたび登場する「マッチョ虹色水生ミミズ」です。太さは約4mmほど。

そしてもうひとつの種こそ、この川ならではの川ミミズで、それは太さ7mmほどでしょうか。そして長さは15㎝を超えるものも普通にいます。いわゆるドバミミズの類ですが、特に観察はこのミミズを中心に行っています。

名称はそうですね‥仮に「オヨギデカミミズ」とでもしておきましょうか。ハダカデバネズミではありません。オヨギデカミミズです。

この「オヨギデカミミズ」の暮らし方の基本については、過去ブログ【彼らはなぜ川に入るのか?④】をご参照ください。

上図を用いて簡単に説明しますと、梅雨時期の彼らは基本的に日中、護岸の隙間の穴に棲んでいます(①②)。ところが夜になると穴から這い出して(③)最初は穴周辺のコケに付着した有機物を食べます。そして意図的なのか事故なのか、水中に落ちてしまったもの(④)は、川底を這うように泳ぎながら(⑤)、そのまま川底の石の裏に潜っていったり(⑥)、または再び別の場所で護岸に這い上がったりして(⑦)、そこでまたコケをもしゃもしゃ‥とやるのです。おそらく日中にはまた護岸の穴(⑧)や、護岸が乾いてしまっている時は川底に(⑥)潜んで夜を待つのだと思います。

こんなミミズなのです。

そしてここ数日、夕方に川底から這い出してくるやつなどを観察しようと足を運んでいます。

昨夕の話をしましょう。

まだ薄明るいうち、オヨギデカミミズはまったく姿を現してはいませんでした。護岸は時折降る雨で湿っていますから、おそらくは護岸の隙間にいるのでしょう。でも数匹は川底からも這いだしてくるのを期待して、暗くなるのを待ちます。

動きがあったのは19時半ちょっと前ぐらいからでした。

19時4分、護岸の隙間から太いミミズが姿を現しました。

オヨギデカミミズです。ちなみにミミズは光に反応を示しますので、基本的には赤色光をメインに観察しています。撮影はストロボで。シマミミズなどのツリミミズ科はより一層光を避ける傾向にあるようで、オヨギデカミミズやマッチョ虹色などのフトミミズ科はさほどではないのですが、できるだけ自然な彼らの暮らしを知りたいと思い、極力光を当てずに観察する方法をとっています。

19時9分。別のやつ。尻尾だけ出てますね。

19時29分。これも別のやつ。

19時30分。また別のやつ。一斉に出てきたようです。

19時58分。

19時56分。

この間、私はひたすら30mほどの区間を上流に向かいながら歩いては、護岸と川底にオヨギデカミミズを探しています。残念ながらこの日は川底から這い出してきたと思わしきやつには出会うことができませんでした。

そして20時を少し回ったころ、ちょうど頭を水に浸けているミミズを見つけることができました。光の端で照らしながら脅かさないように観察します。

見事に泳ぎ出しを観察することができました!

護岸から離れ、流芯に向かって進んでいくオヨギデカミミズ。

そしてこいつをしばらく観察していくと、下流に向かって、這うようにグングンと進んでいき、5mほど先にある流れの急な瀬にたどり着くと、頭をしばし振りながら「この流れは危険かも‥」と判断したのか、バックするように尻尾の方から少し戻り、石の下に潜りこんでいってしまったのです。

ちなみに泳ぎ方ですが、ほぼ一直線でスイスイと進んでいきます。体の前半、特にハチマキより前方を鎌首のように振りまわして様子を探りながら、進んでいくのですが、体の後方、特に尻尾のあたりはアンカーの役割も果たしているようで、急な流れを前にした時などは、尻尾で安全を確保しながら頭のほうがとっかかりを見つけた段階で移動‥みたいな芸当も行います。ツイッターには短い動画もアップしていますので、興味のある方はそちらもぜひ‥。

それにしても、果たしてこいつらはなぜ川に入るのでしょうか。

一見すれば、垂直近い護岸から誤って落ちてしまっただけのようにも思えます。ですがそれにしては、川の中での行動に焦りがまったくありません。むしろ川の中の方がのびのびと進んでいるようにすら見えます。

これまでの観察からなんとなく察するに、おそらくミミズには「移動する」という本能が備わっているのではないでしょうか。エサを求めているだけならば、まだ十分に自分が潜んでいた穴の周りにあると思うんですね。それなのに這い出してきては川の中に落ちて、進んで別の場所に向かうというのは、「移動すること」自体に意味があるように感じてしまいます。

雨が降ると川に大量にミミズが流れてそれをウナギが飽食するというような研究があったかと思います。雨の翌朝に道路で大量に死んでいるミミズは、諸説ありますが、どちらかというと「そこに居づらくなったから」というネガティブな理由が多いように思えます。

ですが、私の直感では、これらもまたミミズたちの「移動する」本能なのではないかと感じてしまいます。雨などで湿った空間が増えたタイミングには移動して別の場所に行くことが本能にプログラミングされているのではないでしょうか‥。

下流に向かう者もいれば、上流に上ってい行く者もいます。流されているわけではなく、自らの意思で進んでいきます。

入水したオヨギデカミミズの移動を調べることで、何かが見えてくるかもしれません‥。〈若林〉□

 

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