少しずつ進んでいるように見えて、なかなか進まない「オヨギデカミミズ」同定プロジェクト。

一番大きな問題は「オヨギデカミミズ」が一種類ではなかったということ(笑)。

今のところ私の中では・・

「クリームオヨギデカミミズ」

「ツートーンオヨギデカミミズ」

「ビードロオヨギデカミミズ」

そしてヒトツモンミミズ

これらをオヨギデカミミズとしていたところがありまして・・。

なかでも一昨年、昨年の7月に観察していた大部分は、ヒトツモンミミズなのではないかと、今はそんなことを考えています。

こんな夕焼けの夜。

いつもの「オヨギデカミミズ」の川へ行ってみますと・・。

いきなりいました。ちなみに水位はやや下がり気味ですが、この季節になると護岸はある程度、水面から30㎝ぐらいまでが湿った状態に保たれます。一因は苔が繁茂するからでしょう。そして大小の川ミミズたちは、この湿った苔の周囲にたくさんいます。

大きい方は17㎝ぐらいかな? 成体です。

腹側、Dの部分にある2つの斑紋によりヒトツモンミミズと判別。Bの位置に雄性孔はなし。

小さい方は10㎝ほど。

Dの位置に2つの斑紋。これもヒトツモンミミズでしょうか。完全に環帯は出来上がっていない亜成体です。そしてBの位置に、雄性孔らしきものがみられました。左右対称ではなく、偏っている感じ。

お次がこちら。これも護岸の下方の苔に這っていました。15㎝ほどかな。

これも二つの斑紋。ヒトツモンミミズでしょう。

やはりヒトツモンミミズが多い印象。

続いてこちら。15㎝弱ぐらい。

これは、ヒトツモンミミズとは言い切れない感じ。

Dの位置に見られる斑紋の代わりにうっすら帯のような濃色模様がありました。ヒトツモンミミズの平均よりは少し細く短い印象。全体的に小型の印象です。

さらに苔の中に。16㎝ほど。

こいつは二つの斑紋を持つヒトツモンミミズでしょう。

どんどん行きます。15㎝ほどかな。

独特の斑紋。ヒトツモンミミズでしょう。

こんなポジショニングが実に多いのです。これは15㎝弱の小型。

斑紋はなし。不明です。

これはまた別のミミズ。おそらくヒトツモンミミズではないかと思うのですが、護岸の穴に潜ってしまうため確認できません。こんなのも全体で10匹ぐらい観察しました。

はいお次。12㎝ぐらいかな。

ピンボケですが、ヒトツモンミミズでしょう。

16㎝ぐらい。

おっと・・これもヒトツモンではなさそう・・。

Dの位置に濃い色の帯。Bには雄性孔は見当たらず。雰囲気もツルツルしたヒトツモンミミズより、もう少しだけザラザラとしていて硬めの印象。

尻尾もどっしり。

蛍光発光はうっすら白色。

これも新たな「オヨギデカ」系なのか・・?

とりあえず増やすのはやめときます(汗)。

さらに13㎝ほど。

これはヒトツモンミミズでしょう。

幼体ですが13㎝ほど。

真横からなのでちょっと見にくいのですがヒトツモンミミズでしょう。

さらに・・

これもヒトツモンミミズでしょう。多いな・・。ここまでヒトツモンミミズらしきのは9個体。不明が2個体。

そしてこちら。これも護岸の穴にいたもの。

独特の虹色が輝いています。

これはおそらく「ツートーンオヨギデカミミズ」。13㎝ほどでした。

ツートーンは光が特に苦手なのか、砂礫にすぐ潜るのが特徴。そして太い。

・・とまあ、こんな感じの観察だったわけですが。まとめますと・・

ヒトツモンミミズ 9

不明の大型ミミズ 2

「ツートーンオヨギデカミミズ」 1

他、中・小型多数。特に「しまぐろ川ミミズ」と読んでいる、おそらくキクチミミズは多数が護岸の苔がらみで見られました。

念のため、川の中央も観察しましたが、泳ぎだしているミミズは見ることができませんでした。

このところ、ほぼすべてが垂直護岸に依存した状態。

思えば昨年と一昨年の7月の観察時もそんな感じでした。

泳ぎだしている奴らも護岸から1m範囲内がほとんど。

一昨年初めて観察した時は、「オヨギデカミミズ」の暮らしをこんな図にまとめています。

詳しくはヤマケイ新書『武蔵野発川っぷち生きもの観察記』で紹介していますので、ぜひそちらを読んでみてください。

簡単に言いますと、護岸が湿っている時は護岸の隙間に潜んでいて、日照りが続き護岸が乾燥すると、体が乾くことを嫌って川底に潜るのではないか・・というものです。

昨年・一昨年は護岸際でしか見ることがなかったため、もしかすると護岸の上から落ちてきたミミズが「しかたなく」川で暮らしているのかも・・なんてことを思っていました。できたら川で暮らしを完結していてくれた方が私的にはロマンを感じるのですが、もしかすると群れの本体は護岸の上の土中にあって、そこから這い出してぽとりぽとりと護岸を落ちたものが川に暮らしているのではないかと。死滅回遊魚(あるいは季節来遊魚)のようなものなのではないかと(この考えについては過去ブログ【新たな暮らしの場を求める旅人】に書きました)。

いや、むしろ『進撃の巨人』のパラディ島のようなものか・・。

 

ところがです。5月から観察を始めた今年、なんと「オヨギデカミミズ」が突如、川の真ん中あたりの流心近くに姿を現したのです。そこには小さな3㎝ほどの幼体の姿も(オヨギデカの子供かは確かめられていませんが)・・。この時期はまだ護岸に苔が生えていないこともあるためか、護岸にはあまり取り付きません。だからなのか、姿を見せるのは川の真ん中あたり、それも流れの結構ある流心近くのたるみ周辺でした。

これには心踊りました。護岸上の土中からポタポタ落ちてきたばかりではなく、おそらく川の中で卵胞を産んだり、そこで孵化して成長する「オヨギデカミミズ」もいるのではないかと。

そこにこの「オヨギデカミミズ」同定プロジェクト。

これにより、5月に川の真ん中あたりに出てくる「オヨギデカミミズ」は、一昨年や昨年の7月に護岸沿いで観察していた「オヨギデカミミズ」とは違うことがわかってきたのです。

5月に川の真ん中あたりに出てくる白っぽいやつは「クリームオヨギデカミミズ」と名付けました。

そして今、日を追うごとに護岸に増えているヒトツモンミミズこそが、一昨年と昨年に護岸で観察していた「オヨギデカミミズ」なのではないかと思うのです。

今、気になっているのは次の2点です。

・ほとんど見られなくなってしまった「クリームオヨギデカミミズ」はどこに行ったのか?

・急に増えたヒトツモンミミズはどこからやってきたのか?

妄想の域は出ませんが、もしかすると「クリームオヨギデカミミズ」はずっと川で暮らしているミミズであり、この川のヒトツモンミミズは護岸の上の土中からの這い出しにより供給されているのかもしれません。

「クリームオヨギデカミミズ」、居場所のひとつの仮説は川底の砂礫と砂の隙間です。

掘ってみるしかないか・・?〈若林」◻︎

 

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